スマホのインターネットアクセスをブロックすることで幸福度が増して注意力も高まることが判明

現代人はスマートフォンやPCを通じて常にインターネットへアクセスしており、暇があればついスマートフォンでSNSや動画サイトを見てしまうという人も多いはず。新たな研究で、スマートフォンからのインターネットアクセスを遮断する実験を行ったところ、被験者のメンタルヘルスが改善し、幸福度が増し、注意力が高まるなどさまざまなメリットが確認されました。
Blocking mobile internet on smartphones improves sustained attention, mental health, and subjective well-being | PNAS Nexus | Oxford Academic
https://academic.oup.com/pnasnexus/article/4/2/pgaf017/8016017
Want better focus and a happier mind? This simple smartphone change could be the answer
https://www.psypost.org/want-better-focus-and-a-happier-mind-this-simple-smartphone-change-could-be-the-answer/
ほとんどの人がスマートフォンを肌身離さず持ち歩いている現代では、スマートフォンを介して1日数時間、時には10時間以上もインターネットに接続するのが当たり前になっています。2022年の調査では、アメリカに住むスマートフォンユーザーの約60%、30歳未満に限定すると約80%が、スマートフォンに「過度に依存」していると感じていることもわかりました。
スマートフォンには多くの利点がありますが、近年はインターネットの使用が心や感情に及ぼす潜在的な悪影響も懸念されており、インターネットやデジタルデバイスから離れる「デジタル・デトックス」にも注目が集まっています。
実際に、スマートフォンの使用と幸福感の関係を調べたこれまでの研究では、スマートフォンの大量使用が「主観的な幸福度の低下」「メンタルヘルス関連の問題増加」「注意力の低下」に関連していることが報告されています。しかし、多くの先行研究は相関関係に焦点を当てたものであり、直接的な因果関係についてはよくわかっていません。
そこでアメリカやカナダの研究チームは、実際に被験者がスマートフォンからインターネットにアクセスすることを制限し、それが幸福度やメンタルヘルス、注意力にどのような影響を及ぼすのかを調べる実験を行いました。

1カ月間にわたる実験には、アメリカとカナダから合計467人の被験者が集められました。被験者のインターネットアクセスを制限するために用いられた「Freedom」というアプリはiOS版しかないため、すべての被験者はiPhoneユーザーだったとのこと。被験者の平均年齢は32歳で、63%が女性であり、さまざまな学歴および民族的アイデンティティの人が含まれていたほか、身分も学生・パートタイム労働者・フルタイム労働者など多様でした。
実験には因果関係を調べる上で有効なランダム化比較試験が採用され、被験者は「介入群」と「遅延介入群」の2グループにランダムで割り当てられました。どちらのグループも実験開始前までは普通にスマートフォンを使用しており、介入群は実験開始から2週間にわたってスマートフォンからのインターネットアクセスがブロックされ、遅延介入群はその期間中もそれまで通りインターネットにアクセスし続けました。2週間が経過すると、介入群は再びスマートフォンからアクセスできるようになり、今度は遅延介入群のスマートフォンからのインターネットアクセスが2週間にわたりブロックされました。
研究チームは、「研究の開始時点」「前半の2週間の介入が終わった後」「後半の2週間の介入が終わった後(実験開始から4週間後)」の3つの時点で、被験者の「主観的な幸福度」「メンタルヘルス」「注意力」をそれぞれ測定しました。また、被験者の社会的なつながりや自制心といった特性や、実験期間中にどのように過ごしたのか、睡眠時間はどれくらいだったのか、自分が何かに取り残される不安を示す「Fear of Missing Out(FOMO)」のレベル、ADHDの症状といった項目についても調査したとのこと。
このデザインにより、研究チームはスマートフォンからのインターネットアクセスをブロックした効果について、同じ個人内で比較することができたほか、インターネットアクセスが回復した後の影響についても測定できました。なお、被験者はテキストメッセージのやり取りや通話など、スマートフォンの基本的な機能はインターネット制限中も利用できたほか、PCなど他のデバイスからインターネットにアクセスすることは可能でした。
今回の実験で重要な点は、「被験者が本当にインターネットアクセスのブロックを順守したのかを、Freedomを通じて客観的に測定できた」という点です。Freedomは実験期間中、被験者のデバイスでインターネットのブロックが有効化されていたかどうかを自動的に記録し、被験者がどれほど指示を守っていたのかどうかを追跡していたとのこと。

実験の結果、スマートフォンからのインターネットアクセスを2週間ブロックすると、PCやタブレットからならインターネットにアクセスできたにもかかわらず、心理的機能のいくつかの側面にプラスの影響が及ぶことが判明しました。
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