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マインドフルネスブームは「資本主義が仏教思想をパクった」という主張

by Marubatsu

「今という瞬間に集中し、さまざまな価値判断を捨て、感じるままに現実を受け入れる」というマインドフルネスは、もともとは仏教から派生した考え方であり、ストレスの多い現代社会で活用すべきテクニックとして西洋で人気を博しています。しかし、そうしたマインドフルネスの流行は「資本主義による仏教思想の略取だ」と、サンフランシスコ州立大学の経営学教授であるロナルド・パーサー氏が厳しい批判を展開しています。

McMindfulness: how capitalism hijacked the Buddhist teaching of mindfulness | CBC Radio
https://www.cbc.ca/radio/tapestry


パーサー教授は経営学者である一方で、仏教禅宗系である太古宗の僧侶でもあります。パーサー教授は、「マインドフルネスがこれほどまでに人気が出たり、実入りのいいものになったりするとは夢にも思いませんでした」という元仏教僧の言葉を紹介しています。

パーサー教授によると、ストレス関連の欠勤によってアメリカでは年間3000億ドル(約33兆円)の経済損失があり、10人中7人がストレスが原因で退職した経験があるとのこと。この調査結果についてパーサー教授は「人々が不安やストレス、うつ病に苦しんでいることは確かであり、問題があります」とした上で、企業や社会全体に眠る「ストレスがまん延する原因」を解決するのではなく、従業員が個々のストレスにマインドフルネスで対応する方向に進んでいることに疑問を呈しています。

by fotologic

パーサー教授は、週に60~70時間働くGoogleのエンジニアを例に挙げて、「Googleが提供するマインドフルネス教育によって、Googleのエンジニアは『ストレス軽減』という個人レベルの恩恵を受けています。しかし、マインドフルネスによって得た思慮深さによって、自分たちが取り組んでいるデジタル技術を疑問視することはありません。Googleのエンジニアがマインドフルネスによって思慮深く生産的になることで、社会全体の集中力を散漫にするような技術が生み出されているのは悲しい皮肉です」と述べています。

また、パーサー教授はアメリカ陸軍や海兵隊がマインドフルネスを軍隊のメンタルトレーニングに取り入れる研究を行っていることを指摘。戦場に向かう兵隊は大きなストレスにさらされ、時にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)をかかえることもありますが、パーサー教授は「マインドフルネスによって兵士のストレスを緩和することで、誤って子どもを射殺する代わりに、民間人を救うことができるかもしれません。もちろんそれ自体は称賛に値しますが、マインドフルネスの軍事利用はもっと政治的に大きな問題から目を背けています」と、批判しています。

そもそもマインドフルネスは、仏教においてはストレスを緩和する手段ではありません。仏教においてマインドフルネスは「常に落ち着いた心で生活を送る」という生き方を示す考え方であり、ストレス軽減という目的を達成する手段ではないと、パーサー教授は主張しています。

by Nick Fewings

パーサー教授は「本来のマインドフルネスは個人のストレスを軽減するものではなく、個人を超えて存在する苦しみの原因や状況と相互依存するためのものだと思います」と述べ、マインドフルネスを資本主義の「道具主義的アプリケーション」から解放するべきだと訴えました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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