メモ

なぜ白人の既婚女性は保守派の候補者に投票する傾向があるのか?

by Daria Shevtsova

近年の世界情勢ではアメリカのドナルド・トランプ現大統領を筆頭に保守派の台頭が目立っており、「リベラル政党が有利」とする事前の世論調査を覆すケースも多々見られます。保守政党に投票しやすい見過ごされがちな層として、「白人の既婚女性」のグループがあるとメルボルン大学の社会学准教授であるLeah Ruppanner氏らが主張しています。

Gender Linked Fate, Race/Ethnicity, and the Marriage Gap in American Politics
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1065912917702499

Why white married women are more likely to vote for conservative parties
https://theconversation.com/why-white-married-women-are-more-likely-to-vote-for-conservative-parties-124783

2016年のアメリカ大統領選挙では、事前の世論調査から民主党のヒラリー・クリントン氏が有利とみられていましたが、結果的には大方の予測を覆して共和党のトランプ現大統領が当選しました。また、2019年のオーストラリア総選挙でも、野党の労働党有利という予測があったものの、スコット・モリソン首相が率いる与党保守連合が勝利を収めました。

Ruppanner氏は、事前調査と選挙結果で異なる結果が出たことに対し、事前調査では両国の保守派を支持する女性の有権者が見過ごされてきたと指摘。クリントン氏は女性有権者の票を集めることができず、オーストラリア総選挙でも与党を支持した女性が多かったとのこと。「女性の有権者がアメリカやオーストラリアの選挙を振り回しています」と、Ruppanner氏は述べています。

by Element5 Digital

Ruppanner氏は女性による保守派の支持を理解する重要な鍵は、「リンクした運命」だと考えています。リンクした運命というアイデアは、少数派の人種グループが投票先を決定するときの傾向を説明するために使われてきた概念です。

たとえばアメリカにおいて少数派であるアフリカ系アメリカ人の人々は、一般的に「アフリカ系アメリカ人というグループ全体の幸福が自分の利益につながる」という認識を持っています。このように、集団と自分の運命がリンクしているという意識は、有権者が個人的な問題よりも「アフリカ系アメリカ人」などのグループについての未来を重視し、アフリカ系アメリカ人がリベラルな候補者に投票する傾向を説明します。

by Rebrand Cities

同様に、女性たちも「女性全体にリンクした運命」を認識していると一般的に見なされており、女性有権者はリベラルな女性候補者に投票すると考えられてきました。そこで、実際にRuppanner氏らの研究チームは女性たちが持つ「女性全体にリンクした運命」の認識について調査しました。すると、「女性全体にリンクした運命」についての認識は、人種と婚姻ステータスという2つの側面に左右されることがわかったとのこと。

たとえばアフリカ系アメリカ人の女性は、未婚か既婚かに関わらず「女性全体にリンクした運命」を白人女性よりも強く感じていました。ところが、白人またはラテン系の女性については、「女性全体にリンクした運命」を感じる傾向が、未婚か既婚かによって変化するそうです。

白人女性においては、独身女性の38%、離婚した女性の30%が「女性全体にリンクした運命」を強く感じていたものの、既婚の女性では18%ほどしか「女性全体にリンクした運命」を強く感じていませんでした。ラテン系の女性も同様の傾向だったそうで、「これら2つの人種グループにとって、結婚すると女性同士のつながりが弱まることを意味します」と、Ruppanner氏は指摘します。

by Daria Shevtsova

結婚により「女性全体にリンクした運命」の認識が変化することが、既婚の白人女性において保守政党を支持する傾向が強い理由だとRuppanner氏は考えています。白人やラテン系の既婚女性がリンクした運命を認識するのは他の女性ではなく、結婚相手の男性だとのこと。

Ruppanner氏の研究チームがアメリカに住む317人の白人女性に対するインタビューを行ったところ、保守的な既婚女性は「男性にとって物事がよくなるほど、自分の人生も向上する」と考える傾向がみられました。対照的に、リベラルな既婚女性は「他の女性のために自身の経済的資源や特権を手放すことができる」と答える傾向がありました。

「私たちの研究結果は、既婚の白人女性は男性とのつながりを強く感じており、家族の将来を考慮して保守派を支持していると示唆しています」とRuppanner氏は指摘。政治学者らは保守派の台頭を予想外と見なしていますが、白人の既婚女性における投票傾向を考慮することが、近年の政治情勢を判断する上で重要とのことです。

by Moose Photos

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「投票しないで」と若者に呼びかける高齢者たちのムービーが登場、その意図とは - GIGAZINE

新聞や雑誌のブラックリストに載ったジャーナリストが立ち上げた独立メディア「Quillette」とは? - GIGAZINE

世界で初めてインターネットでの投票を国政選挙に導入した国で選挙結果はどう変わったのか? - GIGAZINE

トム・クルーズ(?)が荒野を荒々しく走り抜けながら主演作と共に選挙への投票を呼びかけるムービーが公開中 - GIGAZINE

なぜドナルド・トランプは勝利し大統領になれたのかという「5つの理由」と「今後やるべき5つのこと」 - GIGAZINE

トランプ勝利に対し「我々は大統領選を拒絶する!」「私の大統領ではない!」と叫んで大規模デモ化していくムービーまとめ - GIGAZINE

男女平等が実現されるほど、女性は科学や数学の道を選ばなくなるという研究結果 - GIGAZINE

科学や数学の分野において男女に成績の差があるのか、160万人の高校生のデータから判明したこととは? - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.