サイエンス

筋トレに伴う神経の変化を調査するためサルに筋トレさせる試み


筋力トレーニングをやり始めてから筋肉が肥大するまである程度時間がかかるのは、「筋肉がつくような体に変化している」からだということがわかっています。ニューカッスル大学の研究者が、この変化にどういったメカニズムが寄与しているのかを調べるため、ヒト以外の霊長類を用いた初の実験として、アカゲザルに筋トレをさせる試みを行いました。

Cortical, corticospinal and reticulospinal contributions to strength training | Journal of Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/early/2020/06/29/JNEUROSCI.1923-19.2020


Monkey study reveals weightlifting strengthens 1 vital organ before muscles
https://www.inverse.com/mind-body/weightlifting-brain-muscles-study

筋トレに関してはさまざまな研究が行われており、初期段階では「筋肉がつく」よりも前に「神経が筋肉をつけることに適応する」ことがわかっています。この神経適応については、投射系のうち、大脳皮質から脊髄に投射する下行性伝導路の皮質脊髄路と関連しているのではないかと考えられてきました。


ニューカッスル大学のスチュアート・ベイカー教授は、過去のさまざまな研究を踏まえて、脳幹の網様体から脊髄に至る網様体脊髄路が神経適応の媒介をしている可能性が高いと推察し、研究を進めてきました。

ベイカー教授らのチームが新たに行ったのは、筋トレに関連する神経適応に対する皮質脊髄路や網様体脊髄路などの相対的な寄与を比較することを目的とした実験。実験には2匹のメスのアカゲザルが参加しました。チームによれば、筋力トレーニングに関してヒト以外の霊長類を対象として行う試み、特に網様体脊髄路の機能の変化を調査するものとしては初めてのものだったとのこと。

実験に用いられた装置はこんな感じ。研究チームはサルに対して「先端に重りのついたレバーを片手で引く」という筋力トレーニングを課し、運動機能の評価を行いました。まずは重りをつけずに単純に「レバーを引く」という動作を行わせるところからスタートした筋トレは3カ月に及び、最終的にサルは6.5kgの重りをつけたレバーを1日50回引くことができるようになりました。サルの体重はおよそ6kg~6.5kgなので、人間でいえば片腕で懸垂を50回することに相当する筋トレをこなしたことになります。


研究チームは毎日サルの運動野と2つの運動路(皮質脊髄路・網様体脊髄路)を刺激して、筋肉の電気活動を測定しました。

その結果、「歩く」「手を伸ばす」のように手足や体幹を動かすのに用いる皮質脊髄路には大きな変化がなかった一方で、姿勢保持や筋の伸張に用いられる網様体脊髄路で有意な変化が見られました。ベイカー教授の共同研究者であるイザベル・G・グローヴァー氏は、「主要経路」である皮質脊髄路が人間の洗練された動き・複雑な動きと関連付けられていた一方、「古い経路」である網様体脊髄路は強度の原動力になっているように見えると言及しています。

ベイカー教授は、筋トレの初期段階で筋肥大より前に神経適応が行われることについて、網様体脊髄路と脊髄の接続強度を高めることで筋肉をより活性化するためではないかと推測しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logc_nt

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