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「自分の店のピザを1枚注文するたびに900円丸もうけできる」という錬金術が爆誕、その原因とは?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、Uber Eatsのようなフードデリバリーサービスが急速に成長しています。そんな中、あるピザレストラン経営者が「デリバリーサービスを使って自分の店の注文を頼むと、ピザ1枚ごとに900円もうかる」という謎の仕組みを発見しました。

Doordash and Pizza Arbitrage - Margins by Ranjan Roy and Can Duruk
https://themargins.substack.com/p/doordash-and-pizza-arbitrage

この錬金術を発見したのは、ブロガーのランジャン・ロイ氏の友人であるピザレストラン経営者です。この友人は、「ドミノピザと競争したくない」という理由から、Uber Eatsなどのフードデリバリーサービスとの契約を拒否し続けていました。しかし、ある日突然、宅配を行っていないにもかかわらず顧客から「ピザが冷たい状態で配達されました」といった配達サービスに関する苦情が届くようになったとのこと。

苦情について詳しく調査した結果、いつの間にか店名でGoogle検索すると、検索結果に「ORDER DELIVERY(配達を注文する)」というボタンを含むリスティング広告が表示されるようになっていたと判明。DoorDashは友人が経営するレストラン側に断りもなく、勝手に「DoorDashを介して配達を行う」というサービスを実施していました。ユーザーが「配達を注文する」というボタンを押すと、DoorDashの宅配員が「レストランのピザを購入して顧客に対して配達する」という業務をレストラン側に無断で行っていたわけです。


顧客から宅配に関する苦情が届いたのも、勝手にピザのデリバリーを行ったDoorDashの配達員が保温バッグを持っていなかったことが原因でした。お店が配達サービスを実施しているようにDoorDashが見せかけた結果、グルメレビューサイトでは「届いたピザが冷たかった」などの不評レビューが何件か投稿されたり、従業員に苦情が届いたりと、友人のピザレストランは経営上の問題を抱えるようになってしまいました。

しかし、問題の配達サービスについて詳しく調べていた友人は、ある異常事態に気がつきます。それは「宅配サービスシステム上で、本来なら24ドル(約2600円)のピザが16ドル(約1700円)という価格設定になっている」ということ。つまり、レストラン経営者である友人がDoorDashの宅配サービスを介して自分のレストランにピザを1枚注文した場合、16ドルを支払って、24ドルを受け取ることになります。換算すれば、1枚あたり8ドル(約900円)の利益です。


友人が「何らかの設定ミスなのでは?」と疑いつつも、実際に自分の店にピザを10枚注文してみたところ、クレジットカードから引き落とされた金額は160ドル(1万7000円)であり、やはりピザ1枚あたりの代金は16ドルでした。一方、DoorDashの配達員がレストラン側に支払った金額は、240ドル(2万6000円)であり、ピザ1枚あたり24ドルの計算です。結果として、DoorDashは160ドルを受け取って240ドルを支払うという不合理なサービスを実行していたことが確認されました。

ただし、初回の実験ではトッピングや箱代として別途70ドル(約7500円)かかったため、実際の差額は、240ドルと160ドルの差額の80ドル(約8600円)ではなく、10ドル(約1100円)だったとのこと。友人は差額を最大にするため、「トッピングなしのピザを10枚注文する」という2回目の実験を敢行。今度は箱代の5ドル(約500円)しか別途費用がかからなかったため、75ドル(約8100円)の差額が利益として得られました。


ロイ氏の調査によると、この現象はDoorDashによる「試用期間」システムが原因です。DoorDashは宅配サービスを無断でGoogleに登録して「どれくらい注文があるか」を試験的に調査する試用期間を設けているとのこと。DoorDashは、試用期間の結果から十分な利益が予想されるレストランに自社サービスを契約するように促すわけです。

ロイ氏は一連の出来事から、フードデリバリーサービスの「事業自体のずさんさ」を糾弾しています。Grubhubは2020年第1四半期の売上高を3億6300万ドル(約390億円)、損益を3300万ドル(約35億円)の純損失と報告しており、DoorDashは2019年の総売上高を9億ドル(約970億円)、損益を4億5000万ドル(約480億円)の純損失だと発表。Uber Eatsも2019年第4四半期の売上高を7億4400万ドル(約800億円)、損益を4億6100万ドル(約500億円)の純損失と発表しているため、フードデリバリーサービス大手3社はいずれも純損失を計上している状況です。

フードデリバリーサービスは注文ごとに料理代金の15%~35%の利用料をレストラン側が負担する必要があるため、飲食業界にも打撃を与えています。さらに、フードデリバリーサービスと契約している配達員の賃金と権利が十分ではないという指摘も存在しているため、フードデリバリーサービスの存在によって、フードデリバリーサービス・レストラン・配達員の3者それぞれが不利益を受けているわけです。


ロイ氏は、「フードデリバリーサービスは何百万件もの営業取引を生み出しているが、恩恵を受けている人は存在しない」と指摘。Uber Eatsのようなギグ・エコノミーではなく、ドミノピザのような専属の宅配サービスこそが適切な宅配サービスだと主張しています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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