地球から二酸化炭素を減らすための4つの技術を実現できるスタートアップをYコンビネータが募集
全地球規模で起こっている異常気象は気候変動によって生み出されていると考えられ、その主な原因として大気中の二酸化炭素濃度、すなわち温室効果ガス濃度の急上昇が挙げられています。地球環境に大きな影響を及ぼしていることが確実とされる二酸化炭素を減らすべく、「シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」とも評されるベンチャーキャピタル・Yコンビネータが4つの技術を実現できるスタートアップを募っています。
Carbon Removal Technologies | YC Request for Startups
http://carbon.ycombinator.com/
二酸化炭素濃度の増加による気候変動を食い止めるためには、「大気中の二酸化炭素を減らす」ということが最大の対策となります。しかし、いくつかの段階がありますが、その1つめである「温室効果ガスの排出を削減する」という段階はすでに手遅れという指摘も。これは、増えすぎてしまった温室効果ガスによって上昇した気温のおかげで海中の二酸化炭素や永久凍土に眠っているメタンが放出されることなどによってさらに温室効果ガスが増加するという「正のフィードバック」に陥っているというものです。
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ここで重要なポイントは、「温室効果ガスの増加は自己強化型の正のフィードバック」を引き起こすというところにあるとされています。地球の気候が安全な領域に保たれるためには、大気中の二酸化炭素濃度は350ppmに留まる必要があるという試算が行われていますが、報告書が発表された2008年時点でその値は既に385ppmを示していました。さらに2018年5月になるとその値は410ppmへと上昇しており、この値は過去80万年間で最高の数値と成っているとのこと。大気中の二酸化炭素濃度は、報告書が示していた「危険領域」をはるかに上回る数値へと、この10年で上昇しているということになります。
二酸化炭素がさらに多くの二酸化炭素を呼び込むという悪循環を断ち切るためには、人類が積極的に大気中から二酸化炭素を減らすための取り組みが必要という考え方が、Yコンビネータが進める新たなRequest for Startups(RFS)の背景にはあるとのこと。そのためにYコンビネータは「海に吸収させる」「地球化学によって吸収させる」「酵素を使う」「砂漠を緑化する」という4つのアプローチを挙げています。
◆海に吸収させる
遺伝子操作を施した植物性プランクトンを利用して、光合成で二酸化炭素を固定化して極めて安定的な状態で貯蔵するという方法。プランクトンを利用することで、再利用可能かつどんな規模にでもスケーラブルな効果が期待可能。
Ocean Phytoplankton | YC Request for Startups
http://carbon.ycombinator.com/ocean-phytoplankton/#impact
理論的には、1平方メートルの面積の藻により1年で9.167kgの二酸化炭素を吸収することができるため、これを地球規模に拡大することで理論的には年間470億トンの二酸化炭素を固定化することが可能となります。
◆地球化学によって吸収させる
「地球化学」とは、岩石などの鉱物が余情の二酸化炭素と結合して安定的な状態になることを指します。その反応には地球規模の時間の流れで対策を行う必要がありますが、大きな効果が期待できる模様です。
Electro-Geo-Chemistry | YC Request for Startups
http://carbon.ycombinator.com/electro-geo-chemistry/#impact
理論上は年間で900億トン~9000億トンの二酸化炭素を吸着することが可能とされ、二酸化炭素を結合した鉱物は最終的に海底に沈むことで二酸化炭素が長期にわたって貯蔵されることになります。
◆酵素を使う
微生物が生み出す酵素を使うという方法ですが、もし海洋に特定の微生物を放つと、生態系のバランスが乱れて好ましくない結果を生み出すことが考えられます。そこで、微生物を必要としない酵素を用いることで二酸化炭素を固定化するという方法が考えられています。
Cell Free Systems | YC Request for Startups
http://carbon.ycombinator.com/cell-free-systems/#impact
酵素の候補としては、リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、通称「RubisCO」が挙げられています。しかしRubisCOは極めて非効率的な酵素としても知られているため、実用に向けてはその課題をどうクリアするのかが重要になります。
◆砂漠を緑化する
地球の表面積のうち10%は砂漠によって占められているとのこと。「不毛の地」である砂漠は作物が育たず、生き物も生息できないという活用性の低い場所でありつつ、大量の太陽エネルギーを吸収して気温を上げる働きを持っています。そんな砂漠に無数のオアシスを作り、前出の「藻」に光合成させることで二酸化炭素の固定化を図るというもの。
Desert Flooding | YC Request for Startups
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面積1平方kmのオアシスを450万カ所に作ることで吸収できる二酸化炭素の量は410億トンと試算されています。
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