マインドフルネスな瞑想は仕事のモチベーションを下げる可能性が示される
by Thư Anh
「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」という意味合いのマインドフルネスはGoogleが研修に取り入れていることもあり知名度を得ました。マインドフルネスは瞑想を通じて訓練することができるため、Apple・Google・Nikeの社屋には瞑想ルームが設置されているほど。しかし、マインドフルネスは仕事へのモチベーションを下げるという研究結果が示されました。
Mindfulness Meditation Impairs Task Motivation but Not Performance - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S074959781630646X
Opinion | Hey Boss, You Don’t Want Your Employees to Meditate - The New York Times
https://www.nytimes.com/2018/06/14/opinion/sunday/meditation-productivity-work-mindfulness.html
マインドフルネスな瞑想の核となるのは「物事をありのままに受け止める」ということです。一方でモチベーションという考えのベースにあるのは「よりよい未来を手に入れること」であり、少なからず現在への不満という要素が含まれます。この「ありのままを受け止めること」と「不満をばねにする」という発想は、相いれないのではないか?と研究者は考えました。
この仮説について調べるため、行動科学者による研究チームは数百人の被験者を対象とした5つの研究を実施し、マインドフルネスとモチベーションの間に関係があるかどうかを調べました。その結果、「瞑想はモチベーションを下げさせる」という強い証拠が見つかったとのこと。
今回の研究の被験者の一部はプロの瞑想コーチの指示のもと呼吸に集中し、自分の肉体の感覚を心の中でスキャンするという練習を行っていました。これは瞑想の方法としてごく一般的なもの。ただ、瞑想の方法は決まったものではないため、被験者の中には瞑想中に考えを巡らせたり、ニュースを読んだり、直近の行動を書き連ねたりする人もいたそうです。
by Jared Rice
そして瞑想後の被験者に毎日職場でやるような「ビジネスメモの整理」「コンピューター入力」といったタスクを課し、同時に「割り当てに対してかかった時間や労力はどのくらいか?」「このタスクをこなすのが好きか?」といった質問を行いました。
すると、瞑想を行った人はモチベーションのレベルが平均的に低く、また被験者は割り当てられたタスクを行うことを「好まない」あるいは「時間や労力を割きたくない」と答える傾向にあったとのこと。瞑想は未来への思考を減らし、平静や静穏といった感覚を増大させます。このような状態が「仕事のプロジェクトに取り掛かろう」という気持ちを減らすものとみられています。
被験者の実生活でのパフォーマンスについても調べられたところ、平均的にみて、瞑想が被験者に利益を与えたとも、仕事の質を損なわせていたともいえなかったそうです。
過去に行われた研究では瞑想が精神面での集中力を増大させると示されていたことから考えると、今回の研究における瞑想実践者のパフォーマンスは上がるべきところでしたが、モチベーションの低さがあるべき利益を相殺しているようにみえたとのこと。
研究者は、マインドフルネスは「精神の昼寝」のようなもので、煩わしさから解放され、平穏さやリフレッシュを手に入れられるものと考えており、「誰が昼寝から目覚めてファイルの整理をしたがるのだろうか?」と問いかけています。
by energepic.com
成功にとってモチベーションはその人の人格や知能と同じぐらいに重要であり、かつ自分でコントロールできるという強みを持ちます。また、会社にとっても従業員のモチベーションは重要であり、2013年に行われたギャラップの調査では、仕事に没頭する社員が多い会社は、成長と生産性において他の会社よりも優れているということが示されています。
多くの企業が奨励金によってモチベーションを上げるという取り組みを行っているため、金銭的な誘因がマインドフルネスによるモチベーション低下を相殺できるかも調べられましたが、相殺することはできなかったとのこと。物質的なモチベーションは、内面的なモチベーションの代理にはならなかったそうです。
この研究結果から、「マインドフルネスは仕事上の困難に対処することの助けにはなるかもしれませんが、環境次第なのかもしれない」と研究者は述べました。この研究はマインドフルネスが受容や穏やかさをもたらすということを否定するものではありませんが、「一度受容がピークに達したら、熱心に仕事に取り組むモチベーションを得られない可能性がある」としています。
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