ハードウェア

分割式・格子配列・ワイヤレスな自作キーボード「Bayleaf」の製作過程


キーボードにはキーの大きさや押し心地、キーの配列などさまざまな種類があるため、自分の感覚にぴったり合うものを見つけるのは難しいもの。それを解決する方法のひとつが自作キーボードですが、キーボードを本格的にカスタムするためには、電子工学や多くのハードウェア関連のスキルが必要です。ブランドデザイナーのセバスチャン・グラーツ氏は、ワイヤレスかつ左右に分割するキーボードによってコンパクトで配置しやすく設計した、自作キーボードのメイキングを解説しています。

Bayleaf Wireless Keyboard Build
https://www.graz.io/articles/bayleaf-wireless-keyboard

グラーツ氏が製作したキーボード「Bayleaf」は以下のような感じ。サイズは2つ合わせて幅139mm、高さ93mm、厚さは最も厚いところで5mmとコンパクト。また、重さも180gと小型かつかなり軽量です。


キーは縦に5個、横に6個並んでおり、黒の濃淡で色分けされているのみで、キーの種類は記載されていません。


実際に手を置いてBayleafのキーを入力している様子。


グラーツ氏はソフトウェアやハードウェアの製作を趣味としていますが、キーボードを組み立てるのは初めてであったそうです。そのため、電子工学、電導性材料の構築、製造のための設計、その他多くのハードウェア関連のスキルを学ぶ必要があったとのこと。

Bayleafの主なコンセプトは、まず無線かつ分割式である点。PCゲームをプレイする際に、「左手はキーボード、右手はマウス」という構えになることが多いため、右側のキーボードをよけた位置にマウスのスペースを確保するイメージです。また、キーボードはデスクトップPC用に製作していますが、グラーツ氏はMacBookも普段使いしているため、フルサイズキーボードではなくFnキーや矢印キーが省略された60%レイアウトに調整されています。Bayleafについてグラーツ氏は「正直に言うと、これは機能よりも形式を重視した設計です。完成した商業的な外観を得るために、一部の機能に問題があっても構いません」と語っています。

グラーツ氏はまず、以下のような設計図を作成しました。この時点では、デザインが確定ではなく、コンポーネントがどのように収まるかは未定のため、寸法は精査されていません。


次に、Bayleafの回路図として作成されたのが以下。スイッチに使用されているのは単純なキーボードマトリクスで、小型のマイクロコントローラ(MCU)では標準的な方法とのこと。各行と列は、キーボードのキーを認識するために、独自に設定したMCUの接続口(ピン)に接続されています。


実際の設計は、ワイヤレス自作キーボードの制御に使われるnice!nanoというMCUを中心に構築されました。nice!nanoは超小型でBluetoothに対応しており、電源管理などの基本的な機能が組み込まれているため、Bayleafは余分なLEDやエンコーダーなどを省略して、電源と通信に最低限必要なものだけを搭載したシンプルな設計になっています。


キーボードケースには、商業製品のような仕上がりを目指し、アルミニウムを使用しています。設計にはパラメトリック設計ソフトウェアを使う必要があり、グラーツ氏はこの種のソフトが未経験だったため、デザインを完成させるのにかなり苦労したとのこと。最終的にケースのパターンを100個ほど作成した上で、採用デザインを決定しています。ケースは粉末材料を使う3Dプリントである「MJF/SLS」を使用して製造されました。

部品がそろったところで、組み立てのプロセスに入ります。ここでは、薄いアルミニウムのプレートにはんだ付けをすると熱で反りが生じてしまうため対策が必要だったり、はんだ付けの際に使われる薬剤を洗い流すために苦労したりと、初めての作業のためにかなり効率の悪いプロセスになったとグラーツ氏は述べています。

内部の設計は以下のような感じ。


Bayleafの製作にかかった時間は計画と設計に約2カ月、組み立ての練習とツールの習得に1カ月、実際の組み立てに4日でした。また、購入したものの送料や必要なツールのコストを除いた部品と材料の製作コストだけで、Bayleaf左右一組に約400ドル(約6万円)かかっています。グラーツ氏によると、Bayleafは今後もより人間工学を考慮した設計にしたり、ケースをカスタマイズしたりといった新しいバージョンを計画しているそうです。ソースファイルはほとんどが作業中のため、オープンソースライセンスについては検討中とのこと。


グラーツ氏は「最終的に構想から完成まで3カ月ほどかかりましたが、最終的な結論としては、計画と構築は素晴らしい学習体験でした。最終製品は私の期待を超えましたが、構築への欲求はまだ満たされていません。より多くのスキルを備え、さらに優れたバージョンをすぐに作成することを楽しみにしています」と語りました。

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in ハードウェア, Posted by log1e_dh

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