著作権侵害の責任をISPにも求めた裁判で最高裁判所が「サービス提供だけでは幇助にならない」と判断

アメリカで7番目に大きな電話通信会社であるコックス・コミュニケーションズは2018年に「著作権侵害を繰り返すユーザーを完全に排除できず、海賊行為から利益を得ている」として大手レコード会社グループに提訴され、2019年には裁判の結果として10億ドル(約1500億円)の損害賠償が命じられました。上訴を受けた最高裁判所は「インターネットサービスプロバイダー(ISP)は、著作権侵害の疑いのある加入者にサービスを提供し続けたという理由だけで、著作権侵害の幇助(ほうじょ)責任を負うことはできない」という判決を下しました。
Supreme Court Wipes Out Record Labels’ $1 Billion Piracy Judgment Against Cox * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/supreme-court-wipes-out-record-labels-1-billion-piracy-judgment-against-cox/

Cox Communications not liable for pirated music, Supreme Court rules | The Verge
https://www.theverge.com/policy/900502/cox-communications-music-labels-piracy-supreme-court
ワーナー・ブラザースやソニー・ミュージックエンタテインメントを含む53の音楽会社グループは「ISPは著作権侵害を繰り返す者を完全に排除できず、この継続的な海賊行為から多大な利益を得ています。そのすべてはレコード会社や他の権利保有者の犠牲の上に成り立っています」と主張し、コックス・コミュニケーションズを「著作権侵害の『故意の共謀』」として訴訟を起こしました。コックス・コミュニケーションズは「加入者の権利侵害については、ISPに責任はない」と反論していましたが、審理の結果「加入しているユーザーによる著作権侵害行為に関して、コックス・コミュニケーションズは共犯的および間接的に責任がある」と認定され、総額10億ドル(約1500億円)の損害賠償が命じられました。この判決にはコックス・コミュニケーションズだけではなく複数のISPが意見書を提出し、ユーザーの行動についてISPは責任を問われるべきではないと主張していました。
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2024年には第4巡回区控訴裁判所による控訴審が審理され、「加入者の著作権侵害から直接利益を得ていることを証明できなかった」として損害賠償など一部地裁判決は覆されましたが、コックス・コミュニケーションズを「故意の著作権侵害者」とする原審判決は維持されました。
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ISPに責任を問う判決にコックス・コミュニケーションズは異議を唱えて上訴し、2025年12月には最高裁判所で審理が行われました。コックス・コミュニケーションズの主な主張は3点あります。1つ目は「ISPに責任を問うには、著作権侵害が行われているという認識だけでなく、著作権侵害を助長する『積極的な意図』の証明が必要」という目的基準。2つ目は「ISPは『受動的な不作為(何もしないこと)』に対して責任を負うべきではない」という「受動的な有用性」について。3つ目は、最高裁判所における過去の「X(旧Twitter)でテロリストが勧誘や資金調達を実施したことに、Xは責任を負わない」という判決に依拠すると、悪意のある行為者に一般的なサービスを提供することは幇助や教唆には当たらないという主張です。
再審理の結果、2026年3月26日に最高裁判所は「コックス・コミュニケーションズは海賊版利用者の著作権侵害行為について共同責任を負わない」と判決を下しました。判決では、責任を問うにはサービス提供者が著作権侵害を意図していたことを証明する必要があり、証明するためには「サービス提供者が積極的に侵害行為を誘発した」または「当該サービスに実質的な非侵害用途がない」のどちらかに該当する必要がありますが、コックス・コミュニケーションズの場合はどちらにも当てはまらないと結論付けています。

判決を執筆したクラレンス・トーマス判事は判決文の中で「企業は、一般大衆にサービスを提供しただけで、そのサービスが一部の人々によって著作権侵害に利用されることを知っていたとしても、著作権侵害の責任を問われることはありません。コックス・コミュニケーションズは単にインターネットアクセスを提供しただけであり、それは著作権侵害以外の多くの目的にも利用されています」と述べています。
一方で、少数派の反対意見に投票したソニア・ソトマイヨール判事はコックス・コミュニケーションズに責任はないという点で同意しつつも、「賛成派の意見は、ISPに対し著作権侵害を繰り返すユーザーの配信を停止することを義務付ける『セーフハーバー条項』を時代遅れにしてしまう」と警告しています。ソニーは「セーフハーバー条項は、ISPが著作権侵害ユーザーにサービスを提供したことで責任を負っていなければ意味がない」と主張していましたが、ソトマイヨール判事もこれに同意し「これまでISPはセーフハーバー条項に基づいて権利者からの通知に応じてユーザーのアカウントを停止してきましたが、今回の判決でISPに幇助責任がないことが明確になったことで、ISPが自社のサービス内で行われる海賊行為に対して何らかの措置を講じる動機はほとんどなくなりました。したがって、多数派の決定は、ISPが法的責任を恐れることなく、また侵害行為を防止するために何の努力もせずに、インターネット接続を希望するすべての侵害者にインターネット接続を販売することを許可していることになります」と懸念を述べています。
今回の判決により、過去の判決は覆されてさらなる審理のために第4巡回控訴裁判所に差し戻されます。記事作成時点では、音楽レーベルグループ側がさらなる訴訟を差し戻し審で起こすかどうか、どのような主張をするかについては不明です。全米レコード協会RIAAの会長兼CEOであるミッチ・グレイザー氏は、判決を受けて発表した声明の中で「裁判所の判決に失望しています。著作権法はクリエイターと市場を有害な侵害から守るものでなければならず、政策立案者はこの判決の影響を綿密に検討すべきです」と述べています。
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in ネットサービス, Posted by log1e_dh
You can read the machine translated English article In a lawsuit seeking to hold ISPs liable….





