サイエンス

インターネット上で生み出される陰謀論の特徴とは?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴って、「COVID-19の流行は5G技術が原因」という陰謀論がインターネット上で流行し、実際に5G電波塔への放火事件が世界で急増しました。このように現実世界に多大な被害を与える無根拠な陰謀論がどのように生まれるのかという疑問を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームが解き明かそうとしています。

An automated pipeline for the discovery of conspiracy and conspiracy theory narrative frameworks: Bridgegate, Pizzagate and storytelling on the web
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0233879

How conspiracy theories emerge – and how their storylines fall apart | UCLA
https://newsroom.ucla.edu/releases/how-conspiracy-theories-emerge-and-fall-apart

UCLAのチームが行ったのは、機械学習によって「陰謀論がどのようにオンラインで広まったか」を分析するという研究です。研究チームは、車線を一部封鎖して意図的に大渋滞を引き起こし、救急車で運ばれていた患者などを間接的に死亡させた「ブリッジゲート事件」と、アメリカ史上はじめて主要政党の指名大統領候補に輝いた女性であるヒラリー・クリントン上院議員陣営の関係者が人身売買や児童の性的虐待に関与しているという根も葉もない陰謀論である「ピザゲート事件」の2つを機械学習で分析。これら2つのストーリーがどのように広まったのかを調査しました。

近年は機械学習の進歩によって、単語やフレーズなどに含まれるパターンや同一性、相互作用を特定して学習を行い、「物語を読む」ような分析をAIができるようになっているとのこと。この進歩した機械学習技術を用いて、研究チームは陰謀論の登場人物や地名、その他の固有名詞をそれぞれにつないだフレームワークを構築。視覚的に関連性がわかる図表を作成しました。


この図表によって、陰謀論と真実を伝えるニュースの違いの1つは、「要素の1つを取り除くと、全体像が破綻するかどうか」だと判明。ウソから生まれた陰謀論は要素の一部を取り除くと一貫したストーリーが形成できなくなりますが、事実から生まれた物語は要素の一部を取り除いても一貫したストーリーが維持されることが多かったそうです。一例として、研究チームは明白に陰謀論であることが明らかになっているピザゲート事件を挙げて、Wikileaksという要素を除去すると残りのつながりが破綻すると指摘しました。

また、陰謀論と真実のニュースの別の違いは、「全体像が判明するまでの時間」とのこと。研究チームは、陰謀論のストーリーは全体像が急速に構築されて安定する傾向があるが、実際の陰謀に基づくニュースは全体像が判明するまでに何年もかかるケースが見られると言及。陰謀論の代表であるピザゲート事件では、わずか1カ月で全体像が判明した上に、全体像は3年間ほど変化がなかったと説明しました。


同研究チームは、COVID-19関連の陰謀論についても研究を行っています。論文の筆頭著者を務めたTimothy Tangherlini氏は、「ピザゲート事件では陰謀論が拡散されることで被害を受けるターゲットは限定されていたため陰謀論は急速に強固なものになりました。一方、COVID-19の場合は多くの競合する陰謀論が存在しており、複数の小さな陰謀論がより大きな陰謀論を形成する様子が追跡可能です。しかし、いずれにせよ、全ての陰謀論を生み出す理屈は同じです」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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