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YouTubeにCCライセンスの映画を使った動画を投稿したところ無関係の企業が著作権侵害を申し立てて削除されてしまう


オープンソースの3DCGソフト「Blender」の開発団体であるBlender Foundationは、Blenderで作ったさまざまな映画を作品の共有や使用を許可するクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)でリリースしています。そんなBlenderのCCライセンスで公開された短編アニメーション映画を素材に使い、動画をYouTubeにアップロードしたところ、まったく無関係の企業が著作権侵害だとYouTubeに申し立てて削除されてしまう事態が発生しました。

Company 'Hijacks' Blender's CC BY-Licensed Film, YouTube Strikes User (Update) * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/company-hijacks-blenders-cc-by-licensed-film-youtube-strikes-user-221205/

Blender Foundationはオープンな環境でBlenderのヘルプやトレーニングコースを提供すると共に、「Big Buck Bunny」「Sintel」といった映画作品をCCライセンスで公開しています。Blender Foundationの創設者兼会長であるトン・ローゼンタール氏は、「オープンライセンスは、映画とその素材を共有するために欠かせません。CC BYとCC 0により、素材コレクションを他のプロジェクトでも使用できるのです」と述べています

AI自動運転企業のNexarで共同創業者兼最高技術責任者を務め、独立した映画音楽作曲家でもあるブルーノ・フェルナンデス・ルイス氏は、音楽をYouTubeに投稿する際にBlender FoundationがCCライセンスで公開している映画を動画素材として使用していました。ところが、Blenderの短編アニメーション映画「Caminandes 3: Llamigos」の一部を含む動画をアップロードしたところ、YouTubeから「権利者が著作権侵害の申し立てを行ったため動画が削除された」という通知が届いたとのこと。

著作権侵害の申し立てを行ったのは、Blenderとはまったく関係がないウズベキスタンを拠点とする「ZO’R TV」というニュース企業でした。申し立てはコンテンツIDによる自動検出によるものではなく、手動による正式な申し立てが行われていたそうです。

通知によるとルイス氏が投稿した動画は、2018年にZO’R TVが公開した以下の動画から6分21秒~8分26秒の部分を複製し、著作権を侵害したと申し立てられていました。しかし、そもそもZO’R TVの動画はCCライセンスで公開されていた「Caminandes 3: Llamigos」を放送しているだけであり、著作権侵害を申し立てる権利は持っていません。

Nahori nashta 9-soni (26.02.2018) - YouTube


なお、元となった「Caminandes 3: Llamigos」は全編YouTubeで見ることができます。

Caminandes 3: Llamigos - YouTube


ルイス氏は決められた手順に従って、ZO’R TVは元となった動画コンテンツの著作権所有者ではなく、動画の削除は誤りだとしてYouTubeに異議申し立てを行いました。しかし、情報が不十分であるためYouTubeは処理できないという答えが返ってきた上に、異議申し立てによってルイス氏の名前がZO’R TVに通知される可能性があるなど、異議申し立てにはリスクがあると述べてきたそうです。


リスクを受け入れてルイス氏は再度異議申し立てを行い、今度は情報に不備があるという指摘はなかったものの、やはり動画の復元は認められませんでした。YouTubeはルイス氏に対し、「提供された情報によると、あなたはYouTubeにコンテンツを投稿するのに必要な権利を持っていないようです。そのため、申し訳ありませんがあなたのリクエストは認められません」と返答しました。


ルイス氏は一連のYouTubeの対応に不満を持っており、「手動レビュアーは奇妙な方法で『著作権』を尊重していると感じます。レビュアーはライセンスを無視しました」と述べ、YouTubeはCCライセンスについての理解や適切なトレーニングが不足していると主張。訴訟を起こせば問題は解決する可能性があるものの、ただの作曲家にそのような訴訟費用は負担できず、YouTubeの著作権侵害申し立てプロセスは非対称だと不満を表明しています。

ルイス氏はこの件について、Blender Foundationのトン・ローゼンタール氏にもメールを送って報告しています。ローゼンタール氏は、「状況を知らせてくれてありがとうございます。YouTubeがコンテンツのライセンスすらチェックせず、自由な文化とクリエイティブ・コモンズに貢献する人々を軽視するのは非常に悲しいことです」と述べつつも、Blenderにはこの問題に対処できる人員がいないとのことで、クリエイティブ・コモンズの団体に通知することで物事が進展する可能性があるとアドバイスしました。

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