ネアンデルタール人は「近親交配によって絶滅したわけではない」かもしれない

現生人類(ホモ・サピエンス)の近縁種であるネアンデルタール人は約4万年前に絶滅したと考えられており、「ネアンデルタール人は近親交配によって遺伝子が劣化し、絶滅したのではないか」という説もあります。ところが新たな研究により、最後まで生き残ったネアンデルタール人はこれまで考えていたよりも高い遺伝的多様性を持っていたことが判明しました。
Genetic diversity of late Neanderthals in northwestern Europe | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-026-10625-1
Some of the last surviving Neanderthals were remarkably diverse — suggesting inbreeding didn't doom them | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/neanderthals/some-of-the-last-surviving-neanderthals-were-remarkably-diverse-suggesting-inbreeding-didnt-doom-them
ネアンデルタール人が絶滅した理由については、依然として多くの謎が残されています。シベリアに住んでいたネアンデルタール人のDNAを解析した過去の研究では、これらの集団は小規模で孤立したコミュニティに居住しており、近親間での交配が頻繁に行われていたことがわかっています。そのため、「ネアンデルタール人は近親交配による遺伝子の劣化によって絶滅したのではないか」という説もあります。
しかし、ネアンデルタール人のDNAは希少であり、特に質の高いゲノム(DNA上の遺伝情報)は非常にまれです。また、近親交配や遺伝的多様性の欠如を示す研究結果は、主にネアンデルタール人の生息域の端であるロシアで入手されたDNAに基づくものでした。
つまり、「ネアンデルタール人は近親交配を繰り返す小規模なコミュニティだった」という研究結果は、ネアンデルタール人のごくわずかなサンプルを元にしたものであり、これがネアンデルタール人全体を反映した結果なのかは不明だったというわけです。
今回、科学誌のNatureに掲載された論文では、新たに27体のネアンデルタール人から採取したDNAを分析しています。スペインのバルセロナ自然史博物館で館長を務めるカルロス・ラルエザ=フォックス氏は、「ネアンデルタール人から古代のDNAを採取することについて、今では当たり前だと考える人もいるかもしれませんが、実際は決して簡単なことではありません。新たに27体のネアンデルタール人のDNAが私たちの知識に加わることは、驚くべき成果です」と述べています。

今回の研究で分析されたネアンデルタール人のDNAは、いずれも5万2500年前より最近のもので、現在のベルギーとフランスにまたがる北西ヨーロッパの10カ所の遺跡から得られました。これらの遺跡のうち7カ所はベルギーのマース川流域に位置しており、この地域は7万年前より新しい後期ネアンデルタール人が集中して居住していたとされています。
遺伝子解析の結果、北西ヨーロッパの後期ネアンデルタール人は約5万4000年前に、他の既知のネアンデルタール人と共通の祖先から分岐したことが明らかになりました。また、他のネアンデルタール人の集団とは異なり、近親交配の痕跡がほとんどみられないことや、遺伝的多様性が低いわけではなかったことも示されました。
今回の論文の筆頭著者で、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の博士課程研究員であるアルバ・ボソムズ・メサ氏は、「ネアンデルタール人が絶滅したのは近親交配が多すぎたからだという誤解を否定できて、とてもうれしく思います」とコメントしました。
また、今回の研究では北西ヨーロッパの後期ネアンデルタール人が、シベリアのネアンデルタール人のように遺伝的に孤立した集団ではなく、遺伝的に相互につながり合った大きな集団だったことも判明。ボソムズ・メサ氏は、「ネアンデルタール人は何十万年にもわたりユーラシア大陸の広大な地域に生息していたので、当然ながら個体差が大きいのです。ネアンデルタール人について一概に語るのはよくありません。多様性を念頭に置く必要があります」と述べています。
新たに分析されたネアンデルタール人たちは、少なくとも4つの異なるグループに分かれており、高い遺伝的多様性を持っていました。グループ間の分岐は気候が比較的温暖だった時期に始まったようで、これはネアンデルタール人の繁栄にとって好ましい時期に人口が増加したことを示唆するものです。

by Allan Henderson
これまでの研究では、アフリカ以外の現代人のほとんどがネアンデルタール人のDNAを受け継いでおり、ネアンデルタール人とホモ・サピエンス(現生人類)が交配していたことが示されています。しかし、今回の研究で分析された北西ヨーロッパの後期ネアンデルタール人のDNAからは、現生人類と交配していた痕跡は見つかりませんでした。
この発見は、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの間にみられる顕著な非対称性を示しています。ボソムズ・メサ氏は「数世代前にネアンデルタール人の祖先を持つ初期の現生人類の例はいくつかあります。これとは対照的に、家系図に現生人類の祖先を持つネアンデルタール人の例は、今のところひとつも確認されていません」と述べています。
この非対称性にはいくつかの理由が考えられますが、ラルーザ=フォックス氏は「ネアンデルタール人と現生人類における社会的受容の差異」が影響しているのではないかと考えています。ラルーザ=フォックス氏は「つまり、初期の現生人類はネアンデルタール人の子どもを受け入れることができた一方、理由はどうあれその逆はなかったということです。この傾向は、一部のネアンデルタール人集団における多様性の低下と相まって、彼らの最終的な絶滅理由を説明できるかもしれません」と主張しました。
・関連記事
ネアンデルタール人は人間に絶滅させられたのではなく「勝手に絶滅した」という主張 - GIGAZINE
ネアンデルタール人が6歳のダウン症の子どもを育てていたことが判明 - GIGAZINE
約5万9000年前のネアンデルタール人が石器で虫歯を削って治療していた可能性 - GIGAZINE
約4万5000年前のネアンデルタール人が「よそ者の女性や子ども」を共食いしていた可能性 - GIGAZINE
20万年前のネアンデルタール人が使った接着剤に抗菌作用があることが判明、傷の手当てにも使われていた可能性が浮上 - GIGAZINE
早起きな人はネアンデルタール人からその遺伝子を受け継いだ可能性がある - GIGAZINE
「ネアンデルタール人から受け継いだDNA」が現代人の痛みの感受性に影響を及ぼしているという研究結果 - GIGAZINE
ネアンデルタール人はヒトのように言葉を話すことができたのか? - GIGAZINE
人類とネアンデルタール人が想定よりも古くからセックスしていたことが判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Neanderthals may not have gone extinct d….







