サイエンス

怪談で恐怖を感じることがない「アファンタジア」と呼ばれる人々の新たな調査結果


心的イメージを思い浮かべることができず、頭の中のイメージを視覚化することができないアファンタジアは人口の2~5%ほど存在するといわれています。これまでの研究でアファンタジアは想記・想像・夢を見ることといった認知プロセスに異なる点があると示されてきましたが、新たな実験では「恐怖を描いた文章を読んでもまったく恐怖を感じない」ことが示されました。

The critical role of mental imagery in human emotion: insights from fear-based imagery and aphantasia | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.0267

I ain't afraid of no ghosts: People with mind-blindness not so easily spooked: The link between mental imagery and emotions may be closer than we thought -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2021/03/210310122434.htm

ニューサウスウェールズ大学の研究チームが行った新たな研究は、アファンタジアの人々とそうでない人々に「怖い話」を聞かせて、体がどのような反応をするかを観察するというもの。実験ではアファンタジアである22人と、アファンタジアではない24人の、計46人の被験者を暗くした部屋につれていき、皮膚に電極を取り付けました。人の皮膚を流れる電流は恐怖といった強い感情を抱いた時に変化するといわれています。過去研究の多くは被験者に行動についてアンケート調査するものでしたが、この研究では皮膚反応の変化を見ることでより客観的な変化の測定を試みました。


電極を取り付けた被験者を暗い部屋に取り残して科学者らは退出。その後、目の前のスクリーンに文章として表示された物語を、被験者は読みました。

物語は、「あなたはビーチにいます」「あなたは飛行機の窓際に座っています」といった平和的な導入から始まり、徐々に恐怖が展開されていきました。研究者によると、対照群である「物語を視覚化できる人」は物語の恐怖が展開していくと皮膚を流れる電流レベルが急速に高まった一方で、アファンタジアの人々における電流には変化がなかったとのこと。


ただし、文章の代わりに死体などの「恐怖を感じさせる写真」をスクリーンに表示したところ、いずれの被験者も皮膚の電流レベルが上昇しました。

この実験結果から、アファンタジアの人々が恐怖を感じにくいのは「文章のみ」の場合だけで、画像を見た時には多くの人と同様に恐怖を感じると研究者は結論づけました。


研究チームは、オンライン掲示板で「アファンタジアはフィクション小説を楽しめない」と議論されていたことをきっかけに、この実験を行ったとのこと。「今回の研究は将来的に、アファンタジアの診断や確認を行う客観的なツールの提供に役立つ可能性があります」と研究を行ったレベッカ・キーオ博士は述べています。

一方で、今回の研究は「恐怖」という感情について調査したものであり、感情が異なれば実験結果が異なる可能性があるとも研究者はみています。またアファンタジアと一言で言っても、視覚的なイメージができない人もいれば、聴覚といった他の感覚とのつながりがない人や、夢を見ない人など、その形は多様だとも研究者は述べました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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