サイエンス

「マインドフルネス瞑想(めいそう)」は本当に効果があるのか?

by OURLIFEBLOOD

瞑想(めいそう)」や「マインドフルネス」は2015年時点で10億ドル(約1100億円)規模の市場を形成していますが、人間の健康や肉体・精神にどのような影響を及ぼすのかはまだまだ解明されていない部分が多々あります。実際は成果が過度に誇張されたものではないのか、科学・環境ライターのブルース・リーバーマン氏がその効果や実例を追っています。

ちなみに、「瞑想」「マインドフルネス」ともに「精神集中」の意味合いがあるものの、厳密には別物だそうですが、リーバーマン氏は文中で「マインドフルネス瞑想」という呼び方もしています。

Peering into the meditating mind
https://www.knowablemagazine.org/article/mind/2018/peering-meditating-mind

「瞑想」は何千年も前から行われていますが、心理学者や神経科学者が詳しい研究を行うようになったのはここ数十年のこと。その中で、瞑想が人間をリラックスさせたり、慢性的なストレスを管理したりすることに役立ち、鎮痛剤への依存度を軽減することにつながることがわかっていて、別の研究では、うつ病につながる患者の思考に対処することが可能な、瞑想と心理療法を組み合わせて作り出したマインドフルネスベースの認知療法も登場しています。

しかし、瞑想に関する多くの研究は少数の被験者を対象にしたものであり、フォローアップ研究もないというのが現状です。つまり、他の医学研究などと比べると、「科学的に厳密ではない」という問題点があるとのこと。2017年にはPTSDの治療法に瞑想が最適であるという研究結果が公表されていますが、こういった論文もあくまでも「研究における比較的初期段階の内容」を公表しただけのものが多いそうで、より深く内容を検証する必要があるとリーバーマン氏は指摘しています。

by Ben White

もちろん、より根本的な問題である「瞑想は脳を物理的に変化させるのか?」という点に焦点を当てている研究もあります。

通常、人間は日常的に何かしらの物事に気を配っており、過去を反省したり未来を心配したり、自己分析したり自己批判したりと、思考は次から次へと飛び火するようにさまざまなものへ向けられています。しかし、カーネギーメロン大学で健康と人間のパフォーマンスについて研究している心理学者のデイヴィッド・クレスウェル氏によると、「人が静かに座って呼吸に焦点を当てる」という瞑想を行うことで、意識を特定の物事に集中させることができるようになるとのこと。


2010年、ハーバード大学の研究者が2250人の被験者に対して「iPhoneアプリを使って1日の行動を思い返してもらう」という調査を行いました。被験者の回答結果から、人間は1日の47%の行動が不明瞭であることが明らかになっており、この「ぼんやりした時間」は人々を不幸にすることにつながることも判明しています。それとは対照的に、しっかりと意識的に生活することは、日々の生活の質を向上させることにつながるとクレスウェル氏は語っています。 つまり、瞑想することで無意識に過ごす時間が少なくなり、より幸せに日々を過ごせるようになるというわけ。

クレスウェル氏は、科学者としては瞑想の効果に対して懐疑的であると断りつつも、自分自身の体感として、瞑想の効果は大きいと語りました。実際に、1時間の瞑想を行ったときには、体が痛む一方で心は「完全に静かで開かれた状態」にあり、瞑想が本当に人々の人生を変えることができるかという考えを根本的に変えることにつながったとのこと。

by Isabell Winter

また、研究によって、瞑想によって脳内に変化がもたらされることも示されています。

過去20年にわたり、複数の神経科学者たちがfMRIなどを用いてマインドフルネス瞑想の物理的効果を研究してきました。その結果、マインドフルネス瞑想は脳機能や構造における神経再生修復を引き起こすかもしれないことが示唆されています。マインドフルネス瞑想は、同情・共感・自己認識に関連する前帯状皮質部分の脳ネットワークを活性化することがfMRIを使った調査で判明しているのですが、「瞑想をしていないときにも脳活動に変化をもたらすものなのか?」「もしもそうならばどれくらい瞑想することで日常的に効果を得られるものなのか?」といった点は不明瞭だそうです。

加えて、マインドフルネス瞑想が脳の構造を変化させる可能性が高いことを示唆する研究もあります。マサチューセッツ総合病院のサラ・ラザル氏らが2011年に公表した研究では、マインドフルネス瞑想が脳の海馬内の灰白質密度を増加させる可能性があることが示されました。ただし、灰白質の密度増加による脳への影響は記事作成時点では不明です。それでもラザル氏は、「研究で使用されたほとんどのデータは2か月の瞑想練習期間に収集されたもので、ほとんどの人の脳が瞑想により変化を続けています。よって、我々はより長い期間にわたって人々の脳内の変化を追跡する研究を行う必要があります」と語っています。

by jesse orrico

クレスウェル氏は瞑想関連の研究に基づき、マインドフルネスがストレスに特異的な効果を発揮することを見いだしており、「トップダウンストレス調節」に重要な前頭前皮質の活動増加を引き起こし、扁桃体における活動および機能的連結性を減少させると指摘しています。これは研究者の間で広く知られていることだそうですが、扁桃体で起こっていることについてはあまり明確になっていないそうです。

脳における最も基礎的な部分のひとつである「扁桃体」は、脅威に対応するための単純なアラームセンターとしての役割を担うだけでなく、環境の中で重要なことすべてに気づくために不可欠な、肉体的ネットワークと呼ばれるものの中心でもあります。例えば、母親の扁桃体は赤ん坊の楽しい顔に反応して非常に活発になることが明らかになっていますが、同じように瞑想を行うことで扁桃体を活発にすることが可能です。

クレスウェル氏が2015年に公表した研究では、3日間の集中的なマインドフルネス瞑想の練習が、ストレス応答に関連する右扁桃体と、感情を調節する役割を果たす前帯状皮質との間の機能的連結性を低下させることが明らかになっています。さらに、2016年に公表された研究から、同じく3日間の集中的なマインドフルネス瞑想の練習が、脳が休息しているときに働く脳内ネットワークと、ストレス調節に関与する前頭前野の接続の増加をもたらすことが判明。また、同研究では高ストレス下で上昇する「インターロイキン-6」を瞑想により低下させることが可能であることも示されています。なお、瞑想により脳の扁桃体と前頭前野の接続性が増すことで、PTSDの症状が改善することも判明しており、退役軍人などにとって瞑想が有益であるといわれることにはしっかりとした裏付けが存在することも明らかになっています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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