頭の中でイメージを思い浮かべることができない「アファンタジア」の人は脳の配線が異なることが判明

目を閉じて頭の中で人物や風景を思い描くことができない「Aphantasia(アファンタジア)」という状態は、人口の約2~5%ほど存在すると言われています。アファンタジアの人は目を見ればわかるという研究結果や、怪談で恐怖を感じることがないという調査結果などさまざまな研究が行われていますが、2025年1月に発表された研究では、アファンタジアの原因は「心的イメージを生成する脳の部位が異なる」という証拠が示されました。
Imageless imagery in aphantasia revealed by early visual cortex decoding: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(24)01652-X
People who can't 'see with their mind's eye' have different wiring in the brain | Live Science
https://www.livescience.com/health/neuroscience/people-who-cant-see-with-their-minds-eye-have-different-wiring-in-the-brain

アファンタジアの症状自体は、ものや景色を想像することで脳内で描ける像(心的イメージ)に関する1880年に行われた統計的研究で初めて記述されました。エクセター大学で神経医学を研究するアダム・ゼマン教授は、2005年に心的イメージに関する研究をスタートし、十数年かけてアファンタジアを自称する1万2000人以上の人々から話を聞くことで研究を進めてきました。
ゼマン教授はアファンタジアの症状について、「私の見る限り、アファンタジアは人間の経験における興味深いバリエーションであり、障害ではありません」と述べました。
頭の中でイメージを思い浮かべることができない「アファンタジア」と鮮明なイメージを瞬時に浮かべられる「ハイパーファンタジア」の研究の歴史 - GIGAZINE

2025年1月10日に生物学ジャーナルのCurrent Biologyに掲載された論文では、アファンタジアがなぜ発生するか、心的イメージがまったく思い浮かばないというのはどういうことなのかについて、脳内信号に基づく研究を実施しています。
研究では、アファンタジアの患者14人とアファンタジアではない参加者18人を募集し、「両眼視野闘争」というテストが実施されました。脳は常に左目と右目からの視覚情報を統合して1つのまとまりのある画像を構築しています。両眼視野闘争はこの性質を使って、被験者の目の前に異なる色のしま模様を2つ点滅させ、2つのパターンのうちどちらのしま模様を知覚したか回答させるというもの。
テストの結果として、アファンタジアではない人は、2つのパターンのうち最初に認識するパターンが偏る傾向にありました。一方でアファンタジアの人は、この偏りが発生することがはるかに少なかったとのこと。ニューサウスウェールズ大学の心理学教授で論文の共著者のジョエル・ピアソン氏は「心の中のイメージが強ければ強いほど、両眼視野闘争パターンの見方が偏る可能性が高くなります」と説明しました。

両眼視野闘争テストによってアファンタジアの有無を検査した後、参加者の脳の活動を研究するために、酸素化血液の流れを追跡する機能的MRIを使用して、同様のしま模様知覚テストを行いました。その結果、アファンタジアの人もアファンタジアではない人も、しま模様を見ている時とどんなしま模様だったか思い浮かべている時に、視覚情報の処理を担う脳の主要部位である一次視覚野が活発に働いて心的イメージを生成していることが証拠として示されたとのこと。しかし、アファンタジアの人は、一次視覚野での活動がわずかに弱く、画像を観察しているときに脳で行われる処理のレベルが低いか、処理の種類が異なる可能性が考えられました。
さらに、被験者が知覚もしくは想像しようとしていた視覚パターンを正確に推測することができるコンピューターアルゴリズムで脳の活動を分析しました。結果として、アファンタジアの有無にかかわらず、知覚や想像の信号ははっきり示されました。しかし、アファンタジアではない人は知覚したものと想像したものをほぼ一致させることができた一方で、アファンタジアの人の場合は「知覚で引き起こされた脳の活動」と「想像で引き起こされた脳の活動」が一致せず、根本的に異なるプロセスが起こっている可能性を示唆しています。
また、ピアソン氏によると、一連のテストで驚くべき発見があったとのこと。通常、人は右側の視野に映ったものを左脳で処理、左側の視野に映ったものを右脳で処理するようになっています。しかし、アファンタジアの人は右目で見たものを脳の右側で、左目で見たものを脳の左側で処理するパターンに当てはまる場合が高く、「彼らの脳の配線がまったく異なる可能性があります」とピアソン氏は語っています。
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの上級研究員であるナディーン・ダイクストラ氏はピアソン氏らの研究を受けて、「この研究は、アファンタジアの人が想像をしようとするときに、アファンタジアのない人とは異なる方法で視覚皮質を使っているという証拠をさらに裏付けるものです。ただし、この研究は規模が小さく、過去に行われた同分野の研究と若干矛盾している点には注意が必要です。アファンタジアの人の脳内活動は新しい研究分野であり、多くの疑問がまだ解明されていません」と述べました。
・関連記事
頭の中で人物や風景を思い描くことができない「Aphantasia(アファンタジア)」とは? - GIGAZINE
頭の中でイメージを思い浮かべることができない「アファンタジア」と鮮明なイメージを瞬時に浮かべられる「ハイパーファンタジア」の研究の歴史 - GIGAZINE
頭の中でイメージを視覚化できない「アファンタジア」の人は目を見れば分かるという研究結果 - GIGAZINE
怪談で恐怖を感じることがない「アファンタジア」と呼ばれる人々の新たな調査結果 - GIGAZINE
頭の中で人物や風景を思い描けない「アファンタジア」でも明るく鮮明な映像を見る方法とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1e_dh
You can read the machine translated English article People with aphantasia, who are unable t….