新型コロナウイルス収束後、私たちの生活はどのように変化するのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、仕事がリモートで行われ、レストランはデリバリー中心の営業、学校も閉鎖するなど、かつてない事態に発展しています。企業の幹部や投資家たちは新型コロナウイルスが終息した後に人々の生活がどのように変化すると予測しているのか、ニュースメディアのFast Companyが報じています。
How will the coronavirus change our lives?
https://www.fastcompany.com/90486053/all-the-things-covid-19-will-change-forever-according-to-30-top-experts
◆在宅勤務が「当たり前」になる
CDNサービスを提供するCloudFlareやMicrosoft、トレンドマイクロなど、多くのテクノロジー企業の幹部たちは在宅勤務が新しい働き方としてパンデミック収束後も続いていくという見方を示しています。CloudFlareのCEOであるマシュー・プリンス氏は、新型コロナウイルスの流行を「人類史上最大のリモートワーク実験」とみており、人々のリモートワークへのニーズに対し、雇用主は今後も柔軟に対応していく必要があるとしています。
ベンチャーキャピタル・GGVのジェフ・リチャーズ氏は、これまで会議にビデオで参加することは「手落ち」だと見なされがちだったものの、パンデミックの最中はビデオ会議が当然のものと受け取られている点を指摘。この行動の変化はパンデミック収束後も固定していくとみられています。もちろん、重要な会議は実際の参加が求められることがあると思われますが、日常的なルーティン会議については多くがオンラインで行われるようになるとリチャーズ氏は考えています。
マーケティング会社Creative Strategiesの主席アナリストであるティム・バジャリン氏によると、何人かのCIOがパンデミック収束後もスタッフの25%を自宅で作業させることを考えているとのこと。オフィスの需要が減る可能性があり、ウイルスの広がりやすさを懸念するという意味でも、長い間効率的だと信じられていたオープンオフィスの時代が終わるとバジャリン氏は考えています。トレンドマイクロのCEOであるエヴァ・チェン氏も「大きなオフィス」という概念から、「クラスターオフィス」のモデルに移行するという見方を示しています。
2017年にはBBCのインタビュー生中継中に子どもが乱入する様子が配信され大人気となりましたが、このように、家庭と仕事の境界線があいまいになることも考えられます。一方で、職場と家庭が物理的に同じであることで「常に仕事モード」になってしまうという問題も。従業員の幸福を重視するのであれば、この境界線を生み出す必要があり、考え方とプロセスの変更が必要であるとソフトウェア会社EverlawのCEOであるAJ・シャンカル氏は見解を述べました。
◆お金の価値を疑問視し始める
暗号通貨取引所・GeminiのCEOであるタイラー&キャメロン・ウィンクルヴォス氏らは、パンデミックにより、政府が過去にない形で経済に介入することを求められていると指摘。紙幣が印刷され負債が蓄積していくことで、人々は法定の通貨制度を再評価することになるとウィンクルヴォス氏はみています。「どこかのポイントで、人々は自分の持っているドルの価値と負債清算によって何が起こるかを疑問視し始めるはずです」とウィンクルヴォス氏は述べました。
◆教育の仮想化
教育コンテンツを提供するMcGraw-HillのCEOであるサイモン・アレン氏は、「秋までに教育が全て元の形になるとは思わない」という見方を示しています。一方で、教師はコンテンツを生徒に届ける方法や、テスト、評価などにおいて柔軟性と迅速さをもって対応することを求められています。今後はオンラインクラスと物理的なクラスの両方が実施されるようになるというのがアレン氏の見方です。
教育機関Flatiron SchoolのCEOであるアダム・エンバー氏は、多くの教育者がZoomやSlackを利用しての生徒の指導では不十分だと考えていることを指摘しています。教育向けに設計されていないツールを教育に使用すべきではなく、通常の状態に戻るとこれらツールの使用は減少していくとのこと。一方で、リモート教育やリモートワークに特化した全く新しいツールを作る起業家が増えており、新しい教育の形が継続していくことも考えられます。
◆ヘルスケアは問題に直面
ヘルスケア業界はパンデミックの影響を受け、デジタルヘルステクノロジーが今後は重要な部分を担っていくとみられています。しかし、デジタル環境で医師が職務を行うためには、患者の完全な病歴を見るということに障壁があると、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のパット・コンブス氏は指摘しています。システム間での相互運用がなく、患者の電子医療記録が追跡できないことで、医師が必要な情報を見ることができません。これらの情報をまとめるのは手作業になり時間がかかるプロセスとのこと。
一方で、量子コンピューティング会社IonQのCEOであるピーター・チャップマン氏は「次の12~18カ月で量子コンピュ-ターはスーパーコンピューターやクラウドコンピューティングが解決不可能な問題を日常的に解決し始める」と予測しており、量子コンピューターが新型コロナウイルスをモデル化し、人間の体の中で何が起こっているのかを明らかにして、将来的な経済へのダメージや人的なダメージを軽減する可能性を示しました。
◆ベンチャーキャピタルは考え方が変わる
ソフトウェア会社ExpensifyのCEOであるデイビット・バレット氏は、COVID-19が大規模な出資ラウンドと戦略を必要とするテクノロジー企業の脆弱性をあらわにしたと指摘。多くの企業がレイオフを実施したり買収を求める事態に発展しています。一方で、収益率の高い企業は締めるべきところをきっちり締めて通常通りビジネスを行っています。
COVID-19によって「価値がある企業とは何か」という投資家の考えや戦略が変化しており、資金調達ラウンドや収益といった「量的な」側面ではなく、組織構造・チーム・文化・柔軟性・収益性といった「質的な」側面が重視されるようになっているとのことです。
◆交通機関は復活・進化する
Lyftのマイケル・マッサーマン氏は社会活動が再開しても、人々が社会的距離を保った、安価な方法を求めると考えています。これまで電車通勤を行っていた人は自転車やスクーターといった方法に転換する可能性があるとのこと。これにより、国や地方、企業などは車中心ではない街作りを検討する機会を得るとみられています。
また旅行管理会社TravelPerkのCEOであるアヴィ・メイヤー氏は、地域のロックダウンが緩和されるにつれ、アジア太平洋地域ではわずかながらも旅行増加の兆しが見え始めていると述べています。航空業界が停止している以上、旅行が再開した際には国内旅行が中心となるため、電車の利用は増えるとみられています。
◆製造業はサプライチェーン構築に向かう
マッキンゼーのエド・バリボール氏は、世界的なサプライチェーンが機能していないことから、企業は短期的に必需品不足に悩まされ、地理的に近い場所から代替品を得ることになると述べています。長期的には、政府や企業が直面するリスクを定量化し、潜在的な損失をビジネスに組み込むことが予測されています。企業はさまざまな事態の規模と影響をモデル化してサプライチェーンを構築し、将来的な回復力のために取るべき行動を決定するとみられます。その方法の1つとして、「身近にサプライヤーを置く」ことが含まれるとのこと。
また、オートデスクの元CEOであるアマー・ハンスパル氏も、「世界中の工場で安価に製品を製造する」という方法の限界がパンデミックで示されたとみています。COVID-19の流行は「目覚ましアラーム」でありニアショアリングあるいはオンショアリングでサプライチェーンの必要性を述べました。
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