サイエンス

スマホの使用時間が増えると社会とのつながりが希薄だと感じてさらにスマホの使用が増加する悪循環に陥ってしまうという研究結果


スマートフォンでSNSや動画サイトを見ているとあっという間に1日が過ぎてしまい、最近は家族や友達と一緒に過ごす時間が減ってしまったという人も多いはず。カナダの研究チームが行った研究では、「スマートフォンの使用感が増えると社会とのつながりが希薄だと感じ、さらにスマートフォンの使用時間が増える」という悪循環が明らかになりました。

Directly-measured smartphone screen time predicts well-being and feelings of social connectedness - Christine Anderl, Marlise K. Hofer, Frances S. Chen, 2023
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/02654075231158300


New study uncovers a "vicious cycle" between feeling less socially connected and increased smartphone use
https://www.psypost.org/2023/09/new-study-uncovers-a-vicious-cycle-between-feeling-less-socially-connected-and-increased-smartphone-use-212978

現代社会では多くの人々がスマートフォンを日常的に使用しており、中には1日中スマートフォンを触っているという人も珍しくありません。そのため、スマートフォンが人々のメンタルヘルスに及ぼす影響についての研究が盛んに行われていますが、これらの研究ではスマートフォンの使用時間測定を自己申告に頼っていることが多く、研究の限界のひとつとなっています。


この問題を解決するため、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、実際に被験者がスマートフォンを使用していたスクリーンタイムを追跡し、幸福度や社会的つながりとの関連を調べる研究を行いました。

研究チームは、14~80歳までのAndroidユーザー325人を募集し、スクリーンタイムを追跡する「BeTrack」というアプリをインストールしてもらいました。また、参加者にアプリを通じて1日あたり3回、ランダムな時間に通知を送信し、幸福度や社会的つながりについてのアンケートを実施。スマートフォンの使用がオフラインの社会的相互作用に及ぼす影響を調査しました。


実験データを分析したところ、アンケートに答える直前の1時間のスマートフォン使用時間が長いほど、アンケート時点での幸福度が低下していることが判明。その一方で、直前の1時間にオフラインでの社会的交流があった場合は、この悪影響が一部相殺されたとのことです。

研究チームは論文で、「アンケート調査の1時間前にスマートフォンをより多く使用していると、その時点の幸福度が低くなることがわかりましたが、その逆の経路を示す証拠は見つかりませんでした。このことは、スマートフォンの使用が幸福度の低下につながることはあっても、その逆はないことを示唆しています」と述べています。

さらに、スマートフォンの使用時間が増加するほど社会的つながりが減少するだけでなく、社会的つながりの減少がスマートフォンの使用時間の増加を予測することも示唆されました。つまり、社会的なつながりが薄いと感じるとスマートフォンの使用時間が増加し、そのこと自体が社会的なつながりが薄いと感じさせてしまい、さらにスマートフォンの使用時間が増加するという悪循環が存在するというわけです。研究チームは、「この双方向の関連性は、社会的つながりとスマートフォンの使用の間の複雑な関係を示しており、悪循環が存在する危険性を指摘しているのかもしれません」と主張しました。


なお、今回の研究はあくまで観察に基づくものであり、因果関係を見つけたわけではない点や、Androidユーザーのみを対象にした点などに注意が必要だと、科学系メディアのPsyPostは指摘しています。

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in モバイル,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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