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CO2から「カーボンナノチューブ」を生成して二酸化炭素排出量をゼロにする発電所の研究が進行中

By Wladimir Labeikovsky

温室効果ガスのひとつ数えられる二酸化炭素(CO2)の排出削減は全世界的に取り組みが急務とされており、各分野で削減策の研究が進められています。なかでも電力を作り出す発電所からは多くのCO2が排出されているのですが、発電の際に排出されたガスに含まれる炭素を取り出してカーボンナノチューブを作ることでCO2の排出をゼロにして、さらに付加価値の高い物質を生みだすという研究が進められています。

Researchers assess power plants that convert all of their CO2 emissions into carbon nanotubes
http://phys.org/news/2016-06-power-co2-emissions-carbon-nanotubes.html

Thermodynamic assessment of CO2 to carbon nanofiber transformation for carbon sequestration in a combined cycle gas or a coal power plant
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0196890416304861

CO2はさまざまな分野で排出されていますが、特にエネルギー分野からの排出が多くを占めているという統計が発表されています。日本の場合だと、直接排出量で見た際のエネルギー転換部門からのCO2排出量は全体の40%を占めているというデータも公表されています。

4-4 日本の部門別二酸化炭素排出量(2014年度) - JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター


アメリカ・ワシントン大学のJason Lau氏らは、そんな発電所からの排出ガスに含まれるCO2を全て回収し、さらにそこから素材分野で今後の発展が強く期待されているカーボンナノチューブの生産が可能という装置の研究を行っています。この装置は、酸素と水素を得るのと同じ電気分解を用いることで、排出ガスに含まれる二酸化炭素を炭素と酸素に分解して回収することを可能にしています。

原理的にこの装置は、燃料を燃やして(=二酸化炭素を排出して)発電する全てのタイプの発電機に有効ですが、Lau氏らは特にこの装置を、ガスタービン発電と蒸気タービン発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電(CC発電)の仕組みに取り入れることを想定しています。従来のCC発電では、以下の図のようにまずは上部のガスタービンで発電を行い、その際に発生した熱で水蒸気を発生させ、蒸気タービンを回して2度目の発電を行う仕組みとなっています。つまり、1度の燃焼で2度発電を行うという意味で効率のよい発電方法となっているのですが、基本的にCO2を含んだ排出ガスはそのまま大気に放出される仕組みです。


一方、Lau氏らが研究を進める装置は、ガスタービンからの排出ガスをリチウムの溶融炭酸塩で満たされた電解槽に注入し、電極から電圧を加えることで陽極(アノード)から酸素を、そして陰極から炭素を取り出す仕組みとなっています。しかし、そのままではカーボンナノチューブは生成されません。そこで、微量のニッケルを加えることで核生成を起こし、中空構造を持つカーボンナノチューブが生成される仕組みが取り入れられています。


生成されるカーボンナノチューブは、電解槽内の条件をコントロールすることで、網状のものやストレート形状のタイプを作り分けることが可能になるとのこと。従来は排出ガスの一部として捨てていた炭素を取り出して結晶化させることで、あらゆる工業素材として使用が可能な高付加価値商品に生まれかわらせることが可能になります。


Lau氏らによると、CO2の削減に加えてこの「高付加価値化」が大きなポイントとなるとのこと。従来のCC発電では1トンのメタン燃料から909ドル(約9万6000円)に相当する電力を生みだす一方で、2.74トンのCO2を排出していました。一方、この装置を組み込んだ発電システムは同じメタン燃料から835ドル(約8万8000円)に相当する電力が生み出されます。発電効率そのものは8%ほど下落するわけですが、それと引き替えにCO2の排出量が完全にゼロになること、そして、0.75トンのカーボンナノチューブを生成することで、22万5000ドル(約2400万円)という大きな収入が期待できると試算されています。

この技術はまだ実用化の前の段階とのことですが、Lau氏らによるとこの技術には規模に応じて対応が可能なスケーラビリティが備わっているとのこと。つまり、小さな発電所から巨大な大規模発電所まで、基本的に対応が可能で、しかもガスや石油、石炭などの燃料にも対応が可能とみられることから、今後のCO2政策にも一定の存在感を示す技術と言うことになるのかもしれません。

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