車にひかれても乗車拒否するほど高額なアメリカの救急車料金の謎に迫る

怪我人が乗車を断ることもあるほど高額なことで知られるアメリカの救急車の料金について、なぜ高額なのかを作家のデビッド・オクス氏が解説しています。
Why American ambulance rides are so expensive
https://davidoks.blog/p/why-american-ambulance-rides-are

2023年7月、当時25歳だったジャグディッシュ・ウィッテンさんはサンフランシスコをランニングしている際に、交通量の多い道路を横断中に自動車にはねられました。ウィッテンさんは「ちょっとひっくり返っただけ」と語っています。事故の目撃者が救急車を呼んだものの、ウィッテンさんは「救急車が高いことは知っており、自分が死ぬとは思わなかった」ため、救急車の乗車を断り、友人に近くの病院まで自動車で送ってもらいました。
病院でウィッテンさんは軽度の脳震盪(しんとう)と足の指の骨折、いくつかの打撲を負ったと診断されました。しかし、外傷を負ったため市内唯一の指定外傷センターであるサンフランシスコ総合病院に搬送される必要があったそうです。この搬送を断ることはできなかったため、ウィッテンさんは救急車に乗って約9.6km先にあるサンフランシスコ総合病院へ移動。そして、診断を受け、追加の治療を受けずにその日のうちに帰宅しました。
その後、ウィッテンさんは最初に向かった病院と、救急車で搬送されたサンフランシスコ総合病院から請求書を受け取ります。ウィッテンさんの考えでは、治療費はすべて保険でカバーされるはずでした。しかし、それから数カ月してから病院から病院にウィッテンさんを運んだ救急車サービスを提供する業者であるAmerican Medical Response(AMR)から請求書が送られてきた模様。請求の内訳は、走行距離に応じた追加料金が737ドル(約12万円)、搬送中の心臓モニタリング費用が314ドル(約5万円)、感染症対策費用が151ドル(約2万4000円)、基本料金が1万1670ドル(約190万円)の合計1万2873ドル(約210万円)でした。
ウィッテンさんは請求書を保険会社に送付したものの、AMRは提携外であるとして保険料の支払いを拒否。異議申し立ての結果、最終的に保険会社は9967ドル(約160万円)の支払いに応じたものの、ウィッテンさんは約3000ドル(約49万円)を自腹で支払う必要がありました。ウィッテンさんはAMRに請求に関する異議申し立てを行ったものの、最終的に約3000ドルを支払わなければいけなかったそうです。

ウィッテンさんが受け取った救急車の利用料請求は「サプライズ請求」と呼ばれており、患者が保険会社のネットワーク外の医療機関で、知らぬ間に、あるいは同意なしに治療を受けた場合に発生する請求です。
アメリカにおける救急車料金の請求方法の標準的な仕組みでもあり、毎年300万人の民間医療保険加入者が救急車を利用しますが、その半数がこの「サプライズ請求」を受けているというデータもあります。これは医療業界において他に類を見ないほど高い割合です。また、保険に入っていない場合は、全額を自己負担しなければいけなくなるため、さらに悪い状況に陥ることとなります。
そのため、アメリカでは多くの人が可能な限り救急車への乗車を避けます。2024年の世論調査によると、アメリカ人の23%が費用への懸念から救急車の利用を控えているそうです。

アメリカの救急車が異様に高額な理由のひとつは、救急車業者を所有しているのが悪徳プライベート・エクイティ・ファンドで、無力な患者を搾取しているためです。
ただし、それだけが理由ではないとオクス氏は言及。救急車事業者は慢性的な赤字経営で、利益率は低く、乗務員の給料も安く、毎年多くの業者が業界から撤退しているそうです。ウィッテンさんのように高額な請求をされる患者が後を経たないものの、それでも業者の経営は苦しいものである模様。
オクス氏はアメリカの救急車業者が慢性的な経営不振に陥っている根本の原因は、アメリカの法律が救急サービスに強制する仕組みにあると指摘。そして、救急サービスの費用のほぼすべては、待機時間、つまりはいつくるかわからない通報に備えて24時間体制で待機する救急隊員の人件費にあります。
例えば消防署の場合、市民はいつでも助けを呼べるようにするため、消防署は消防車と消防士を常に待機させています。この費用を賄うため、市民は税金を支払います。救急サービスも消防署と同じように、市民がいつでも救急車を呼べるように、車両と人員を24時間体制で確保しています。しかし、救急サービスは消防署とは異なり税金が財源とはなっていません。

その理由は、初期の救急サービスが葬儀社によって提供されていたことに端を発します。救急車での搬送が必要な重傷を負った患者は、座らせたままでは出血が悪化するため、通常は仰向けで寝かせた状態で搬送する必要があります。そのため、救急車には「長くて平たい荷台」が必要でした。ほとんどの地域で、そのような荷台を備えているのは、霊柩車だけでした。そのため、救急サービスは葬儀社によって提供されていたとのこと。
そもそも人間もいつ亡くなるかがわからないため、葬儀社は24時間体制で営業しており、夜中でも電話すれば霊柩車で迎えに来てくれるというサービスがありました。その点でも、葬儀社は救急サービスを提供するのに適していると考えられていたわけです。
ただし、葬儀社が提供する救急サービスはあまり良いものではありませんでした。装備は粗末で担架や毛布、酸素ボンベが備えられている程度で、出動するスタッフは医療訓練を受けていませんでした。そのため、当時の救急サービスで運ばれる患者の死亡率は非常に高かったそうです。
しかし、葬儀社にとっては葬儀こそがメインの事業であり、利益率の高いサービスでした。救急サービスで搬送した患者が死亡した場合、そのまま同じ葬儀社に葬儀を依頼するケースがほとんどであったため、救急サービスの方は提供コストを低くしているケースが多く、中には全く料金を請求しないケースもあった模様。
しかしその後、1960年代には救急サービスの特異な仕組みが連邦法により明文化されました。1965年、アメリカ政府は2つの大規模な社会保険制度を創設。ひとつは「65歳以上のアメリカ人に公的医療保険を提供する」というメディケアで、もうひとつは「貧困層にメディケアと同様のサービスを提供する」というメディケイドです。
どちらの制度も支払いに対応する医療サービスを列挙し、提供サービス単位ごとに払い戻しを行うというシステムです。例えば、虫垂切除手術を行った病院は、政府に1件の虫垂切除手術として請求します。このサービスの中に、ほとんど後付けのように追加されたのが救急車による搬送サービスです。搬送費用は両方の制度でカバーされ、搬送後に各搬送ごとに料金が事業者に支払われる仕組みでした。
1960年代にアメリカの法律が救急医療の費用負担方法を明文化したまさにそのタイミングで、救急医療の本質は変化し始めます。この変革はジョンズ・ホプキンス大学で心肺蘇生法が開発されたことから始まります。1965年には携帯型の除細動器が登場し、病院外で起きた辛抱発作の生存率が劇的に向上。さらに、ほぼ同時期に医療チームが患者のバイタルサインを遠隔地に送信できるようになったため、心停止や重篤な事故の生存率は飛躍的に高くなりました。
それと同時に救急医療の在り方を根本から見直す必要性が生まれます。初期の救急サービスは葬儀社の利用している霊柩車で患者を病院へ運ぶだけでしたが、新しい技術の登場により搬送中に本格的な医療行為が行われるケースが生まれたためです。
1966年にはアメリカ科学アカデミーが「偶発的な死亡と障害:現代社会の見逃された病」と題するレポートを発表し、アメリカの救急サービスは緊急医療に対する訓練及び設備が不足していると指摘。このレポートによると、ベトナムで重傷を負った兵士の方が、平均的な市街地で重傷を負った自動車運転者よりも生存率が高かったそうです。
これによりアメリカでも「救急医療サービス(EMS)」や「救急救命士」などが登場。救急救命士は医師ではないものの、病院へ向かう救急車の車内で医療行為を行うことができる人です。1973年に施行された救急医療サービスシステム法により、約300の地域でEMSが設立され、訓練を受けた救急救命士が普及することとなります。1960年代初頭には政府認定の救急救命士はほとんど存在しなかったものの、1980年代初頭にはその数が数十万人にまで増加しました。
初期の救急サービスは葬儀社が提供する安価なビジネスでした。しかし、EMSの登場により救急サービスは固定費の高い産業となります。固定費が高い理由は、訓練された専門家である救急救命士や、高価な医療機器が満載の救急車、それらを取りまとめる救急ステーションを維持しなければいけないためです。救急車を現場に派遣する費用はわずかなものですが、救急サービスを維持するのに莫大な費用がかかってしまうというわけ。
それ以降も救急サービスの固定費は急騰していったものの、メディケアは1965年に救急車に乗車した際の保険料を固定してしまい、民間保険会社もそれにならいました。その結果、実際の救急車を派遣するのにかかるコストと、保険料として支払われる金額の格差(差額請求)が大きくなります。しかし、救急サービスはメディケアとメディケイドにおいて、差額請求を行うことは違法とされています。つまり、救急サービスはメディケアとメディケイドの受給者を搬送する場合、毎回赤字を出さざるを得ないわけです。
そのため、救急サービスはこの赤字を回収するために、無保険者や民間保険加入者に対して、より高額な請求をせざるを得なくなります。これがアメリカにおける救急車の料金が異様に高額な理由であるとオクス氏は説明しました。
オクス氏はこのような事態を解消するための方法として、イギリスや日本のように税金から直接緊急サービスに資金提供を行うという案を挙げています。アメリカの一部の地域でも既にこの手法が用いられており、オクラホマ州のタルサやオクラホマ・シティでは政府が救急車業者から人員配置済みの救急車稼働時間を購入し、その分の税金を住民に対して毎月の光熱費に上乗せして前払いしてもらっています。これにより、タルサやオクラホマ・シティでは救急車に乗車しても料金は一切発生しません。
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in メモ, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Unraveling the mystery behind the exorbi….







