海賊版を「見て見ぬフリ」をしたとしてプロバイダが約1500億円の損害賠償を請求される
アメリカ最大級のインターネットプロバイダが、「海賊版の加入者を見て見ぬフリをしていた」として10億ドル(約1500億円)以上の損害賠償請求を受けていることが報じられています。プロバイダに対する法的要件の行使は20年近く行われておらず、業界を震撼させる訴訟として注目が集まっています。
ISP Optimum Questions 'Evidence' For Billion Dollar Piracy Lawsuit * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/isp-optimum-questions-evidence-for-billion-dollar-piracy-lawsuit-231122/
Record Companies Hit Optimum With Billion Dollar BitTorrent Piracy Lawsuit * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/labels-hit-optimum-with-billion-dollar-bittorrent-piracy-lawsuit-221215/
アメリカの著作権法には、「インターネットプロバイダは、適切な状況において、侵害を繰り返す者のアカウントを停止しなければならない」と定められています。2022年の12月、音楽権利者のグループはインターネットプロバイダのオプティマムの親会社であるアルティスUSAに関し、「大規模な著作権侵害を助長した」としてテキサス州東部地区に告訴状を提出しました。
訴訟では、音楽権利者のグループは、トレントサイトの運営者ないし著作権侵害者として複数のユーザーを特定してオプティマムに報告していましたが、オプティマムはそれに応じなかったということで、契約解除不履行および侵害責任があるとしています。訴状には、「アルティスUSAは、原告と協力したり、この大規模な侵害を抑制するために他の意味のある効果的な措置を講じたりするのではなく、原告の権利よりも自社の利益を優先し、侵害の広がりを容認することを選択しました」と記載されています。
訴訟では、オプティマムに対し今後ネットワーク上で著作権侵害が繰り返されることを防ぐように要求すると同時に、約10億ドル(約1500億円)の損害賠償が請求されました。訴状を受けて、アルティスUSAは疑惑を強く否定した上で、「アルティスUSAのプロバイダとしての活動は、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の範囲で保護されています」と主張し、裁判に向けて証拠開示を進めています。
またアルティスUSAは、インターネットプロバイダを「著作権警察」にしようとしている音楽権利者のグループを非難し、「この訴訟は、インターネット上で起こるすべての侵害に対してプロバイダに責任を負わせ、それによってプロバイダを事実上の執行者に仕立て上げる著作権責任制度を構築しようとする音楽業界による試みであると言えます。各訴訟の結果として受け取った和解金の一部を得ることが目的となっており、中には脅迫的な和解要求が含まれている、年間何百万通もの通知を意図的に送信しています。これにより、プロバイダとしてのシステムが機能不全に陥る危険性があります」と述べています。
今回の訴訟の中心として考えられているライツコープという会社は、音楽や映画、ゲーム、ソフトウェア等の権利を保護するために、ファイル共有サービスを使用したユーザーに通知を送るシステムを展開しています。音楽権利者のグループがアルティスUSAを訴える根拠としてライツコープの検出システムが使用されており、アルティスUSAはこの検出システムの正確性を疑ってより詳細な情報を引き渡すよう要求しています。
アルティスUSAが訴訟を受けて裁判所に提出した動議には、「私たちは、権利侵害を検出して通知を送信するためのライツコープのシステムの正確性と信頼性、およびデータ、証拠、記録、または情報に関する証拠を求めています。ライツコープはそのような通知を送信する前にファイルをどのように検証したか、という点も含めて、再検討する必要があります」と記載されています。
2023年11月時点で、ライツコープはアルティスUSAの動議に回答していません。今後裁判所は、原告が訴訟の根拠として示したライツコープの著作権侵害追跡について、追加情報を要求するか決定していくものとみられています。
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