アフリカの熱帯地域が自動車2億台分の二酸化炭素を排出していたことが判明
by Jonathan Larson
植物は大量の二酸化炭素を吸収してくれることから、豊かな熱帯雨林のあるアフリカ大陸は地球を代表する二酸化炭素吸収源であるように思えます。しかし、日本の人工衛星を活用した観測により、アフリカ大陸ではむしろ膨大な二酸化炭素が放出されていることが判明しました。
Africa’s tropical land emitted more CO2 than the US in 2016, satellite data shows | Carbon Brief
https://www.carbonbrief.org/africas-tropical-land-emitted-more-co2-than-the-us-in-2016-satellite-data-shows
Satellite study reveals that area emits one billion tonnes of carbon
https://phys.org/news/2019-08-satellite-reveals-area-emits-billion.html
Africa’s tropical land emitted more CO2 than the US in 2016, satellite data shows | Carbon Brief
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エディンバラ大学で地球科学を研究しているポール・パルマー氏らの研究チームは、日本の温室効果ガス観測技術衛星いぶき(GOSAT)と、NASAの軌道上炭素観測衛星OCO-2が収集したデータを元に、地球上のどの地域が二酸化炭素を吸収または放出しているかを調べました。
以下の地図は、2015年と2016年の二酸化炭素放出量を色で表したものです。色が濃い青色に近いほど多くの二酸化炭素を吸収しており、逆に色が明るい黄色に近いほど大量の二酸化炭素を放出していることを意味しています。アマゾン川流域の熱帯雨林を有する南米やオーストラリア北部の多くは濃い青色をしており、大量の二酸化炭素を吸収しているのが見てとれます。
アフリカもコンゴ盆地を中心とした南部地域は青色ですが、アフリカ西部やエチオピアがある地域は黄色になっており、かなりの量の二酸化炭素が放出されているのが分かります。
研究チームがこの地域における二酸化炭素放出量を計算したところ、北アフリカの熱帯地域における二酸化炭素放出量は年間10~15億トンにもなることが分かりました。これは、自動車2億台が1年に排出する二酸化炭素に匹敵する量だといわれています。
研究チームは、アフリカでこれほどの二酸化炭素が放出された原因を人間による土地利用のためだと推測しています。大量の二酸化炭素が放出された地域には、かつて豊かな自然が存在していましたが、農業を行うための森林伐採によりその大部分が失われてしまいました。その結果、この地域の土壌が劣化し、生物が長い歳月をかけて土壌に蓄えた二酸化炭素が一気に大気中に放出された可能性が高いとのことです。
by geralt
また、大規模な気候変動の影響も見られます。リーズ大学の熱帯生態学教授であるオリバー・フィリップス氏は「この地域では2015年から2016年にかけて、大規模なエルニーニョ現象が発生しており、熱帯地域の気温が記録的に高くなったことが知られています」と指摘。異常気象による気温の上昇が生態系の破壊や二酸化炭素の放出を加速させたとの見解を述べています。
パルマー氏は「今回の研究により、これまで知られていなかった新たな二酸化炭素排出源が判明しました」と話し、パリ協定のような地球温暖化対策がさらなる見直しを迫られるだろうとの見方を示しました。
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