メモ

人間は夜の闇の中で何をして過ごしてきたのか?という歴史


人工の光があふれ、人々は夜遅くや朝方まで起きて行動することが可能になりましたが、電気が生まれる前の人々が夜をどのように過ごしていたのかは、いまだ謎の多い分野です。ベルビュー・コミュニティカレッジで人類学について研究するNancy Gonlin氏は、「Archaeology of the Night」という本を仲間と共同執筆する際に、「夜の生活について調査した研究はほとんどない」ということに気づいたとのこと。そこで、人工の光が生まれる前、夜間に農作業、鍛冶、儀式などが行われてきた歴史についてまとめています。

Night Archaeology - What the Archaeology of Night Reveals - SAPIENS
https://www.sapiens.org/archaeology/night-archaeology/

A History of What We Do in the Dark - Pacific Standard
https://psmag.com/news/historical-night-life

電気が発明される少し前であればキャンドルやランプを使っている人もいましたが、夜は今日よりもずっと暗いものでした。それでも、私たちの祖先は現代の私たちと同様に、睡眠、性行為、天体観測、仕事、儀式、秘密の会合といったことを夜の間に行っていました。


例えば、現代において夜の繁華街はがやがやとにぎやかですが、実は、古代ローマでもにぎやかな夜は存在しました。古代ローマの祭りでは、車輪のついた屋台が居酒屋のような役割を果たし、人々は詩人に詩を書いてもらいながら夜明けまで宴会を続けたといいます。ローマ市民たちは暗闇を利用してバルコニーからおしっこをしたり、道に物を投げ捨てたり、時には犯罪を働くこともあったとのこと。

そして古代ローマでは睡眠が「第1睡眠」「第2睡眠」の2つにわかれており、人々は2つの睡眠の合間で思索にふけったり、祈り、読書、性行為などを行ったといわれています。21世紀を生きる私たちは「8時間睡眠はよいこと」だと考えていますが、古代ローマの例を見てもわかるように、どのように眠るか、どのくらい眠るかという睡眠パターンはその場所の「文化」が決めてきました。

by Annie Spratt

一方で古代のメソアメリカの夜は忙しく、夜間に狩り、守衛、祝宴、翌日の食事の準備が行われていました。当時は日が落ちるとジャガーが動き回り、昆虫は飛び回り、熱帯植物は花を咲かせて冷たい夜の空気に香りをまき散らしました。たいまつに火が灯され、家庭でも火が使われることで人々は暖や光を得て、闇に潜む現実的な、あるいは空想上の「何か」を遠ざけていたとのこと。

この時代、夜は神聖かつ不吉なものだったので、太陽が昇ることを保証すべく、人々は火のまわりで闇を支配する神に対して捧げ物を行っていました。祈りの儀式の中で、王族の血を引く人は酩酊(めいてい)作用のあるカカオの飲み物を飲み、真夜中に踊っていたといいます。人々は黒曜石の刃物やエイの骨、トゲのあるロープなどを使って体を傷つけ血を流し、先祖たちをたたえたとのこと。そして、一部の人々は金星を観測することで戦争における大きな決断を下しました。

また、古代エジプトでは、太陽神ラーが西で死ぬことによって闇がやってくると考えられていました。そして死者は西にいる冥界の王・オシリスのもとへと旅立つと考えられていたため、エジプト新王国の葬儀では「光」が必要不可欠とされました。このような「光」の使い方を見ることでも、当時の人々が「闇」と「死」の関係をどのように捉えていたのかを知ることができます。

by Mathew MacQuarrie

青銅器時代のオマーンで生きた農家たちは、脱水を割けるために涼しい夜間に農作業をしていました。鉄器時代のジンバブエの鍛冶職人たちも太陽をさけるため夜間に作業を行っていたとのこと。ポリネシアでは何世紀も水夫たちは星を読み、19世紀のバハマの奴隷たちにとって夜は「自由」を得られるつかの間でした。このように、「夜」が持つ意味は、時代、場所、文化によって、実に多様なのです。

現代の夜は、宇宙空間からでも光が検出されるほどに明るいものになっています。近年の研究では概日リズムが私たちの遺伝子の10~15%を制御していると示されており、概日リズムを狂わせることは心臓病や不眠症、うつといった数々の疾患と関係するともいわれています。研究者の中には、夜間に光を浴びることとガンとの関係を主張する研究者もいます

「暗い夜」を守るためのNPOである国際ダークスカイ協会(IDA)は、世界中の数多くの種に対して明るい夜が環境的ダメージを与えていると指摘しています。もちろん、光を生み出すためにより多くの化石燃料が使われ気候を変化させていることもありますが、それ以外にも海ガメや渡り鳥が光害によって正しい場所にたどり着けず生命存続の危機にさらされているとのこと。このような問題に対し、IDAは「ダーススカイプレイス認定」という制度を作るといったアイデアを実施しています。日本では八重山諸島の国立公園が認定を受けて「星空保護区」とされています

by Greg Rakozy

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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