サイエンス

カフェイン摂取よりもパフォーマンス向上に2倍も効果がある方法とは?

By Tahir Hashmi

眠気を覚ますため、コーヒーやレッドブルなどを飲んでカフェインを摂取するという方法がありますが、カフェインの摂取よりも2倍もパフォーマンス向上に効果があり、効果の持続時間は6時間にも及ぶ、という毎日眠気と戦う人にとっては夢のような眠気覚まし方法が存在します。

Electrical brain stimulation beats caffeine – and the effect lasts longer | Science | The Guardian
http://www.theguardian.com/science/2014/nov/19/electrical-brain-stimulation-caffeine


カフェイン摂取よりもはるかに優れた眠気覚まし効果を発揮するのは、「脳に電気的刺激を与える」という方法。この方法を研究しているのは、アメリカのオハイオ州ニュー・カーライルにあるライトパターソン空軍基地の研究者たち。脳に電気的刺激を加えることで、基地で働く睡眠不足気味な職員のパフォーマンスを改善するために行われている研究のようです。

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なぜそのような目覚まし方法を研究中なのかというと、空軍基地では「無人偵察機からの映像を監視し続ける」ような業務に就いている人、つまりはほとんどの時間をイスに座ったまま延々とモニターに映し出される似通った映像を見続ける、という聞いているだけでも眠気に襲われそうな仕事に就いている人がいます。そういった人たちを少しでも助けるために、カフェイン摂取以外の眠気覚まし方法を研究している、とのこと。

電気的な刺激を使った眠気覚ましを研究しているアンディー・マッキンレー氏は、「空軍には多くの情報任務があり、バックエンドでは多数の解析官が乗り物や建物、その他さまざまなターゲットを監視しています。この種の画像解析作業は自動化には適しておらず、コンピューターのアルゴリズムではターゲットをオートセレクトすることができません。そういった理由から、延々と同じ画面を見続けるような作業を人間が行わなければいけなくなるわけですが、もしも人間がより長い時間集中できるようになる手助けができるならば、それは非常に素晴らしいことです」と述べています。

By Stephen Korecky

マッキンレー氏たちは、18歳から42歳までの基地で働く30人の職員を対象に実験を行いました。実験では、被験者に2時間ごとに自身の状態を報告してもらいながら、「円の中を動きながら光る点」を見つけられるかや、「30分間で12回、ドットが跳ねる」といった類いの警戒テストを受けてもらい、被験者の頭がしっかり働いているかをチェックしながら午前4時まで待ちます。そして人間の認識力が最も低下する午前4時になったら、被験者を3つのグループに分けるそうです。

1つ目のグループには頭に電極を取り付け、カフェインを含むガムを食べさせます。しかし実際に電流を流すことはせず、被験者には電気的刺激を与えたフリをします。2つ目のグループには、カフェインが入っていないガムをカフェイン入りの物と思わせて食べさせ、さらに頭につけた電極から脳に約30分間電気的刺激を与えます。なお、電気的刺激が加えられるのは、短期記憶や注意力と関わりのある左脳の前頭前皮質です。そして、3つ目のグループにはカフェインの入っていないガムを食べさせ、電極を頭につけて電気的刺激を与えるフリをします。つまり、3つ目のグループには何の刺激も加えない、というわけ。実験でカフェインの入っていないガムを食べさせたり、頭に電極をつけて電流を流すフリをするのは、実験結果がプラシーボ効果によるものかそうでないのかを見極めるためです。

By Laura Dahl

これらの実験結果、脳に電気的刺激を加えたグループでは他のグループよりも明らかにパフォーマンスの改善が見られ、さらに驚くべきことに、パフォーマンスの改善は長時間続いたそうです。

「脳に電気的刺激を与えたグループは、同じレベルのパフォーマンスを6時間にも渡って発揮しました。しかし、他のグループは急激にパフォーマンスを悪化させていきました」とマッキンレー氏。彼によると、午前8時に警戒テストを行ったところ、電気的刺激を与えたグループの正解率は60%であったのに対して、他のグループの正解率は30%に満たなかったそうです。他にも、電気的刺激を与えたグループは、疲労・眠気・活力・気分などを計測するテストで他のグループよりも良い結果を出しました。

なお、カフェインはすぐに人間のパフォーマンスに影響を与えることができますが、有効な効果を発揮するのは2時間にも満たない、という事実が Society for Neuroscienceにより明かされています。

By Damien du Toit

ライトパターソン空軍基地で行われている実験で使われているのは、「tDCS(経頭蓋直流刺激)」と呼ばれる手法で、これは脳のニューロンを通常よりも発火しやすくするというものです。

tDCS用のデバイスや、それに似たデバイスは既に市場に出回っており、構造自体は非常に単純なので自作しているユーザーもいるほど。実際に多くの一般ユーザーがtDCS用のデバイスを使って脳に刺激を与えた結果をYouTubeやブログ、掲示板などにアップしています。

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しかし、8月にスウォンジー大学の心理学者ニック・デイビス氏が、「知識のない一般人が脳に電気的刺激を与えることで起こりうるリスク」について指摘しており、オックスフォード大学の研究者からも同様の指摘が挙がっているので、素人が見よう見まねで手を出すのはやめておいた方が良さそうです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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