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目覚まし時計が生まれる前の人々はどうやって目覚めていたのか?

by Vic

現代では多くの人々が朝目覚めるために「目覚まし時計」を利用していますが、「目覚まし時計が鳴らなかったらいつまでも眠ってしまう」という人も少なくないはず。そんな目覚まし時計が誕生する以前の人々がどのようにして目覚めていたのかという疑問について、科学系サイトのLive Scienceが解説しています。

How Did People Wake Up Before Alarm Clocks?
https://www.livescience.com/64002-how-wake-up-before-alarm-clocks.html

目覚まし時計ほど人々から恨まれている文明の利器は他にないかもしれません。しかし、そもそも目覚まし時計が発明される以前から人々はちゃんと朝になれば起床していました。「時間を知る」という簡単な仕組みでさえ人間にとっては大きな発明であり、日時計水時計といった装置を開発して時間の計測が可能になったことは、人間の生活に大きな変化を与えたとのこと。

時計が発明された初期のころから、ろうそく時計を用いて朝の起床時刻を教える装置が考案されてきました。古代中国で使用されたろうそく時計を用いた目覚まし時計は、就寝前に中へクギを埋め込んだろうそくに火をともし、時間が経過するに従ってろうが溶けて中のクギが落下するというもの。クギが落下する場所に金属製のトレイを設置しておくことで、落下したクギが大きな音を立てて寝ている人物を起こすという仕組みです。

しかし、この初期の目覚まし時計は精度が低く、正確な時間に音を鳴らすことはできませんでした。結局のところ多くの人々が目覚まし時計によって目を覚ますようになるのは、精密な機械式の目覚まし時計が生まれて以降の時代です。

by H is for Home

人間は生まれつきのホメオスタシス(恒常性)により、覚醒と睡眠のパターンを生物学的状態をコントロールしています。ロイヤルメルボルン工科大学で睡眠と心理学について研究しているメリンダ・ジャクソン氏は、「長く起きていればいるほど人間は眠りやすくなり、眠っている間にその『眠りにつかせる力』は発散されます」と語り、長く起きていると自然と人は眠りにつき、眠っていると自然と人は起床に導かれるようにできているとしました。

このホメオスタシスと重なり合って起床と眠りに影響を与えているのが、概日リズム(体内時計)という24時間周期の生理現象です。体内時計は1日中にわたって睡眠と覚醒の段階をコントロールしており、太陽の光や夜の暗闇といった外部からの刺激からの影響を受けています。それにより、人間の覚醒と就寝の周期は明るくなる朝と暗くなる夜に対応し、「夜眠って朝起きる」という基本的なリズムを作り出しているとのこと。

by Mirai Takahashi

マンチェスター大学で睡眠習慣の歴史について研究しているサシャ・ハンドリー氏は、近世の英国の人々が東にベッドを向けて寝る習慣があったことを突き止めています。東という方角には「復活したイエス・キリストがやって来る方角である」という宗教的な意味合いもあったそうですが、このベッドを向ける方向によって人々は東から昇る朝日を受け、目を覚ましていた可能性について述べました。

また、昔の人々は家の周囲から響く物音を防ぐ有効な手段を持っていませんでした。そのため、「産業革命前の農村のような地域では、自然が発する音が起床に重要な役割を持っていたかもしれません」と、ハンドリー氏は語りました。朝になって目を覚ましたニワトリや家畜の鳴き声といった騒音は、農村に住む人々を眠りから覚ます目覚まし時計と同じ役割を果たしていた可能性があるとのこと。また、教会が鳴らす鐘の音も一種の目覚まし時計として機能していたとハンドレー氏は述べています。

宗教的な観点から見ると近世英国の人々は朝早い時間帯について、「神に近づくことができる精神的な時間」という認識を持っていたとハンドレー氏は考えています。そのため、「朝早くに起きて神に祈りを捧げる」という行為が人々にとっての強いモチベーションとなり、人々が朝早く起きる手助けになっていたそうです。

by Saint Joseph

しかし、1600年から1700年にかけてランタン時計が広まったことにより、自分自身が強く朝に起きるという意志を持つ必要性が薄れました。機械式のランタン時計にはアラーム機能が備わっており、自分が起きたくなくても人々はランタン時計のアラームによって起こされるようになってしまいました。


また、イギリスにはノッカー・アップという「眠っている人を起こす」職業が存在しており、棒で玄関のドアをたたいたり高層階の窓を長い棒でたたいたりして、中の住人を起こして回っていました。ノッカー・アップは安価な目覚まし時計が普及する1930年代から1940年代になるまで、イギリスで活躍していたとのこと。

近年では目覚まし時計によって人々は目覚めていますが、本当に目覚まし時計が人間の生活にとって素晴らしいものであるかどうかは微妙なところです。人々は以前よりも遅くまで起きているようになり、睡眠の時間を削ってテレビやノートPC、スマートフォンなどの画面を見つめています。ジャクソン氏は睡眠の優先順位が下がっていると指摘し、「目覚まし時計を使う以外に起きられる方法がなくなってしまった」と語っています。

ハンドレー氏によれば、かつて睡眠はより神聖なものであったそうです。人々は就寝前に睡眠作用のあるハーブティーを飲んだり、枕の中に落ち着いた香りの花を詰め込んだり、祈りを捧げたり刺しゅうのような頭を使わない趣味をしたりしていました。睡眠不足の現代人に対し、「睡眠を24時間周期の中心に据えてください」とハンドレー氏は述べ、そうすれば目覚ましなしで起床することはあまり難しくないとしました。

by planetchopstick

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in メモ, Posted by log1h_ik

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