Frontiers | Bed-Sharing in Couples Is Associated With Increased and Stabilized REM Sleep and Sleep-Stage Synchronization | Psychiatry
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2020.00583/full
Comprehensive Study Suggests Most Heterosexual Couples Get Better Sleep When Together
https://www.sciencealert.com/comprehensive-study-suggests-most-heterosexuals-get-better-sleep-with-a-partner
これまでにもカップルの睡眠についての研究は存在しており、1994年にラフバラー大学睡眠研究所の研究チームが発表した論文では、カップルで一緒に寝た場合、女性は男性によって睡眠を妨げられることが多いものの、1人で寝るよりも質の高い睡眠が得られる傾向にある可能性が示唆されました。
そして今回、カップルの睡眠の質を調査したのは、クリスティアン・アルブレヒト大学キール精神医学および心理療法学科の研究員であるヘニング・ヨハネス・ドリューズ氏らの研究チームです。ドリューズ氏らの研究チームは、18歳から29歳の子どもを持たない男女のカップル12組を被験者としました。なお、被験者たちは心身ともに健康で、週に3回以上はパートナーと一緒に寝る習慣があったとのこと。
実験は2週間のうち週末の4日間を使って行われました。被験者たちは、睡眠時の脳波・心臓の活動・運動状態・筋肉の緊張などを測定するポリソムノグラフィーを装着した状態で、睡眠検査室に計4泊しました。また被験者は4泊のうち2泊を1人で、残り2泊をパートナーと2人で寝るように指示され、実験が行われる4日間の朝と夕方に、睡眠とパートナーへの愛情を調査するアンケートに回答させられました。
その結果、睡眠時間と睡眠効率、睡眠開始時間については、1人で寝る場合とカップルで寝る場合との間で有意な差はみられませんでした。しかし、カップルで一緒に寝る場合は、1人で寝る場合よりもレム睡眠の割合が有意に高かったことがわかりました。
レム睡眠は「体は眠っているが脳は起きている状態」となる浅い睡眠のことです。人はレム睡眠と「体も脳も眠っている状態」となる深い睡眠のノンレム睡眠を交互に繰り返しま人が快適に目を覚ますためにはレム睡眠中に覚醒することが重要であり、睡眠の質が悪化するとレム睡眠の割合が減少するといわれています。つまり、カップルで寝る方が1人で寝るよりも睡眠の質が高いといえるわけです。
また、カップルで一緒に寝ると2人の睡眠周期が同期する傾向があり、特にアンケートから「深い愛情関係にある」と評価されたカップルで特にこの傾向が見られたとのこと。さらに、カップルで一緒に寝た場合、1人で寝た場合よりも足の動きの総数が平均しておよそ1.5倍に増えたことも判明しました。
以上から、研究チームは「カップルで寝ることは睡眠の質を向上させる」と主張し、今回の実験結果は1994年の研究をあらためて支持するものとなったと述べています。さらに「レム睡眠は扁桃体と内側前頭前野の活性化に関連しているため、その人の社会性にポジティブな影響を与える可能性がある」と研究チームは指摘し、レム睡眠の割合が大きくなることで社会性が向上し、それによってまた睡眠の質が向上するという正のフィードバックが存在する可能性も示しました。
なぜカップルで一緒に寝ると睡眠の質が向上するのか、その生理的メカニズムははっきりとわかっていませんが、研究チームは「一緒に寝るパートナーの体温によって周囲の温度が安定し、レム睡眠が促進されるのでは」と推測しています。実際に、レム睡眠の周期が周囲の気温に大きく影響されることを示す実験結果が2019年に示されました。また研究チームは、パートナーと一緒にいることで心理的に安定し、ストレスレベルが低下することで睡眠の質が向上する可能性も示唆しています。
ただし、研究チームは被験者がわずか12組の異性愛カップルで、睡眠検査室という特殊な環境での研究であることに言及し、慣れ親しんだ自室での睡眠であればどうなるのか、あるいは同性愛カップルであればどうなるのかといった部分をカバーできていないと述べました。