「睡眠の起源」は4億5000万年前までさかのぼることができるかもしれない
By Elegant01
人間にとって「睡眠」はごく当たり前のものですが、ほとんどの哺乳類が1日のうち数時間も意識を失うというのは奇妙な現象といえます。2019年7月10日にNatureで発表された研究によると、魚は人間と同じように眠り、人類の睡眠は遠く離れた祖先である魚類から4億5000万年以上に受け継がれた可能性があることが示唆されています。
Neural signatures of sleep in zebrafish | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1336-7
Slumbering zebrafish may offer clues to the origins of sleep
https://www.nationalgeographic.com/science/2019/07/slumbering-zebrafish-offer-clues-to-origins-of-sleep/
人間は、深い眠りであるノンレム睡眠と浅い眠りであるレム睡眠を繰り返します。これまでの研究では、レム睡眠を取るのはヒトを初めとする哺乳類や鳥類に限られているとされていました。体は眠りながらも脳は覚醒しているというレム睡眠は進化の過程で獲得したと考えられていたわけです。
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今回の研究はアメリカのスタンフォード大学睡眠科学・医療センターの研究チームによるもので、日本の国立遺伝学研究所から川上浩一教授も共著者として名を連ねています。研究チームは、体が透明で体内の観察に適しているゼブラフィッシュの稚魚を使って、その睡眠を観察しました。
by Oregon State University
脳内でニューロンが活動するとカルシウム濃度が上昇するため、実験にはカルシウムに反応して緑色に光るように遺伝子を組み換えたゼブラフィッシュが使われました。研究チームはこのゼブラフィッシュをゼラチンのようなゲルの中に動き回らないように閉じ込め、脳の活動や心拍数、筋肉の活動、そして眼球運動などのデータを測定。さらに、ゼブラフィッシュが眠っていることを確実なものとするため、研究チームはゼブラフィッシュが眠りにつかないように起こし続け、「眠い」状態を作り出しました。
測定の結果、この眠いゼブラフィッシュはレム睡眠とノンレム睡眠を行うと確認され、ノンレム睡眠時には心拍数が半分になり、体の筋肉が弛緩することもわかりました。これは、「鳥類や哺乳類だけが進化の中でレム睡眠を獲得してきた」という定説の逆をいく結果です。
By Galyna_Andrushko
これまで進化の過程でレム睡眠を獲得してきたと思われてきましたが、今回の実験結果から研究チームは、睡眠の起源は魚類が誕生した約4億5000万年前までさかのぼれる可能性を示唆しています。スイスのローザンヌ大学の神経学者ポール・フランケン氏は「薬物を投与された動物のニューロンがどのように活性化するかを視覚的に調査できるということは、大きな進歩です」と語りました。
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