サイエンス

地球温暖化対策として二酸化炭素と海水からメタノールを生産する人工島を建造するという構想

by National Renewable Energy Lab

二酸化炭素地球温暖化の最大の原因とされていますが、人類は石油などの二酸化炭素を排出する化石燃料に依存した生活をしています。そんな二酸化炭素を減らしつつ、化石燃料の代替となるメタノールを生成できる「人口島」を海洋上に建設するという構想が、米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表されています。

Renewable CO2 recycling and synthetic fuel production in a marine environment | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/05/28/1902335116

Creative thinking: Researchers propose solar methanol island using ocean CO₂ | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/06/creative-thinking-researchers-propose-solar-methanol-island-using-ocean-co%e2%82%82/

構想を発表したのはスイスのチューリッヒ大学やノルウェー科学技術大学などに勤めている、材料科学や物理学、環境物理学、海洋科学をそれぞれ専門とする科学者の研究グループです。発表された構想は海洋上に工場として機能するような直径100メートルの円形の「人工島」を建設するというものです。人工島にはソーラーパネルが搭載されており、日中は毎時2万4000キロワットの発電を行います。発電された電力はバッテリーに蓄えられ、昼夜続けて行われるメタノールの生産のために使用されるとのこと。

By CreativeNature_nl

メタノールの生産には、海水を電気分解して生成される水素と、海水中に存在する余剰な二酸化炭素を抽出して使用します。まず最初に海水から塩化ナトリウム(塩)を取り除いて海水を淡水化し、塩を抜いた水溶液を酸性の溶液と塩基性の溶液に分離、そして酸性の水溶液から二酸化炭素を抽出します。その後、酸性の溶液と塩基性の溶液を再度混ぜ合わせてから水溶液を電気分解し、水素を回収するという過程になっているとのこと。

そうして得られた二酸化炭素は触媒によって水素化され、メタノールとなります。水素と二酸化炭素からメタノールを生成する最後の工程は吸熱反応であるため、外部から熱エネルギーが必要となりますが、二酸化炭素と水素の生成過程で発生した熱を再利用して効率化することが可能。構想では、この人工島は年間1万5300トンのメタノールを生産可能で、生産されたメタノールは輸送船で陸地まで運搬されるとのことです。

By picturepartners

研究チームの試算によると、全世界中の長距離輸送に使用される化石燃料の代わりに人工島で生産されたメタノールを使用するためには、この人工島が約17万基必要とのこと。17万基は途方もない数に聞こえますが、波が約2.1メートルの高さに届かず、十分な日照量が確保できるという人工島の建造に適切な海域には、17万基の人工島を十分建造できるそうです。

研究チームによると、この構想はあくまでプロトタイプなので、実現可能かどうかは人工島の建造に必要なテクノロジーのコストや、輸送に使用されるエネルギーのコスト、さらには人工島の維持に必要な清掃やメンテナンスのコストなどによるとのこと。研究者は、メタノールの代わりに別の燃料を生産するようにプランを変更して最適化する余地はまだ残されており、将来的にプランが変化しうる可能性があると語っています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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