サイエンス

熱帯雨林の炭素吸収力は限界を迎えており近いうちに炭素の発生源となる可能性がある


研究者が実際にアマゾンやアフリカ奥地の熱帯雨林に向かい、木々の直径や高さを30年にわたって測定し続けた研究によって、これら熱帯雨林の炭素吸収力が限界を迎えており、近いうちに熱帯雨林が「炭素の放出地」になる可能性があることが示されました。

Asynchronous carbon sink saturation in African and Amazonian tropical forests | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2035-0

Tropical forests losing their ability to absorb carbon, study finds | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2020/mar/04/tropical-forests-losing-their-ability-to-absorb-carbon-study-finds

これまでに行われた調査の結果、過去30年にわたって、熱帯雨林による炭素の吸収量は減り続けてきたことが明らかになっています。減少の原因は森林伐採や干ばつ、気温上昇などにありますが、リード大学のサイモン・ルイス教授によると、気温上昇や伐採がこのまま続けば炭素の吸収は減少の一途をたどり、2060年までに熱帯雨林はむしろ炭素の発生源となる可能性があるとのこと。


ルイス教授は2020年3月4日に発表された最新の研究で、熱帯雨林が炭素の発生源になると、気候変動はより深刻なものになると指摘しています。「これまで、人類は非常に幸運でした。熱帯雨林が私たちが発生させた汚染をきれいにしてくれたのですから。しかし、熱帯雨林がいつまでも同じことを続けてくれるわけではありません。世界的な炭素循環が人間に反旗を翻す前に、私たちは化石燃料の排出を抑制する必要があります」とルイス教授。

ルイス教授らの研究チームは、過去30年にわたって30万本の木を追跡調査しました。研究者はアフリカとアマゾンという2つの地域に実際に向かってデータを取ったとのこと。2つの地域の565箇所に生える木について、直径と高さを数年ごとに測定し、生きている木と死んだ木に含まれる炭素の量を計測したところ、まず研究者はアマゾンの木々の炭素吸収量が先に少なくなっていったことを突き止めました。そして、アマゾンに続く形でアフリカの木々も急速に吸収量を落としているとのこと。アマゾンでの減少が先に見られたのは、アマゾンの木々がより高気温・急速な気温上昇・頻繁で深刻な干ばつに見舞われたためだと考えられています。

研究者の観測と統計モデルなどから、2030年中頃からアマゾンの熱帯雨林が二酸化炭素の発生源に変わり始めると予測されています。


2020年11月開催予定の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、今世紀の半ばまでに人為的な温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくする「Net Zero Emission」の計画について話合いが行われる予定です。一部の国は新しい森林を育てることで排出量と吸収量を相殺させる方法を計画していますが、今回の研究結果は、熱帯雨林に頼ることでは大規模な排出を相殺することができないことを示しています。

ルイス教授は、「排出量の相殺については議論がありますが、現実として、全ての国・全てのセクターが、大気から少量の残余排出物を取り除き、ゼロエミッションに到達する必要があります。森林を使った相殺はビジネスをこれまで通りに行おうとする企業によって利用されているマーケティングツールに過ぎません」と述べました。


熱帯雨林が大気中から炭素を取り込む量は1990年代に460億トンでピークを迎えました。これは人為的に生み出された二酸化炭素排出量の17%にあたります。しかし、現代では炭素の吸収量は1990年代の3分の1ほどに減少しています。

多くの科学者は気候系の中に「転換点」があることを恐れています。一度転換点を過ぎてしまうと、氷の融解や森林の減少に歯止めがきかなくなりますが、人類が転換点を迎えるまでに残された猶予はあとわずかだといわれています。

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森林についていうと、転換点を迎えて森林が炭素の発生源になってしまうと、フィードバックメカニズムにより温暖化により大きな負の影響を及ぼす可能性があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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