スマホやSNSを使いまくっても10代のメンタルヘルスは悪化しないという研究結果

by bruce mars

スマートフォンをよく使用する若者を対象とした、のべ5270日間・合計1万3017件にも及ぶ観察記録から、デジタル技術の使用が若者のメンタルヘルスに与える影響が明らかとなりました。

Young Adolescents’ Digital Technology Use and Adolescents’ Mental Health Symptoms: Little Evidence of Longitudinal or Daily Linkages - Michaeline Jensen, Madeleine J. George, Michael R. Russell, Candice L. Odgers,
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/2167702619859336

Tech time not to blame for teens' mental health problems: Study of 400 teens finds little evidence linking excessive smartphone use and mental health outcomes -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/08/190823140736.htm

Little evidence linking teen tech usage with elevated mental-health symptoms, study finds - Market Business News
https://marketbusinessnews.com/teen-tech-usage-mental-health/211957/

過去の研究により、10代の若者によるソーシャルメディアの使用はメンタルヘルスの悪化や発達障害に関連があることが示唆されています。その一方で、「PCやスマホの見過ぎが若者の幸福度を下げるとはいえない」とも指摘されており、スマートフォンやSNSの使用が若者の健康に悪影響を及ぼすかどうかについては活発な議論が続けられています。

by Gary Cassel

そんな中、カリフォルニア大学アーバイン校の心理学教授であるキャンディス・オジャーズ氏が率いる研究チームは、10～15歳の青少年388人を対象とした調査により、デジタル技術が若者のメンタルヘルスに与える影響を観察しました。

研究チームはまず、ノースカロライナ州の公立学校に通う青少年388人に対し、1人あたり14日間の生態学的瞬間評価(EMA)を実施しました。EMAとは、日記法や経験サンプリング法とも呼ばれるもので、実験期間中の被験者の思考や感情・行動・環境などについて適宜回答してもらうことで、心理状況などの変化を評価する調査手法です。

今回のEMAでは、被験者に対し1日に3回メンタルヘルスの状況について回答してもらうとともに、電子機器の使用状況を毎日報告させました。そして、この調査で得られた合計1万3017件の追跡記録を分析したところ、「若者によるデジタル技術の使用とメンタルヘルスの症状の間に関係は見られない」ことが判明しました。

by Wokandapix

具体的には、「デジタル技術の使用に多くの時間を費やした」と回答した日でも、メンタルヘルスの悪化は見られませんでした。これは、元からメンタルヘルスに問題を抱えがちな被験者でも同様の結果だったとのこと。しかも、「調査期間中にテキストメッセージを多数送信した被験者は、テキストメッセージの送信が少ない被験者よりも気分の落ち込みが少ない」という報告もあり、ソーシャルメディアの使い方次第ではむしろメンタルヘルスに好影響を与える可能性も示唆されています。

オジャーズ氏は「大人たちはスマートフォンやソーシャルメディアが10代の若者のメンタルヘルスにとって良いか悪いかの議論をやめて、オンラインとオフラインの両方で充実した生活を送れるようサポートする方法を模索すべき時が来たのかもしれません」と話し、良し悪しの議論よりも若者の支援の方が有意義だとの見方を示しました。