新型コロナウイルスはデジタル広告市場にどのような変化をもたらすのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大を防ぐために多数の企業の経済活動が停止していますが、その影響がデジタル広告業界にどの程度出る見込みなのかについて投資家のミュールさんがブログにまとめています。
Quantifying the Adpocalypse - Mule’s Musings
https://mule.substack.com/p/quantifying-the-adpocalypse
ミュールさんはまず、広告費が景気に大きく左右されるものであることを指摘しています。下記の画像では1970年から2018年までの広告費(青)とGDPの成長率(オレンジ)が示されていますが、広告費はGDPの変化の影響を強く受けている事が読み取れます。
Friendly Reminder Advertising is Cyclical
— the mule (@FoolAllTheTime) 2020年3月10日
Usually a 1.5x Multiplier pic.twitter.com/h7kYt8Dgyp
次にミュールさんは、前回の景気後退局面である2008年前後について言及しており、この期間にGoogleが成長していたのはデジタル広告の市場が拡大していたからだと述べています。2010年にはデジタルメディアの視聴時間と広告費のシェアに大きな差が存在していましたが、2018年には差がほとんどなくなっていることがベンチャーキャピタルのBondによる調査で判明しています。
デジタル広告はユーザーがページを開いた瞬間にオークションが発生し、最も高い価格を付けた広告主が広告を出稿できるという仕組みとなっており、広告主が予算を停止すれば即座に広告の出稿が止まるため、他の広告媒体に比べてより素早く影響が表れてしまうとのこと。もちろん、景気の回復局面では素早く広告費が戻ってくるという特徴もありますが、これは景気がどのように回復するかに大きくかかっています。
なお、インターネット広告の業界団体であるIABの(PDF)調査では、3月・4月に支出される広告費は年間の計画よりも推定38%、5月・6月は推定28%ほど低下する見込みとのこと。
もっとも、この比較元の「年間の計画」というのは前年比15%程度の増加を見込んでいたため、実質の前年比は3月・4月で約29%の低下、5月・6月で約17%の低下です。とはいえ、この結果をもとに試算すると2020年第2四半期のデジタル広告業界は約20%程度収益が低下することになります。
こうした動きは既にいくつかのサイトで報告されており、例えばさまざまなサイトの収益結果をまとめて指標にした「The Online Ad Revenue Index」では、3月末時点で前年比約40%ほど収益が減少しているとのこと。
また、(PDF)TwitterやFacebook、Pinterestなどの各社が「収益が減少する見込みだ」との報告を行ったほか、AmazonやWalmartがデジタルメディアとの取引を停止したという報道が行われています。
状況が悪化していますが、Bloombergのコンセンサスによると、広告が売り上げのほとんどを占めるGoogleやFacebook、The Trade Deskの売り上げは第2四半期で前年並、通期で成長する予想だとのこと。ミュールさんは、投資のアドバイスではないと注記した上で、このコンセンサスは過度に楽観的だとの考えを述べています。
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