人間の記憶を保存できるデバイスを脳に移植して失われた記憶力を補完する研究が進行中

By J E Theriot

アメリカの国防総省国防高等研究事業局(通称、DARPA)から多額の研究資金を勝ち取っている研究として、人間の記憶を電子機器に保存するというものがあり、アルツハイマー病など記憶障害の治療に役立つ可能性が出てきています。

Memory-saving devices snag US research funds : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/memory-saving-devices-snag-us-research-funds-1.15537


Human memory-saving devices get £20m research boost (Wired UK)
http://www.wired.co.uk/news/archive/2014-07/11/memory


2014年7月9日、記憶が脳の中でどうやって形成されたり検索されたりするのかを研究し、それらのプロセスを脳の中で促すための装置を開発する2つの研究チームが、DARPAから3750万ドル(約38億円)もの研究資金を獲得しました。今回新たに投資を受けた2つの研究チームは、てんかん持ちで脳インプラントを行っている患者と協力し、このインプラントを使って脳の活動をモニター、脳が記憶を保存したり検索したりする際の脳の電気パターンを調査し、脳外傷や病によって生じた脳の記憶障害を、電子機器を脳に移植することで補完する、というものです。

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研究チームのひとつはペンシルバニア大学にて心理学者として働くMichael Kahana氏が率いるもので、記憶を形成する際の「神経細胞の発火」により脳内で生じる電気パターンをマッピングすることで、脳の記憶に関するメカニズムを解明しようとしています。Michael氏の率いる研究チームではてんかん患者100名ほどに記憶ゲームを行ってもらい、被験者の脳の活動をモニターし、各被験者のベストスコア時とワーストスコア時の電気パターンを比較して、「個人個人が脳のパフォーマンスを最適な水準に維持できるような刺激パターン」を導き出すためのアルゴリズムを開発します。この研究のリーダーであるMichael氏は、「被験者であるてんかん患者の頭に埋め込まれた脳インプラントを使用して脳の活動をモニターしたり脳に刺激を与えたりする」と語ります。

DARPAから資金援助を受けるもうひとつの研究チームは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校にて神経外科医を務めるItzhak Fried氏率いるチーム。Itzhak氏のチームは、「記憶の保存」や「脳の活動の分析」、「リアルタイムで脳への刺激」などが可能なデバイスを作成するための研究を進めています。研究に関わる人物のコメントによると、Itzhak氏の研究チームが開発しているデバイスのサイズは、「パーキンソン病やうつ病治療に使用されるようなストップウォッチサイズの機器の10分の1のサイズになるだろう」であるそうです。2012年にItzhak氏の研究チームは、特定の脳の回路を刺激するとコンピューターゲームのパフォーマンスを向上させることができることを発見しており、それ以後2014年までてんかん患者の脳を研究してきました。しかし、新たな研究資金が得られたことで、今後はてんかん患者から脳に外傷を持つ患者を対象に研究を進めていくことになる、とコメントしています。

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現在のところ、これらの脳インプラントに関わる実験の危険性については不明瞭なままですが、Itzhak氏は「どんな副作用も認められていない」と語ります。しかし、巧みに脳の活動パターンを実行することで、一時的に脳をハイジャックして、その他の脳の活動を妨害することはできるかもしれない、と英ネイチャー誌は指摘しています。これらの危険性を最小限にするため、「脳インプラントを移植するのに最適な場所を特定する必要がある」とItzhak氏は考えているようですが、Michael氏は「自身の研究では脳に与える刺激は微量であるので、脳に何かしらの影響は生じない」とコメントしています。

なお、これらの研究の成果物は、脳外傷や神経組織変性の病であるアルツハイマー病などの記憶障害を持つ患者が新しく物事を記憶したり、脳内の記憶を検索することを手助けしてくれるようになるかもしれませんが、失われた記憶を取り戻すことにはつながらないそうです。

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in サイエンス, Posted by logu_ii