サイエンス

「海面上昇を遅らせる」地球工学的アプローチとは?


温室効果ガスの影響で気温が上昇する地球温暖化によって、海面上昇が危惧されています。プリンストン大学で地球工学の研究を行っているマイケル・ウォルビック氏は「海面上昇を遅らせることは可能」と述べており、これを実現するには長期的な対応を行う必要があるとのことです。

A New Geo-Engineering Scheme to Prevent Catastrophic Sea-Level Rise - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2018/01/a-new-geo-engineering-proposal-to-stop-sea-level-rise/550214/?single_page=true

Wolovick: Geoengineering polar glaciers to slow sea-level rise
https://www.princeton.edu/news/2018/03/19/wolovick-geoengineering-slow-sea-level-rise-polar-glaciers

21世紀における海面上昇はグリーンランドと南極の氷床が大きく影響すると言われています。そこで、ウォルビック氏は海面上昇を抑える方法を考え出すため、グリーンランドの溢流(いつりゅう)氷河や南極の氷床の調査を実施しました。その結果、地表の氷が一度海に溶け出してしまうと、温かい海水の影響で氷が猛スピードで溶けてしまうことが判明。ウォルビック氏は「海に溶け出す氷を抑える方法」を検討することにしました。


そして、ウォルビック氏が考え出した方法は「温かい海水が氷床を溶かさないように人工の敷居を建設する」というものです。以下の画像は、ウォルビック氏が提案した人工の敷居を立てた時の効果を示しています。以下の画像では大陸棚から海洋に広がる氷床を水色、海に浮かぶ氷を紫、温かい海水を赤、海水によって溶けた温度の低い海水を青で表しています。Aの状態を起点としたとき、海底を流れる温かい海水によって氷床が浸食されるため、Bの状態になってしまいます。そこで、Cのように温かい海水の部分をブロックする人工の敷居(灰色)を建設すれば、氷床と接触する海水温が低くなります。温度の低い海水でも氷床は溶けるため、最終的にDの状態に変化しますが、温かい海水と触れることがなくなるため、氷の溶けるスピードを大きく抑えられるようになるというわけです。


ウォルビック氏は「このようなプロジェクトを行う場合、数十億ドル(数千億円)規模の費用が必要になります。しかし、このまま海面上昇を放置すれば、被害額は年間50兆ドル(約5500兆円)規模に達する可能性があります」と指摘しており、人工の敷居を建設する方が最終的なコストは低くなるとしています。

また、ウォルビック氏は「これはあくまでも対症療法的な処置です」とも述べており、この方法を採用したとしても、温室効果ガスによる地球温暖化を緩和することにはならないとしています。同氏は「この対応により数百年の時間稼ぎはできると思いますが、この間に温室効果ガスの排出に対して何らかの策を打たなければ、何も意味はありません」と述べています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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