孤独感をやわらげるにはネットでなくリアルで顔と顔をつきあわせる必要があることが研究で判明
by Christopher Allison Photography
無人島に1人残され、食欲・睡眠欲などの基本的欲求は満たされた状態で、人とのコミュニケーションはモバイル端末越しのみに制限された時、人は孤独を感じるものなのか、それとも問題なく生活できるのか?という問いの答えとなる研究結果が示されました。オレゴン健康科学大学のアラン・テオ助教授らが発表した研究結果によると、人の孤独感をやわらげ、うつや慢性疾患を防ぐためには、電子端末越しではなく、顔を直接合わせる形のコミュニケーションが必要とのこと。
To Beat the Blues, Visits Must Be Real, Not Virtual - WSJ
http://www.wsj.com/articles/to-beat-the-blues-visits-must-be-real-not-virtual-1464899707
心理学者のスーザン・ピンカー氏によると、ここで語られている「無人島に1人残され、食欲・睡眠欲などの基本的欲求は満たされた状態で、人とのコミュニケーションはモバイル端末越しのみに制限された時」というのは、現代のアメリカ人が置かれた状態のメタファーであるとのこと。先進国で暮らす現代人の多くは基本的欲求が満たされ、85%はインターネットにアクセスしているため、端末越しに誰かとつながることは可能にも関わらず、全体の26%は極度の孤独を感じています。
過去の研究で多くの心理学者が、うつ・慢性病・早期の死を引き起こすカギは、友人や家族に拒絶されたり無視された時の感情、つまり「孤独感」にあるということを明らかにしてきました。しかし、中年期・壮年期にある人が孤独を感じる割合は、1970年代には14%であったのに対し、今や40%にまでふくれあがっています。
by Britt-knee
以下の記事を読むと孤独が人生にどのような影響を与えるのかがわかります。
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「スマートフォンやタブレットといった電子端末は、孤独が広まる社会の解毒剤として機能する」という点は多くの心理学者が同意するところですが、一方で、人間にとって重要な「よりどころがある」という本能的な感覚は、仮想体験によってもたらされるのか、という点にはこれまで疑問が残っていました。
そこで、オレゴン健康科学大学のアラン・テオ助教授は、2004年から2010年にかけて行われた「加齢に関する国民調査」に参加した50歳以上の被験者1万1000人のデータを調べ、どのようなタイプの社会的接触の不足が2年後にうつを引き起こすのかを調査しました。なお、調査において、性別・年齢・病歴などのうつのリスクを加速させると見られる人口統計学上の要素については考慮されています。
テオ助教授らが2015年10月にJournal of the American Geriatrics Societyに発表した論文によると、さまざまなタイプのコミュニケーションのうち、実際に顔と顔を合わせるコミュニケーションだけが、壮年期の人のうつのリスクを未然に防げるということが判明。電話によるコミュニケーションは気分障害と診断されたことがある人の将来的なうつのリスクに対して影響がありましたが、その他の人に対しては影響を与えず、またメールなどテキストによるコミュニケーションは調査の対象者にまったく影響を与えていなかったとのこと。
この時、友人や家族にどのくらいの頻度で会うのかもうつ病を引き起こすカギとなっており、同じ場所に居合わせて顔を合わせる頻度が高いほど、将来的にうつになる可能性が少なくなるということも判明しています。
すなわち、調査対象となった人々のうち、子ども・友人・家族などと数カ月に1度しか会わない人は病気になる割合が最も高く、反対に、少なくとも週に3回はこれらの人と実際に顔を合わせる、という人が最も病気になる割合が少なかったとのこと。さらに、50~70歳の人は友人と面と向かってコミュニケーションを取るのがよく、70歳以上の人は家族と直接顔を合わせることが最も重要であることもわかっています。「より多く人と実際に顔を合わせれば、よりよく生きることができます」とテオ助教授は語りました。
by photosavvy
もちろんメールや電話によるコミュニケーションも人が社会に参加する上で非常に重要ですが、人生の後期においてうつや病気に苦しまないためには、直接友人や家族と顔を合わせる機会を設けることがより重要になってくるわけです。
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