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空の上から大気の二酸化炭素やメタンガスを見張る衛星たち


二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスが地球温暖化の主な原因になっていることはよく知られていますが、これらのガスが一体どこに来たのかを知るには人工衛星による精密な観測が不可欠です。アメリカの一般向け科学雑誌Scientific Americanが、空の上から地球環境を見守る人工衛星たちをまとめました。

Meet the Satellites That Can Pinpoint Methane and Carbon Dioxide Leaks - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/meet-the-satellites-that-can-pinpoint-methane-and-carbon-dioxide-leaks/

◆TROPOMI
対流圏監視装置(TROPOspheric Monitoring Instrument:TROPOMI)」は、2017年10月3日に欧州宇宙機関によって打ち上げられた地球観測衛星です。紫外線や可視光、赤外線などを捉えて1秒ごとに地表の約2600km×7kmの領域を観測するTROPOMIは、24時間で全地球をぐるりとカバーする大気汚染マップを作り上げます。

二酸化炭素・一酸化炭素・窒素酸化物・そのほかさまざまな有害物質の詳細な世界地図を作成可能なTROPOMIについて、ESAの地球観測ディレクターであるジョセフ・アッシュバッハー氏は「ヨーロッパのマイルストーン」と呼んで称賛しました。

TROPOMIが作成した大気汚染マップはこんな感じ。

RT @ESA_EO: .@Copernicus #Sentinel5p might be new to the family but that doesn’t mean it’s not keeping up with the others! Here's an animation showing the levels of #AirPollution on our planet: https://t.co/BiMjxDC6M9 pic.twitter.com/h8awxTHhin

— TROPOMI (@tropomi)


2019年6月に千島列島の雷公計島にある火山が噴火した際には、大気中に巻き上げられた二酸化硫黄を追跡したマップも公開しています。

We hope you enjoyed #fireworks displays during the American 4th of July celebrations! Well, #TROPOMI also saw some impressive fireworks in the sky thanks to massive eruptions of the #Raikoke volcano in the Sea of Okhotsk. #SO2 swirls in the upper atmosphere above North America. pic.twitter.com/TVElKMEX5K

— TROPOMI (@tropomi)


◆Claire
Claire」はカナダのモントリオールに拠点を置くスタートアップGHGSatが打ち上げた概念実証用の人工衛星です。GHGSatの社員が授かった赤ちゃんにちなんだという名前を持つClaireの役目は、Tropomiなどの人工衛星と連携して大気中のメタンガスを観測することです。電子レンジサイズしかないという小型のセンサーユニットを持つClaireですが、その精度は驚くほど詳細で、大気汚染どころか特定の場所からのメタンガス漏出まで発見できるとのこと。


その一例が、カメルーンのロム・パンガー・ダムから大量のメタンガスが放出されていることを突き止めた以下の画像です。化石燃料を燃やさないのでクリーンなように思えるダムの水力発電ですが、水中に没した森の木々が分解されることで大量のメタンガスが発生し、気候変動の原因になる可能性があるとのこと。Claireのように精密にメタンガスの監視が可能な人工衛星を使えば、このようにメタンガスが発生している地域だけでなく、発生源まで正確に特定することができます。


GHGSatのCEOであるステファン・ジェルマン氏は「Claireは主に産業分野で活用することを念頭に置いていますが、規制当局との協働にも興味があります。いつかClaireの観測データが政策決定に役立てられるようになるといいですね」と話し、環境保護に携わることへの意欲をのぞかせました。

◆BluefieldのCubeSat
Claireに追随してメタンガス監視の一翼を担う予定なのが、アメリカのカリフォルニア州を拠点とするスタートアップBluefieldの人工衛星「CubeSat」です。CubeSatは特定の人工衛星の名前ではなく、数kg程度の小型人工衛星の総称で、他の人工衛星の打ち上げに相乗りするなどして、打ち上げ費用を極限にまで抑えることができるのが最大の特長です。


Bluefieldはまだ人工衛星を宇宙に打ち上げていませんが、2020年中に初の打ち上げを予定しているとのこと。Bluefieldのヨタム・アリエルCEOは「近い将来、NASAなどの宇宙機関はその業務を民間企業に委託するでしょう」と話し、費用対効果の高さを武器にした宇宙開発の展望を語りました。

◆GeoCarb
一方、NASAも2014年に打ち上げた軌道上炭素観測衛星(OCO-2)の成功を受けて、さらに強力に二酸化炭素やメタンガスを監視することが可能な「GeoCarb」の開発に着手し、2020年初頭の打ち上げに向けて準備を進めています。

地球全土を監視するTROPOMIやClaireとは異なり、GeoCarbはアメリカ大陸の上空約3万5800kmの静止軌道から南北アメリカ大陸の大気を観測します。世界第2位の二酸化炭素排出国であるアメリカの含む北アフリカ大陸や、アマゾンの熱帯雨林が位置する南アメリカ大陸を24時間つぶさに監視することで、エルニーニョ現象やラニーニャ現象といった気象と温室効果ガスの関係を探ることが可能だとのこと。


NASAは「天然ガス生産によるメタンガスの漏出はアメリカの産業に50億ドル(約5418億円)から100億ドル(約1兆837億円)の損害を与えています」と指摘し、その対策に役立つと期待されるGeoCarbには環境保護と経済の両面での活躍が見込めると述べました。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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