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人類はかつて1日に2回眠っていた、一体なぜその習慣が失われたのか?


現代人の多くは1回に6~8時間程度の睡眠をまとめてとっていますが、実は人類の歴史のほとんどでは、1晩に2回の睡眠を分けてとっていました。人々はどのようにして2回の睡眠をとっていたのか、そして一体なぜこの習慣が失われたのかについて、イギリスのキール大学で認知心理学講師を務めるダレン・ローズ氏が解説しています。

Why we used to sleep in two segments – and how the modern shift changed our sense of time
https://theconversation.com/why-we-used-to-sleep-in-two-segments-and-how-the-modern-shift-changed-our-sense-of-time-267909


ローズ氏は、人類の歴史の大部分において7~8時間連続の睡眠は一般的ではなく、数時間ずつの睡眠を2回にわけてとっていたと指摘しています。これらの睡眠は「第一睡眠」「第二睡眠」と呼ばれ、その間に1時間以上の覚醒期間が挟まることが一般的でした。実際、ヨーロッパやアフリカ、アジアなどの歴史的記録には、日が暮れて早々に就寝し、真夜中に再び起きてから夜明けまで眠り続けた様子が記されています。

夜の時間を2つに分けることで、時間の感じ方が変わっていた可能性があります。冬の長い夜でも、第一睡眠の後に1時間以上の覚醒期間が挟まることで、夜を途切れなく続くものではなく、心理的に扱いやすいものにしていたとローズ氏は指摘しました。また、真夜中の時間は決して「死んだ時間」ではなく、人々はかまどの火をかき混ぜたり、動物の様子を観察したりするなどの作業を行っていました。ベッドの中で神に祈りをささげたり、見たばかりの夢について考えたりする人もいたとのこと。

産業革命以前の手紙や日記には、人々が真夜中の静かな時間を読書や執筆、あるいは家族や隣人との静かな交流に使っていたことが記されています。そして多くのカップルは、この真夜中の時間を夫婦あるいは恋人同士の時間として利用していたそうです。古代ギリシャの詩人であるホメーロスやローマの詩人ウェルギリウスの詩には、「最初の眠りを終わらせる時間」についての記述があり、2回に分けた睡眠がいかに一般的だったかを示しています。


2回に分けた睡眠の消失は、およそ2世紀にわたる大規模な社会変動によって起こりました。1つ目が「人工照明」の登場で、18世紀から19世紀にかけて石油ランプ、ガス灯、最終的に電灯などが登場しました。これによって暗いだけの夜はより有益な起床時間へと変化し、人々は日没後すぐに就寝するのではなく、照明の下で夜遅くまで起きているようになりました。生物学的には、夜間に光を浴びると概日リズムが変動し、眠り始めるのが遅くなる上に、一度眠った後の真夜中に起きにくくなります。

また、産業革命によって工場での勤務が一般的になりましたが、工場の勤務では、1回の休憩のみが推奨される厳密なタイムスケジュールが組まれていました。時間に厳しい社会になったことで、20世紀初頭までに「2回に分けて睡眠をとる」という習慣は失われ、8時間連続の睡眠が取って代わることとなったそうです。

時計や夜間の明かりを排除した環境で、数週間にわたって長い冬の夜を再現した実験では、被験者はしばしば穏やかな覚醒期間を挟み、2回に分けて睡眠するようになったことが報告されています。また、電気がないマダガスカルの農村で行われた2017年の研究では、人々は依然として2回に分けて睡眠し、真夜中に起きていることが確認されました。


睡眠臨床医らは、眠っている最中に短時間覚醒するのは正常であり、特に睡眠段階の移行期に発生しやすいと指摘しています。脳の時間感覚には弾力性があり、退屈だったり暗い場所だったりすると時間の流れが遅く感じられるため、夜中に起きている時間が実際以上に長く感じられる場合があるとのこと。

不眠症に関する認知行動療法では、夜中に目が覚めて20分が経過したらベッドから出て、薄暗い環境で読書などの静かな活動を行い、眠くなったらベッドに戻るようにアドバイスしています。

ローズ氏は、「睡眠の専門家は、なかなか眠れない時は時計を覆い、時間を測るのをやめることを勧めています。目覚めていることを冷静に受け入れ、私たちの心が時間をどのように認識しているかを理解することが、再び安らぎを得るための最も確実な方法かもしれません」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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