ハードウェア

ドローンは建設業界でどれほど欠かせないものとなってきているのか?


誰もが手軽に飛ばせ、しかも高い安定性を持つマルチコプター、通称「ドローン」は、ホビー用途を超えて産業の分野へとその活躍の場を広げています。既に測量や建築、インフラ整備などの分野で活用が広がるドローンの現状を、エンジニアリング分野のメディアであるENGINEERING.comがまとめています。

Are Drones Becoming Essential to Construction? > ENGINEERING.com
https://www.engineering.com/BIM/ArticleID/16686/Are-Drones-Becoming-Essential-to-Construction.aspx

「ドローン」という名称は本来「無人航空機」を指す言葉であり、その起源は1940年前後に開発された無人軍用機に端を発します。最初は無人で敵地を攻撃する無人航空機としての活用が進められ、次に攻撃訓練用の射的として活用が進められたとのこと。1935年に造られた「de Havilland Queen Bee」は無線で操縦することが可能な機体で、「お尻に針を持たず、花粉を集めることもないハチ」という意味で「Drone(雄バチ)」という名前が付けられました。


しかしいまや、ドローンは軍事用途に用いられるだけではありません。調査会社ガートナーは、2020年までに個人用ドローンは460万台に達すると予測しており、一方でゴールドマン・サックスは軍用機と民間機のドローンの市場規模が年間1000億ドル(約11兆円)に成長すると予測しています。

2010年ごろから急激に知名度が高まったクアッドコプターの「ドローン」ですが、最初に一般向けの商品が登場したのは1989年とのこと。それを作ったのは日本のセンサーメーカーであるKEYENCE(キーエンス)で、「ジャイロソーサー」という名称で発売されました。

KEYENCE Gyrosaucer TVCM 1991 - YouTube


その後、2010年の世界的大ブレイクまで約20年という月日が流れましたが、そのきっかけを作ったのがParrotの「AR.Drone」。その後、DJIの「Phantom」シリーズの登場などでドローン業界は活況を呈するようになり、搭載カメラを使った空撮の世界が大きく広がりました。また、産業向けドローンで名をはせる「3D Robotics」(3DR)が創業したのもこの頃です。

さまざまな機器を搭載して無人で飛行でき、しかもホバリングすることも可能なドローンは、上空から敷地全体を把握する測量などの建設分野や、種子の散布、生育状況の把握、家畜の放牧状況の把握といった農業・畜産分野などでさまざまな産業分野での活用が進められます。ドローンを使った測量や資源調査サービスを提供するDroneDeployのCEOであるマイク・ウィン氏はドローンの産業活用について、「考えられる活用方法は2つ、ドローンから得られた写真やマップ、3Dモデルを使うことで、建設現場で何が起こっているのかを正確に把握する進捗の把握と、建設前の地形を把握してBIMソフトウェアで処理することで建設地をモデリングすることで、プランニングを行うことです」と述べています。


従来は、TimberやLeicaといった企業が提供するレーザーを使って正確な測定を行う装置「LiDAR」を使う移動測量ユニットを使っての測量が行われてきましたが、ドローンの登場により、同じ作業をはるかに費用対効果の高い方法で実施することが可能になりました。測量地の上を飛行したドローンによって撮影された高精細映像や画像、地形情報などのデータは、3DR、DroneDeploy、Autodeskなどの多くのソフトウェアプロバイダが提供しているソフトウェアを使いて3Dモデルと2Dマップにまとめられます。


また、ドローンを使って建設の一部始終を記録することで、一定期間ごとの変化を立体的に把握することも可能になります。3D CADおよびそれを用いたエンジニアリングのソリューションを提供するAutodeskのトリスタン・ランドールCEOは、「3Dモデリングの有無に関係なく、画像やビデオを使って風力タービンを調べたり、巨大な鉱山全体をマッピングしたりなど、さまざまな利用ケースがあります」と述べています。

以下のムービーは、アメリカ・コロラド州にある自然の岩山を利用した野外劇場「レッドロック野外劇場」をドローンでスキャニングすることで作成された3Dデータの例が紹介されています。

3DR and Autodesk scan the Red Rocks Amphitheater - YouTube


ドローン測量サービスを提供するKespryの製品マーケティングマネージャーであるジェイソン・ニコラス氏は、建設前準備の段階からのドローン利用のメリットを語っています。ある建設業者はドローンを利用して建設地全体の地面の高さをあらかじめ調査しておき、工事によって変化した地形と照らし合わせることで土木工事の進捗把握に役立てているとのこと。また、ドローンを利用する事で現場の安全を保つと同時に、従来は測定するのに数時間かかっていたエリアを数分でマッピングすることが可能になったそうです。このようなデータを取得することで、土木工事によって搬出あるいは搬入された土砂の体積を把握することも可能になります。

このように、ドローンを使った測量を行うことで、従来に比べて少なくとも6倍以上の高コスト効率で調査を実施することが可能になるとのこと。無人のドローンを飛ばして定期的にデータを収拾することで建設会社は従来は不可能だった継続的な品質保証・品質コントロールを行うことが可能になります。


Kespryが提供しているドローンとソフトウェアを統合したソリューションの内容は以下のムービーで確認することが可能。GPS(GNSS)による高精度な測定と測定後のデータ処理によって、最大で2cmの解像度での現地測量を可能にしているとのことです。

Kespry — The Complete Aerial Intelligence Platform for Industry - YouTube


また、高度な操作や設定がスマートフォンやタブレットだけで行えるのも、近年の技術革新のたまものといえます。DroneDeployがリリースしているツール「Live Map」は、タブレットの画面上でドローンが飛ぶルートを決め、測量を実行させることが可能。以下のムービーでは実際にタブレットの画面を操作してドローンを飛ばし、ドローンから送られてきた地表の写真が次々にマップに配置されていく様子を見ることができます。

Introducing Live Map - YouTube


ドローンを使った3Dマッピングのパイオニア的存在といえるのがAutodeskとのこと。以下のムービーでは、ドローンを使って建物を立体的に数百カ所も撮影し、3Dデータに置き換える様子を見ることができます。

Autodesk ReCap 360 Workflows – Working with 2D and 3D reality data from Aerial Images - YouTube


このように、実に有効な活用方法が期待できる建設現場でのドローン利用ですが、現状ではまだ障害となる要素も残されているとのこと。かつては得られるデータの「精度」が問題となった時期もあったとのことですが、既にこの問題はおおむねクリアされている状況にあるとのこと。むしろ、最も大きいといえる問題は、「人々の躊躇(ちゅうちょ)」にあるとしています。

また、ドローン活用の最大の障壁となるのが、アメリカ連邦航空局(FAA)による規制の導入であるとのこと。連邦航空規則107条では、無人航空機を飛ばす際には認定を受けた人物による監督の下で実施しなければいけないなどの項目が定められているため、嘉幅広い現場での活用の制限となっている側面があるとのこと。

一方で、一般の土地よりもはるかに規制が厳しい空港でドローンを飛ばす試みも行われています。このプロジェクトでは、空港施設や航空交通管制、ドローンを用意した3DRとAtkinsらが、FAAと調整をおこなったうえでフライトを実行したとのことです。

The first commercial drone flight at a major US airport - YouTube


このように、ドローンを建設の現場で活用する動きは世界で活発に進んでいる状況。法律面などクリアしないといけない課題も残されていますが、近年では最大のイノベーションといえるドローンの普及がさまざまな産業分野でもイノベーションを引き起こすことも十分に期待できます。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ドローンを農業に活用する6つの方法 - GIGAZINE

ドローンによる輸送サービスの本格的テスト開始、医薬品や輸血用血液の輸送も視野に - GIGAZINE

スイス国営郵便がドローンによる郵便配達試験を開始へ、およそ5年で運用開始を目指す - GIGAZINE

「軍の基地に侵入しようとするドローンを撃墜してOK」という規則がアメリカで運用開始される - GIGAZINE

誰でも簡単にHDムービーが空撮できてiPhone/iPadがコントローラーになる「AR Drone 2」で太陽の塔を撮影してみた - GIGAZINE

in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.