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あのボストン・ダイナミクスのマーク・レイバートCEOが母校のMITで行った授業ムービーが公開中


ロボット開発企業ボストン・ダイナミクスのマーク・レイバートCEOが、母校のMITで授業を行いました。学生たちに、ボストン・ダイナミクスが目指すロボット工学について解説しています。

MIT AGI: Boston Dynamics (Marc Raibert, CEO) - YouTube


レイバートCEOはかつてMIT在学中に心理学や認知学を学んでいましたが、AI研究センターで机の上に置かれた数千種類の物を器用にロボットアームでつかみ取る実験を目にしたときに「自分の進むべき道はこれだ」と感じ、ロボット工学の世界に転身したそうです。その後、MIT教授の座を捨てボストン・ダイナミクスを立ち上げて、数々のロボットを開発。人間や動物を超える運動能力を持つロボットの開発を目指しています。


起業から10年の研究の末に誕生したのが「BigDog


ダイナミックかつ安定した動作という大きな目標の実現には物理の研究が不可欠だとのこと。400ポンド(約180キログラム)の積載物を運搬できるBigDogの開発では、全米中のあらゆる場所で実験が行われました。


バージニアでは茂みをかき分け……


ボストンでは深い雪の中を進み、蹴られても倒れない安定性が得られたそうです。


ボストン・ダイナミクスが開発してきたロボット一覧。


この講義では、最新のロボット4種類について取り上げるとのこと。いずれのロボットも、Googleに買収された2013年以降に開発されたものだそうです。


レイバートCEOによると、「Spot」の開発から学ぶことは非常に多かったとのこと。複雑に組み合わされていたコントローラーを、よりシンプルかつ小型のものに改良したことで、それまでのラフな動きからより高度な制御に移行した技術進化については革新的と表現できるレベルだそうです。


Spotを含めてボストン・ダイナミクスが開発するロボットは、何か特定の行為をする目的で作られることはないとのこと。目指すのは、やりたい事に応じて、対応を変えられるロボット。


例えば、SpotMiniでは、家庭に荷物を届ける「配送ロボット」としてのテストが行われていますが、届け先の建物や庭のレイアウトはすべて異なるため、現実世界のさまざまな状況に臨機応変に対応できる応用力がロボットには求められるというわけです。データを集めて改良や調整を行った結果、70%~80%の割合で配達をトラブルなく行えるようになっているとのこと。


ほとんどの人は、ロボット工学についてセンサーなどを含むハードウェアとしての「ロボット」がコンピューターと相互作用するものだと考えています。しかし、レイバートCEOはロボットが相互作用するべき対象として「現実世界」が加わると考えているとのこと。例えば、スプリングにため込んだエネルギーをいつ開放するのかなどのタイミングは、現実世界の状況によって最適値が変わり、「現実世界こそがロボットに指示・命令する」のだそうで、コンピューター、ロボット、現実世界との協調が求められると考えています。


また、レイバートCEOはボストン・ダイナミクスでは「Build it」「Break it」「Fix it」というアプローチを採用していると述べています。「作って、壊して、直す」というプロセスから、技術が速いスピードで高まるとのこと。


レイバートCEOの知人のロボット研究者には、自分が作り上げた作品(ロボット)を壊すことを恐れためらう人がいるそうですが、ボストン・ダイナミクスには壊しても素早く修復する技術者がいます。ロボットを実際に物理世界で動かすことで、いろいろなことを学べるそうで、これによってのみ素早く改良できるとこと。レイバートCEOは「作っては壊すというループを可能な限り早く回すこと。そうすることで、早く目標に到達できる」と述べています。


物体を避けて進めるように作ったものの、木と向き合って進めないロボット。レイバートCEOによると「木に恋してしまった」とのこと。


猛スピードで走り出して、古いBMWに突進して横転させてしまったロボット。


このBMWはボストン・ダイナミクスの技術者が納車したばかりの愛車だったそうで、レイバートCEOは修理代金の5000ドル(約53万円)を弁償したとのこと。


ロボット開発では短期的な視点が求められる現実的な課題と、長期的な視点が求められる課題があります。


例えば、すでに説明で出てきた配達ロボットは短期的ビジョンが要求されるロボットですが、実用化には自動運転カー技術の完成が待たれている状態。自動運転カーとのタッグで、配達のロボット化が実現する見込みです。また、年間に1兆個もの箱がさまざまな場所へ送り届けられる「物流」はほとんどが人間の手によって行われており、これをロボットに手助けさせる大きなチャンスがあるとのこと。


レイバートCEOは老齢者の介護や障害者のサポートはロボット技術にとって究極の目的になると考えています。「私の場合、年老いたあとの介護は子どもに期待するしかありませんが、みなさんはロボットによるサポートを期待できます。望むならばロボットにケアしてもらえるでしょう」と述べています。


再び、具体的なロボットについて。180ポンド(約80キログラム)のSpotを改良した「SpotMini」では60ポンド(約27キログラム)に軽量化できたとのこと。


Spotの股の下をSpotMiniは潜り抜けられるほどの小型化に成功しています。500Whのバッテリーを搭載するSpotMiniに限らず、ロボット技術はバッテリーの進化が大きなカギを握っているとのこと。より安全性と信頼性が高く、容量の大きなバッテリーの登場によって、ロボットはさらなる進化が期待されます。


レイバートCEOは、SpotMiniをAndroidのようなプラットフォームにしたいと考えていると述べています。Androidでは各メーカーからスマートフォン端末が開発され、開発者からアプリが開発されており、ハードウェア・ソフトウェアのプラットフォームとして機能しています。さまざまな開発者が参加して技術を高めて、「自分のロボット」を開発できるためのプラットフォームにSpotMiniを育てていきたいそうです。


なお、会場となった教室ではMITの学生の前をSpotMiniが自律的に歩き回るデモが行われました。


次に人型ロボットの「Atlas」。もともとは、DARPAが主催したロボットコンテストに向けて開発されたロボットだとのこと。


DARPAチャレンジのころに比べると、大部分のパーツが改良され、軽量・小型・高剛性化に成功。


独自の油圧システム内蔵のパワーユニットによって、スリム化と軽量化に成功しています。なお、多数の部品で構成されていたパーツを3Dプリンターで出力することでシンプルにできたそうです。


DARPAチャレンジ参加時の375ポンド(約170キログラム)から、165ポンド(約75キログラム)まで軽量化でき、人間と同レベルまで軽量化に成功。Atlasはバク宙に成功するほどの運動能力を持つに至っています。


最後は人型の枠にとらわれない、独自のデザインを持つロボット「Handle


Atlasの関節が28個だったのに対して、Handleは10個と大幅に可動域が減っています。しかし、ホイールで自由に移動でき、ジャンプしたり重量物を軽々持ち運んだりできるという、人型ロボットでは到達できない圧倒的な運動能力を持たせることに成功しています。フットプリントが小さく、重いものを自在に持ち運べるAtlasは、物流の現場で人間をサポートできるとレイバートCEOは述べています。


ここで、MIT出身のボストン・ダイナミクス在籍中の技術者18人を紹介。「彼らはみなハッピーですよ」とMITの学生に向けてボストン・ダイナミクスへの勧誘が行われました。


最後にロボット開発について。「ご存知の通り、私はMITとカーネギー・メロン大学では教授職にありました」と自身の経歴について触れたレイバートCEOは、教授時代はいかに多くの論文を書くのか、論文をいかに多くの研究者の論文に引用されるかを競っていたとのこと。ボストン・ダイナミクスを立ち上げて、ビジネスマンになったレイバートCEOは、今では論文の数ではなくYouTubeの閲覧数を競い、論文の引用数ではなくいたずらムービーのアップロード数を競っているそうです。


YouTubeにアップロードされた秋葉原、ロサンゼルス、オランダ、アパラチアのムービーを紹介。


28本ものいたずらムービーをアップロードしている現在の仕事ぶりを上々だと自画自賛していました。

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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