なぜ緑色の石を浜辺に敷き詰めることで地球温暖化を防ぐことができるのか?
二酸化炭素は地球温暖化の大きな原因とされており、世界中の研究者らはさまざまな方法で二酸化炭素の排出量を抑制したり、大気中の二酸化炭素を吸収したりする方法を考えています。そんな方法の1つとして、マグマが冷え固まってできた火成岩中に含まれる美しいオリーブ色の鉱物、カンラン石を用いて地球温暖化を防ごうというプロジェクトが、「Project Vesta」です。
Project Vesta – A project to reverse climate change
https://projectvesta.org/
地球には長期的な炭素循環が存在し、炭素は地球上の生物圏、岩石圏、水圏、大気圏の間で循環を繰り返しています。大気中の炭素は主に二酸化炭素の形で存在しており、大気から炭素を取り除く過程の一つに「炭酸塩-ケイ酸塩サイクル」というものがあります。炭酸塩-ケイ酸塩サイクルにおいて、ケイ酸塩で構成された岩石が風化する際に二酸化炭素および水と反応することで、二酸化炭素を大気中から除去しているため、長期的に大気中の二酸化炭素量が適切に保たれるとのこと。
自然の炭素循環プロセスは非常にゆっくりしたものですが、人間が大気中に排出する二酸化炭素量は、このプロセスが大気中の炭素を除去するスピードをはるかに上回っています。そのため、除去しきれない二酸化炭素による地球温暖化が進行し、自然や人々の生活が脅かされているそうです。Project Vestaは、この地球が持つ炭素循環プロセスを意図的に促進することで、大気中の炭素を除去しようと試みています。
岩石による無機炭素循環プロセスだけで地球変動に対処できるのか疑問に思う人もいるかもしれませんが、カリフォルニア大学の研究者らは2019年4月、「過去に発生した氷河期は赤道付近で炭素除去能力の高い火山岩が露出して風化が促進され、大気中の炭素除去プロセスが急速に進行し、二酸化炭素量が減少したからだ」とする論文を発表しました。実際に炭素循環プロセスが地球の環境を大きく変動させてきた可能性があるそうです。
by Pixabay
炭素循環プロセスの促進を実現するにあたってProject Vestaが目をつけたのが、ケイ酸塩鉱物として知られるカンラン石でした。熱帯地域の波の力が強い浜辺にカンラン石を敷き詰めることで波の力による風化を促進し、大気中の炭素を除去させようとProject Vestaは提案しています。
自然の中にはカンラン石が敷き詰められたビーチが実際に存在します。たとえばハワイにあるパパコレアビーチは別名「グリーンサンドビーチ」とも呼ばれ、風化が促進されて砂状になったカンラン石を見ることができるとのこと。
Project Vestaによるとカンラン石は非常に豊富に存在していて、採掘も容易だとのこと。世界の浜辺のうちのおよそ2%にあたる熱帯付近の高エネルギーな浜辺に、年間11立方キロメートルのカンラン石を置くことで、人間の年間二酸化炭素排出量を相殺できるとしています。なお、11立方キロメートルという量は年間に採掘される建築資材の半分以下であり、100万人~150万人がカンラン石採掘に従事することで達成可能だそうです。
当然ながらカンラン石による炭素除去を実用的なレベルにまで持っていくためには、一国どころか世界規模のプロジェクトとして積極的に行う必要があります。「簡単なことではありませんが、それは私たちが試みるべきではないという意味ではありません」と、Project Vestaは主張しています。
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