なぜ頭のいい人でも愚かな行動を取ってしまうのか、そこには「クリティカルな考え方」の重要性


物事を何でもよく知っていて「あの人は頭がいい」と言われるような人でも、時には人々が思うことから大きく外れた間違いを起こしてしまうこともあるものです。物知りであるからといってその時々に適切な判断ができると限らないのは「クリティカルな考え方ができるか」という要素が大きく関わっており、そのことが人生の質を決定づける上で大きく役割を果たすという研究結果が明らかになっています。

Why Do Smart People Do Foolish Things? - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/why-do-smart-people-do-foolish-things/

カリフォルニア州立大学 ドミンゲスヒルズ校で心理学部の准教授をつとめるヘザー・ドミンゲス博士は時おり、的外れで面白い間違いをしてしまって家族からからかわれることがあるそうです。博士号を取得するほどの人物であることから、ドミンゲス氏が「知的能力が高い」とすることに異論が唱えられることは少ないはずですが、そんな人物でさえも的外れで時には愚かな間違いを起こしてしまうということは、実は「頭が良い・知的能力が高い」からといって「間違いを起こさない」と言い切ることはできないことを意味します。

人の「頭の良さ」をはかるための指標の一つに「IQテスト」が挙げられます。このテストでは、空間視角パズルや数学的な問題、パターン認識や言語的な問題、図形認識などの問題を解かせることで、被験者の知能指数が測定されます。

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知的能力が高いということが、人生において有利な結果を生む傾向にあることには間違いはありません。ドミンゲス氏によれば、知性が高いほどより高い教育を受け、その後の職でも有利な条件を得ることができる傾向にあるほか、特に青年期において犯罪をおかす、または犯罪に巻き込まれる確率が低くなるとのこと。しかし一方で、人生を通しての豊かさや満足感という観点にたつと、実はIQテストの結果との関連は見受けられないという研究結果も明らかにされているそうです。ウォータールー大学の心理学者であるイゴール・グロスマン准教授らの研究チームは、ほとんどの知能検査は実社会での判断能力や、人間関係の構築能力には関係がないという研究結果を発表しています。

一方、それらの要素に大きく関わり、改善することができるのが「クリティカルな考え方ができるかどうか」という要素だとドミンゲス氏は指摘します。クリティカルな考え方とは日本語で批判的思考とも言い換えられるもので、物事の問題を特定し、適切な分析を行うことで最適解を導き出すための思考方法です。よく「批判的」という言葉のニュアンスから否定的な考え方と受け止められることもありますが、原則的には必要な情報を分析、吟味して取り入れ、客観的把握をベースとした正確な理解を行うことを意味します。

クリティカルな考え方は、複数の認知スキルを組み合わせて結論を導き出すことに主眼をおいた思考方法であり、その能力を適切なときに発揮することで初めて有意義な結果を残すことができます。クリティカルな考え方ができる人は、「人当たりの良い懐疑主義者」であり、事実ベースで物事を考え、他人が誤った方向に誘導を仕掛ける意図を見抜く力があるほか、バイアスの存在を認知し、その影響を可能な限り排除するという概念を理解して行動に移せる人物であるといえます。

By tec_estromberg

クリティカルな考え方を持つ人が、人生でどれほど大きな問題に直面するかについて行われた調査からは、そのような人たちは悪い出来事に直面する度合いが比較的低いという結果が判明しているとのこと。調査は被験者に対して過去の悪い出来事を全て挙げてもらった後に、その人がどの程度クリティカルな考え方の持ち主であるかをはかる調査を実施。調査にはHalpern Critical Thinking Assessment(HCTA:ハルパーン・クリティカル・シンキング調査)と呼ばれる手法が用いられ、「言語による論理的思考力」「議論分析力」「仮説検証・可能性・不確実性に関する考え方」「決断力」「問題解決力」の5つの観点について測定が行われたとのことです。また、「過去の悪い出来事」としては「教育に関するもの」「健康面」「法律面」「対人関係」「金銭的なもの」などの項目が用意されていたとのこと。

そしてこの調査の結果、クリティカルな考え方ができる人は「悪い出来事」に遭遇する可能性が低く、人生をより良く歩んでいるということが明らかにされています。ドミンゲス氏はまた、「クリティカルな考え方ができる人」と「知的能力の高い人」のどちらが人生をより良く歩んでいるかについても調査を実施。すると、どちらの層も大きな問題を抱えずに生活を送る傾向にあることが見いだされましたが、クリティカルな考え方を持つ人のほうが、その度合いがより高かったことが明らかにされているそうです。

このように、クリティカルな考え方を持つように努めることは、人生の質を高めることにつながる可能性を示唆する研究結果が明らかになっています。ドミンゲス氏は最後に、「知的能力は遺伝的な要素が関わることもあるので、その能力を高めるのが難しいこともあります。しかし、クリティカルな考え方はトレーニングによって身に付けることが可能で、そのメリットはより長いあいだ持続します。誰でもクリティカルな考え方を身に付けることはできます。そしてそれをすることが『頭の良い行動』といえます」と語っています。

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