ハードウェア

1億6000万円超を売り上げた自作キーボード用の小型マイコンボード「nice!nano」の開発秘話を本人が語る


100万ドル(約1億6000万円)超の売上を記録した自作キーボード用の小型マイコンボード「nice!nano」の開発者であるニック・ウィナンズ氏が、大学1年生時に「大学の寮でnice!nanoを作り出した時の話」をブログに記しています。

I Made a Million Dollar Product from My Dorm Room - Nick Winans
https://nick.winans.io/blog/nice-nano/

ウィナンズ氏は大学最初の冬休みに、小型ワイヤレスキーボードを自作しました。ワイヤレス化にあたって小型マイコンボードのAdafruit 32u4 Bluefruit LEを使用したものの、タイピングの遅延がひどすぎて使い物にならず、大きなバッテリーを内蔵しても数日しか充電が持たなかったそうです。


ロジクールやAppleといったメーカーが低遅延でバッテリー寿命の長いワイヤレス製品を発売しているのを見て、ウィナンズ氏はもっと優れたワイヤレスキーボードが作れるはずだと考えて、その後2カ月間にわたってワイヤレスマイクロコントローラと自作キーボードの世界に没頭したとのこと。

その過程でウィナンズ氏は、ワイヤレスキーボードの小型マイコンボードの世界ではPro Microが定番であり、これに足りない部分を埋めようとするバージョンも出ていることを知りました。しかし、当時発売されていた小型マイコンボードは価格面やキーボードとの干渉などで問題を抱えていたため、ウィナンズ氏は自分のニーズに合わせた小型マイコンボードを自作することに決めました。

そして週末、寝食以外をデスクにかじりついて過ごしたウィナンズ氏は、nRFMicroのWikiAdafruit nRF52840 Featherの回路図および図面などを参考にして、nice!nanoのプロトタイプを作成しました。これはPro Micro互換のnRF52840ベースの基板としては最薄のものであり、名称はウィナンズ氏が使っていたハンドルネーム「Nicell」にちなんでいます。

その後の1週間で見つけた数社の基板組立業者に問い合わせたところ、5個製造した場合の最低価格は100ドル(約1万6000円)であり、数日間かけて設計を綿密に再検討してから注文しました。そして数週間後に届いた最初のnice!nanoは、しっかり動作してくれたとのことです。


ウィナンズ氏が次の数週間で左右分割式キーボードのLily58を組み立ててテストしたところ、nice!nanoは110mAhのバッテリーで充電が数週間持つことが確認されました。大喜びで完全ワイヤレスのLily58をRedditに投稿したところ、かなりの関心が集まりました。


その後数週間でウィナンズ氏のDiscordサーバーは、ワイヤレスキーボードのイノベーションに焦点を当てた大規模なコミュニティに成長。2020年6月中旬にはグループ購入する準備が整い、人々から資金を集めて合計で1000個ものnice!nanoを購入しました。ウィナンズ氏は家族の助けを借りて大量のnice!nanoを発送でき、グループ購入は成功に終わったものの、大勢の人々から資金を預かる経験は精神によくなかったため、もう二度とグループ購入はしないと決めたそうです。

自宅に届いた大量のnice!nanoの発送作業をするウィナンズ氏の父。


また、nice!nanoにはまともなファームウェアが欠けていたことから、ウィナンズ氏はグループ購入と並行して、ワイヤレスキーボードのファームウェア開発を行っていたピート・ヨハンソン氏に試作機を送ったとのこと。そしてヨハンソン氏が率いる小規模なコミュニティは2021年初頭までに、低消費電力を重視したワイヤレス優先の新しいファームウェアであるZMKの開発に成功しました。

2022年には、ウィナンズ氏は父親と一緒にワイヤレスキーボードに特化したECサイトのTyperactiveを立ち上げ、ユーザーが必要な部品をすべて入手できる3Dインタラクティブ構成ツールも作成しました。このスムーズな操作性は大成功を収め、Typeractiveは2025年時点で最大規模の分割型キーボード販売店のひとつとなっています。

2025年までにnice!nanoは世界中のオンライン小売店で合計5万台以上も売れており、売上高は100万ドルを超えました。ウィナンズ氏は、「私自身も多くの努力を重ねてきましたが、タイミングと運も大きな役割を果たしたと認識しています。ワイヤレスキーボードへの関心の高まりと、DIY分野での選択肢の少なさが、nice!nanoが成功する絶好の環境を作り出したのです」と述べました。

ウィナンズ氏のブログはソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも話題になり、本人もスレッドに登場しています。ウィナンズ氏はスレッドへの投稿で、nice!nanoの成功はコロナ禍によるロックダウンでDiscordの盛り上がりが良かったなどの運もあったものの、初期のうちに積極的にコミュニケーションを取り、頻繁に情報を共有したことも成功の一因だったとコメントしました。

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in ハードウェア, Posted by log1h_ik

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