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マイクロソフト大勝利へのシナリオ、流出した「Windows 8」社内機密資料の内容が非常に秀逸


何をどこでどう間違ったのか2012年リリース予定で次期Windowsとなる「Windows 8(仮)」のプレゼンテーション資料と思われるものがネット上に流出、その資料から次々と新機能の輪郭や今後のスケジュールなどが明らかになってきました。

特に注目すべきはマイクロソフトが現状をどう認識し、そしてどのような次の手を打つべきだと分析しているのかという点。Windowsを超えることこそが勝利のカギだ!と読めるような箇所や、スタイルのかっこよさでビジネスの顧客が製品を選ぶわけではないと断じていたり、さらには影響力を持つアーリーアダプターは決して技術力があるわけではなくただ技術への興味が強く影響力も強いだけとしていたり、なかなか読ませるプレゼンテーションになっています。

というわけで、実際にその資料を見ながら、マイクロソフトが次のWindows8に搭載してくる新機能の数々を見てみましょう。詳細は以下から。
Windows 8 Plans Leaked: Numerous Details Revealed | Windows 8, Windows Phone 8, Office 15 | Stephen Chapman @ MSFTKitchen

まずアップルがマイクロソフトの時価総額を抜いてかなり強力な立ち位置になっている件について、どのようにしてアップルがそれを成し遂げたのかを分析しています。アップルのブランドはハイクオリティで使いやすく、そしてちゃんと動くというように人々は認知しており、ユーザー体験としては人々が自分の持っているモノの価値を認識できるようにデザインされ、そうやって人々が価値を認めることで製品への満足度が高まり、アップルというブランドにフィードバックされ、これによって人々はアップルに金を払うというサイクルができあがっているとマイクロソフトは分析しています。


また、2012年に登場するであろう新型のPCについても述べており、モニターはタッチディスプレイが前提で17インチから30インチ、DirectX GPUを使用、マルチタッチは5カ所以上に対応してサンプリングレートもさらに上昇し、HDビデオが標準化されると予想。各種センサーについても、赤外線近接センサー・環境光計測センサー・ユーザーが眠っているか起きているかを判断するセンサー・部屋の兆候に対応するセンサーを搭載、2Dカメラを使った顔認識によるログインシステムも可能だろうとしています。サウンド環境については全方向性のマイクロホンが好まれ、高音質なスピーカー、ボイスコントロール、それらを使った音声によるコミュニケーションとソーシャルネットワーキングの隆盛、メディア・エンターテイメント体験が可能になると予測しています。さらにネットワーク系については、無線LAN・有線LAN・Bluetooth、そして高速なネット接続が当たり前となるとしています。


これはWindows8のプロダクトサイクル、開発スケジュールについて。この機密資料を使った会議自体は2010年4月20日に行われており、どうやら現段階では「プランニング(立案)」の段階。今はまだビジョンを組み上げる時期であり、大きな全体像を描き、シナリオよりもテーマを重視、各種機能は現段階で決定するそうです。次に「開発(ビジョンからベータへ)」の段階に突入し、各種機能のデザインを作り、製品ラインナップを決定、開発コードの共有を始めます。最終が「リリース準備」の段階で各種機能を仕上げてバグをフィックスし、評価基準とその追跡を準備、そして「Dell」と「Windows Experience」を作り出すことにフォーカスする、としています。なぜDell……?なお、Windows 8には「Internet Explorer 9」が搭載されるようです。


ある意味で目玉機能のひとつと言える顔認識によるログイン機能。2012年にはカメラ機能はPCと統合されてよりどこにでもあるようになっていると予測した上で、パソコンはどこにユーザーがいるかを認識し、自動的にログイン可能になる、としています。


さらにWindows8については認証機能が進化するとしており、まずユーザーアカウントは個人がWindowsにアクセスする主要な方式であり続け、各ユーザーアカウント間の切り替えをより素早く行い、Windowsのユーザーアカウントを「クラウド」に接続、各種設定などをいろいろなPCやデバイスで共有できるようにして、PCにログインするとそのままユーザーの代わりにウェブサイトにもログインし、オンラインでのセキュリティもより増加させ、マシン中心から人中心のシステムに認証機能を進化させるとしています。


次にWindows8の計画に影響を与えるトレンドについて。新しいイノベーション的技術が登場するとそれは爆発的に広がってそれまでの規格を変更させ、消費者のユーザー体験をより新しくユニークなものにしてしまいます。これによってマイクロソフトと顧客とのつながりについて、ソフトウェアとサービスを組み合わせた世界についてデザインする必要があり、これはマイクロソフトのビジネスにも影響するとしています。そして企業と個人の衝突が発生するとしており、それは各個人がパーソナルな部分とプロフェッショナルな仕事の部分とでシームレスに快適なユーザー体験ができるようにマイクロソフトが手助けする部分であるとしており、特に各コンテンツの経験は個人的なものであり、エンドユーザーの持っているデバイスとその状況によって高度に適合されるはずだとしています。そしてWindowsは多様で活気に満ちたエコシステム、すなわちWindowsを利用しているパートナーたちが安定しつつもユニークで健康的なハードウェアとソフトウェアのエコシステムを維持するのを助けるべきだとし、経済の実態は決してスタイルから入るものではないとして、顧客は意志決定を「質」「パフォーマンス」「信頼度」「セキュリティ」に基づいて行うと断じています。


また、消費者を理解するカギは「エンゲージメント(愛着心)」であるとし、Windows8のターゲットとなる顧客を2種類に分けています。1つめは「熱狂家」と呼ばれる層で、これは主流となる消費者のサブセットに過ぎないが高い忠誠心・愛着心を持ち、なおかつ技術を使うことやその技術の意味するものなどに非常に強い興味があり、友達・家族・フォロワーが何か技術に関する決定を下す際に影響力を持っています。かなりの時間・努力・資金をアーリーアダプターとしてテクノロジーに費やす傾向があるものの、テクノロジー・エキスパートや技術的な能力を持っているわけではない点に注意が必要だ、としています。そして2つめのターゲットとして、「主流となる消費者」を設定しており、彼らは技術については中の下程度の愛着心しか持っていないが、毎日技術を他人とつながることや何かモノを得るために使用しています。技術的な知識については多種多様ですが全体として高い技術力があるわけではありません。技術についての愛着心や影響力についても中の下程度で、彼らのする大部分のことも同様です。


次はWindows8の基本的なビジネスモデルの概念についての仮定です。エコシステムの構築がカギであるとしており、Windowsの成功のカギはハードウェア・デバイス・ソフトウェアの選択にあり、そのためマイクロソフトはすべてのPCに関心を持ち、ローエンドからハイエンドのシステムに至るまでみんなにWindowsを提供すべきだとしています。そして今までのWindowsを超えることこそが勝利につながり、それは「Windows+Windows Live+Internet Explorer」だとしています。また、OSのアップグレードというのはチャンスであり、このエコシステムを作るために最初からWindowsをインストールしてあることこそがまさにチャンスだとしており、顧客は何を買うべきかを知る必要があり、Windowsのどのエディションを買うべきか知ることを簡単にすべきだとしています。


以下の図はWindows8がリーチできる市場を示した図で、プロフェッショナル開発者(プログラミング自体が仕事である人々)と起業家となるマインドを持った学生たち、そして愛好家(マニア、趣味でプログラミングを行う者)のそれぞれについて示しています。左上にあるオレンジ色の「STEM-D」と書いてあるのが教育機関関係者のことで3900万人、その下にある水色の部分が860万人いるプロフェッショナル開発者たち、一番大きな赤い部分が1億400万人もの愛好家もしくはプロフェッショナルではない開発者となっており、Windows8のターゲット市場は白い円で囲まれた部分であるとしているわけです。


Windows8を差別化する目標について。マイクロソフトのパートナーたちはWindowsを特徴的なハードウェアとソフトウェアの提供によってユニークで、調和があり、そしてブランドを経験させるものにしたいと望んでいます。対して新しいパソコンを買いたいと思っている顧客たちは、Windows8が提供する価値をはっきりと認識する必要があり、彼らの個性・興味・ライフスタイルにベストマッチするものであるとしてWindows8搭載パソコンを選ぶ必要性があります。


これはWindows8を差別化することのできるポテンシャルエリアを示した図です。上にあるのがフォームファクター、要するにハードウェア部分で、下にあるのがカスタマイゼーション、要するにソフトウェア的な部分です。


まずは上のハードウェア部分から。Windowsはモダンなプラットフォームとしてパートナーたちやデベロッパーたちに提供される必要性があるため、ターゲットを明確に3つに絞り込んでいます。


「Slate」と呼ばれるハードウェア。これはいわゆるタブレット型のPCで、アップルで言うなら「iPad」のようなもの。ウェブ閲覧とマルチメディア再生、カジュアルゲーム、電子メールを読んだり並べ替えること、メッセンジャーやSNSによるコミュニケーションが主な目的です。2つめのターゲットは「ノートPC」で、生産的なアプリケーション、電子メールを書くこと、マルチメディア系ファイルを作成することとなっています。最後の3つめのターゲットは「オールインワン」となっており、要するに全部入りのデスクトップ型PCのことで、ウェブとそれに関連するマルチメディアの作成、ヘビーなコミュニケーション、マルチメディア系ファイル作成、カジュアルゲームとなっています。


これら3つのハードウェア上で動くカスタマイゼーション的なソフトウェア部分について、まずは「アプリケーション」から。マイクロソフトのパートナーたちはアップルのiTunes StoreやApp Storeのような「Windows Store」を利用でき、例えばHPなら「HP Store Powerd by Windows」というようにでき、「要注目のアプリ」「推奨アプリ」「お買い得なアプリ」というような誘導が可能。さらにこのWindows Storeは異なるマシンにログインしていたとしても関係なく、HPならHPのIDを使えば一度購入したアプリは再ダウンロードが可能となっており、ソフトウェアライセンスはマシンではなくユーザーに紐づけられています。


2つめが「デバイス」で、これはWindows 7で既に導入されている「Device Stage」のこと。


3つめは「マルチメディア」、バッテリー動作でもちゃんとパフォーマンスを発揮し、HTML5のビデオやDRMといった著作権管理が動作し、3DディスプレイやDLNA、さらに「PlayTo」機能(日本語版のWindows 7で「リモート再生」として実装されている)も動作、特にリモート再生は単にノートPCでも再生できるという次元を超えて、周辺デバイスやマルチスクリーンにも対応させるとしています。


4つめは「ヘルプ&サポート」、ヘルプの内容をちゃんとアップデートし、マイクロソフトだけでなく各OEM企業のオンラインコンテンツも検索可能にし、トラブルシューターも検索可能にする予定だそうです。


5つめは「ユーザーインターフェースとテーマ」で、Windows自体のカスタマイズ、タッチとジェスチャーと3Dのサポート、より小さい画面への最適化、特定のアプリのプロモーションやWindows全体の経験における複雑さを減らすこと、そして地理的な差異による製品のカスタマイズとなっています。


以上を要約すると、Windows8はそういう価値を生み出す原料を提供するというわけです。


・つづき
「Windows 8」の起動時間をこれまでの半分にする新技術「ログオフ+ハイバネーション」とは?

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in ソフトウェア, Posted by darkhorse

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