脳への電気的刺激で意識をスイッチのようにオン・オフできることが判明
By Paul Cross
脳に電気ショックを与えることで「目覚まし」として活用したり、記憶力と注意力アップ&痛みの除去が可能であることがわかっていますが、新たに脳の前障に電気ショックを加えた途端に、まるでスイッチのように意識を失わせたり戻したりできることが判明しました。
Consciousness on-off switch discovered deep in brain - life - 02 July 2014 - New Scientist
http://www.newscientist.com/article/mg22329762.700-consciousness-onoff-switch-discovered-deep-in-brain.html
科学者たちは1世紀以上にわたって、電気刺激によって脳の個々のエリアの機能を一時的に切り替えたり停止させる研究を行っていますが、意識の操作に関してはいまだ成功していませんでした。DNAの二重らせんの発見者フランシス・クリック氏は、「脳から意識が発生するメカニズム」に関する研究に取り組んでおり、脳の深部に位置する「前障」と呼ばれる部分が脳の意識活動にとって最も重要であるという研究結果を示しています。
そんな脳の意識に関する研究において、ジョージ・ワシントン大学のMohamad Koubeissi氏の研究チームが、前障に電気刺激を与えることで意識のスイッチを切り替えられることに成功したと発表しています。
論文によると、研究チームはてんかんを持つ女性の脳内に電極を埋め込み、発作時の脳活動を記録する実験をしていましたが、これまで設置していなかった女性の脳の前障付近に電極を設置し、高周波電気インパルスによる刺激を与えたところ、読書をしていた女性が突如として意識を失ったとのこと。女性はぼんやりを前を見つめたまま視覚的・聴覚的なアクションに応答せず、呼吸は段々遅くなっていきましたが、電気刺激を止めた途端に女性は直ちに意識を取り戻した、と説明されています。その後2日間にわたって同様の刺激を与えたところ、女性はそのたびに意識を失い、刺激を止めて目覚めた時には、意識を失っていた間のことを全く記憶していませんでした。
By Send me adrift.
前障への電気刺激が女性の「意識」と「言語・移動能力」のどちらに影響を与えていたかを確認するため、電気刺激を始める前に女性に「家」という単語を繰り返してもらったり、指を曲げておくように依頼。もし電気刺激が言語・移動能力に作用していれば、刺激が始まった途端に話したり、動いたりできなくなるわけですが、刺激が加えられた女性は、無意識に到達するまでゆっくりと話し続け、指も動いていたとのこと。また、脳活動の信号によって、てんかんの発作ではなかったこともわかってます。
この実験によってKoubeissi氏は「前障が意識活動のトリガーとなる重要な役割を担っていることを示唆しています。多くの脳構造およびネットワークで形成された複雑なプロセスを経ている『意識』ですが、我々はイグニッションキーを見つけたかもしれません」と話しています。通常、意識の状態を判別するためには「覚醒・睡眠」「昏睡・植物状態または知覚麻痺」のどの状態であるかを見ていますが、今回の研究では、女性は「覚醒状態」にあったことが興味深いポイントであること。
Koubeissi氏は「単一の研究事例ですが、人が選択的に意識を切り替える時に何が起こっているのか、というメカニズムの解明に有益な結果です」と話し、長年科学者と哲学者を悩ませてきた「意識の発生」という問題に一歩近づくことができたとのことです。
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