うつの症状を緩和する食事といわれる「ダッシュダイエット」とは?

by Brooke Lark

研究が進むにつれ腸が人間の気分を左右する仕組みが明らかになってきており、不安やうつは腸の状態と関係があり、腸内バクテリアが変われば行動も変わるといわれています。腸内環境を変える食事として挙げられるのが野菜・果物全粒穀物、低脂肪食品などを十分に摂取する「ダッシュダイエット」で、うつのリスクを低下させることができるとされています。

The DASH Diet Helps Depression Symptoms - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/health/archive/2018/03/the-diet-that-might-cure-depression/556742/

20世紀、精神疾患の原因について調査していた著名な内科医たちは「原因は自家中毒にあるのではないか?」という考えに至ります。これは、腸内の微生物が宿主である人間を疲れさせ、うつやノイローゼの状態にしているのではないかという考え方で、1914年に発行された医学雑誌・Medical RecordではBond Stowという医師が自家中毒が不調や野心の欠如、うつなどの原因であることを示唆し、「人の食事をコントロールするのはたやすいが、腸内細菌叢を制御するのは難しい」と記しています。

また、ラッシュ医科大学のDaniel R. Brower医師は、西欧におけるうつ病発生率の増加は食生活の変化によって胃腸内で毒素が発生していることが原因でないかと考えました。当時の医学の多くが誤りを含んでいたように、Brower医師の「毒素」という考えは誤りでしたが、「食生活が人の気分に影響を与え、腸内細菌がその役割を担っている」という発想は間違っていなかったといえます。

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2018年4月に発表される予定の最新研究では6年半にわたって964人の高齢者を調査した結果、ダッシュダイエットを行うとうつ病になる確率が低くなり、一方で典型的な西欧の食事を取る人はうつの傾向が高くなることが示されました。この研究で被験者らは、さまざまな食べ物をどのくらいの頻度で食べているかが尋ねられると共に、毎年「うつであるかどうか」の質問を行って検査されました。研究を行ったラッシュ大学医療センターの脳血管神経学者であるLaurel J. Cherian准教授は「食べ物を薬として見る必要があります」「うつの治療薬は素晴らしいものですが、多くの人は物事の『組み合わせ』によってうまくいきます」と語っています。

上記の研究はまだ査読が行われていませんが、ダッシュダイエットについて「うつを抑える」という利益があるとしている研究は、ほかにもあります。

2018年1月に発表された研究では、ダッシュダイエットが思春期の少女たちのうつを減少させることが示されました。精神疾患の半数は10代で発症することから、10代のうつを減らすことができるという結果は、うつそのものの発症を食い止める方法になるとみられています。

一方で、腸と脳のつながりについての専門家であるユニバーシティ・カレッジ・コークのJohn F. Cryan教授は、この分野の研究が観察研究である点や、高齢者を被験者としている点について、注意を促しています。老年期うつは一般的なうつとは異なるとのこと。

地中海式ダイエットを成功させて健康になるために必要なものは「お金」と「教養」だとする研究結果が発表されているように、裕福な人々はよりよい食事をとれ、幸福になりやすいのも事実。この点、ダッシュダイエットについて調査したCherian准教授の研究は社会経済的な地位についてコントロールしていません。しかし、全体的に見れば、収入や教育といった要素をコントロールした状態であっても食生活がうつの症状を改善するという証拠は示されているとディーキン大学の栄養精神科教授であるFelice Jacka氏は述べています。

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Jacka氏は2010年、農作物・肉・魚・全粒穀物を多く摂取している女性は、大うつ病性障害や不安が他の人に比べて低いことを発見しました。その後、21の研究をメタアナリシスしたJacka氏は「果物・野菜・全粒穀物・魚・オリーブオイル・低脂肪の乳製品・抗酸化物質を多く摂取すること、及び動物性食品を少量摂取する食事は、うつのリスク低下と明らかに関係がある」ということを発表しています。Jacka氏は、ほかの研究が必要ないほどに、過去研究結果から食事とうつの関係は明らかだと語っています。

ダッシュダイエット自体は「赤身の肉・ベイクドポテト・たくさんの野菜」といった内容で、革命的な食事ではありません。ダッシュダイエットがなぜ有益なのかは研究中ですが、主たる仮説は「脳と腸の接続」に理由があるとするものです。植物性食品の多い食事をとると、植物の繊維が胃腸内で発酵し、短鎖脂肪酸を生成します。短鎖脂肪酸は免疫系を制御し脳などにおいての遺伝子発現に影響を及ぼすといわれているもの。また繊維を取ることでさまざまな細菌が増え、これらが気分に影響を与える化学物質を作り出すものと見られています。

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Cryan教授は、睡眠や運動といった古くから重視されていたものに加えて、食生活の重要性への認知が近年高まっていると述べています。もちろん、腸と脳のつながりについての研究などは研究の初期段階にあり慎重になるべき部分はありますが、うつである人は食生活を改善することが症状の緩和につながるかどうか、試してみることが推奨されています。

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