サイエンス

マインドフルネスな瞑想によって自己中心的で不寛容になる人がいるという研究結果、良い効果を得るには何が大事なのか?


「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」を意味するマインドフルネスは、Googleの研修にも取り入れられており、「寛大な精神を獲得する」「協調性を高める」とった効果があるとして大きな注目を集めています。一方で、「マインドフルネスには仕事のモチベーションを下げる効果がある」といったネガティブな意見も存在しています。そんな中、バッファロー大学で社会心理学を研究するマイケル・ポーリン氏は「マインドフルネスは実践する人の考え方によって効果が異なり、考え方によっては逆効果を及ぼす可能性がある」と主張しています。

Mindfulness meditation can make some Americans more selfish and less generous
https://theconversation.com/mindfulness-meditation-can-make-some-americans-more-selfish-and-less-generous-160687

PsyArXiv Preprints | Minding your own business? Mindfulness decreases prosocial behavior for those with independent self-construals
https://psyarxiv.com/xhyua

ポーリン氏によるとアメリカにおいて、マインドフルネスは過去数年間で爆発的に普及し、数多くの瞑想(めいそう)スタジオや瞑想アプリなどが作成されているとのこと。2019年にはアメリカにおけるマインドフルネス関連の市場価値は12億ドル(約1300億円)に到達し、2022年までに市場価値が20億ドル(2200億円)を超えると予想されています。

また、マインドフルネスは学校機関や医療現場、刑務所などの幅広い現場で採用され、アメリカの雇用主の5人に1人が従業員に対してマインドフルネス関連のサービスを提供しています。ポーリン氏は「マインドフルネスはストレスを軽減し、自尊心を高め、精神疾患の症状を軽減することができる」とする研究結果を例に挙げて、「マインドフルネスを導入する教師や雇用主は、マインドフルネスに対して『人々をより寛大かつ協力的にさせる』という生徒や従業員にとって望ましい効果を期待しているのでしょう」と指摘しています。


しかし、ポーリン氏はマインドフルネスがアメリカとは文化が大きく異なるアジアで生まれた考え方であることに着目して、「アメリカ人は自らを個人的な枠組みに当てはめて『私が求めるもの』『私は何者なのか』といった考え方をします。それに対して、アジアの人々は自らを集団的な枠組みに当てはめて『我々が求めるもの』『我々は何者なのか』といった考え方をします。水の種類が異なると料理の味が変わるのと同じように、人々の考え方の違いは、マインドフルネスの効果に影響を与えている可能性があります」と主張。さらに、「同一じ文化に所属する人でも、考え方には違いが生じます」と述べ、アメリカ人のの中でもマインドフルネスがもたらす効果には違いが出るという考えを示しています。

上記のような考え方の相違によるマインドフルネスの効果の違いを明らかにするために、ポーリン氏は366人の学生を対象に性格診断を行い「自らを集団的な枠組みに当てはめているグループ」と「自らを個人的な枠組みに当てはめているグループ」に分けた上で、各グループにマインドフルネスもしくは他のアクティビティを実践させた後の慈善活動への寄付金の額を比較しました。その結果、「自らを集団的な枠組みに当てはめているグループ」では、マインドフルネスを実践した人の寄付金額は実践していない人に比べて17%増加し、「自らを個人的な枠組みに当てはめているグループ」では、マインドフルネスを実践した人の寄付金は実践していない人より15%減少することが判明しました。

ポーリン氏はこの結果から「自らを個人的な枠組みに当てはめている人々にとって、マインドフルネスは彼らを個々の目標や欲求に集中するように駆り立て、彼らを利己的にさせるように働きます」と述べ、考え方の違いによるマインドフルネスの効果の変化を主張しています。


また、ポーリン氏によると、人々が自らを「個人的な枠組み」と「集団的な枠組み」のどちらに当てはめるかは、「『私は(I)』『私に(me)』といった単語を多く含む文章読む」タスクAか「『私たちは(we)』『私たちに(us)』といった単語を多く含む文章読む」タスクBという簡単なタスクを実行させるだけで変化させることが可能とのこと。実際に上記のどちらかのタスクを実行させた後に「慈善団体の寄付を募る電話をするボランティア活動」に参加するか尋ねる実験を行った結果、タスクAを実行したグループではボランティアへの参加率が33%低下し、タスクBを実行したグループではボランティアへの参加率が40%上昇しました。この結果から、ポーリン氏は「一時的に考え方を変えるだけで、マインドフルネスの効果も変化すると考えられます」と推測しています。

最後にポーリン氏は「マインドフルネスは良い影響を及ぼすこともあれば、悪い影響を及ぼすこともあります。マインドフルネスを実践して良い影響を引き出したい場合は、自らを集団的な枠組みに当てはめることを意識するべきです」と締めくくっています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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