サイエンス

頭の中でイメージを視覚化できない「アファンタジア」の人は目を見れば分かるという研究結果


「Aphantasia(アファンタジア)」とは頭の中で人物や風景のイメージを像として結ぶことができない状態で、記憶力に問題を抱えていると考えられたり、怪談で恐怖を感じることがないとされたりと、数多くの研究が行われています。その一方でアファンタジアであるかどうかは自己申告による経験ベースでしか特定できていませんでしたが、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者が2022年3月末に発表した論文では、アファンタジアの人は目の瞳孔反応を見ると検出できるということが示されました。

The pupillary light response as a physiological index of aphantasia, sensory and phenomenological imagery strength | eLife
https://elifesciences.org/articles/72484

The Eyes Can Reveal if Someone Has Aphantasia – An Absence of Visuals in Their Mind
https://www.sciencealert.com/the-eyes-can-reveal-if-someone-has-aphantasia-an-absence-of-visuals-in-their-mind

1880年に最初の記述が見られるアファンタジアについては、2005年にエクセター大学で本格的な研究が始まり、2015年にはこの状態に「アファンタジア」という名称が与えられました。脳内でイメージを思い浮かべられない人は想像以上に多く、50人に1人はアファンタジアではないかと考えられています。

頭の中で人物や風景を思い描くことができない「Aphantasia(アファンタジア)」とは? - GIGAZINE

by Alice Popkorn

アファンタジアの研究が活発にならなかった大きな原因として、「脳内でイメージを視覚化できない状態」は外から見てわかるものではない上に、先天的なものであればそもそも自分が異常だと気付かないケースも多い点があります。そこでUNSWの研究者は、人間がものをしっかり認知する際に瞳孔が収縮・拡大することに着目し、想像力のスキルがその瞳孔反応と対応しているという仮説を立てました。

実験では、自己申告により「一般的な視覚的想像力を持つグループ42人」と「アファンタジアの自覚があるグループ18人」に分け、それぞれに「灰色の背景にある明るい三角形と暗い三角形」を見せました。その後、スクリーンには空白の画面を8秒間表示し、直前に見た画像を想像させます。


この「直前に見た形を思い出して脳内で想像する」ことを目を開いた状態で行わせたところ、一般的な視覚的想像力を持つと申告したグループは想像に合わせて瞳孔が開く反応を見せた一方で、アファンタジアの自覚があるグループは瞳孔にハッキリとした変化が見られなかったとのこと。論文では、脳内のイメージが鮮やかで強いほど瞳孔の反応が大きくなり、逆にイメージがほとんど形成されないアファンタジアの人の場合は瞳孔反応が極端に小さくなる実験結果を示し、認知的負荷が瞳孔サイズに影響すると結論付けています。

心的イメージと瞳孔反応がなぜ関係しているかについては、中脳の活動の副産物であるという解釈や、記憶からイメージを生成する際の眼球運動が関係しているという説が考えられており、より詳細なメカニズムの解明が今後の課題となっています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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