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物語の制作に生きる「ジャーナリズムのテクニック」とは?


新聞記者から小説の執筆に移行した作家が、物語の制作に新聞記者として身に付けたスキルが役立ったとして、「4つのジャーナリズム式テクニック」を解説しています。

How Dealing in Facts Helps Fiction Writers Hone Their Craft ‹ Literary Hub
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オーストラリア出身の作家であるトレイシー・リアン氏は、アメリカのカンザス大学で修士号を取得した後、主にアメリカ西部で購読される日刊紙のロサンゼルス・タイムズで記者を務めていました。リアン氏は数年のキャリアの後、仕事を辞めてクリエイティブライティングを学ぶことにしましたが、その際に「新聞記者としての訓練を受けているため、小説を書くのが難しくなるのではないか」と心配していたそうです。

その理由として第一に、ジャーナリズムでは「でっちあげは許されない」という厳格な決まりがあります。日付や数字は二重にも三重にもチェックされ、発言と人物名は細部まで確認し、タイムラインは相互参照し、少しでも間違ったことがあればサイトに掲載済みの記事を修正する必要があります。そのため、フィクションを始める際には、自分がでっち上げた登場人物や出来事がリアルに感じられるか確信が持てなかったとリアン氏は語っています。また、単純にロサンゼルス・タイムズでは平均500ワードで1つの記事が作られる一方で、小説で書く必要がある6万ワードは記事だと150本分にも相当し、高いハードルに感じられます。

しかし、結果として処女作の「All That's Left Unsaid」を仕上げるにあたって、草稿の執筆から改訂、販売の流れまで、新聞記者のキャリアが大いに役立ったそうです。リアン氏は、ニュースではインスピレーションではなく「規律」に従って書くのが一般的であり、小説でも突発的な思いつきよりも厳格な規律を信頼することで、毎日少しずつ自信を持って続けることができたと話した上で、「小説を書く上での4つの規律」をポイントとして挙げています。


まず1つ目は、「読者の気を引く『フック』を用意する」という点。毎日いくつもの記事が配信されるウェブのニュースサイトでは、重要な記事だと思って何週間も費やしたにもかかわらず、デイリーチャートで最下位に置かれてしまうようなことも多々あります。そのため、リアン氏は「自分が面白いと思うだけでは十分ではなく、読者にとっても興味深いものにしなければならない」ということを経験から学び、それを小説の執筆にも生かしています。魅力的な設定や、色とりどりなキャラクターたちがあるからこそ、それらに甘えることなく、常に読者の興味を引き続ける演出やストーリーテリングが必要になります。

リアン氏が挙げている2つ目のポイントは、インタビューや会見などのやりとりをまとめた記事の優れたものから学んだ「印象に残る対話」についてです。優れたニュース記事は、扱われている発言や会話を鮮明に頭の中で再現しやすくなっています。その理由として、ニュース記事では発言内容を直接引用する場合と、地の文で言い換える場合があり、この使い分けが重要だとリアン氏は分析しています。その上でリアン氏は、小説でも「会話として必要か」「キャラクターの性質を考えたら地の文で処理する方が適切ではないか」などを細かく精査したそうです。


3つ目のポイントは、「事実ではない物語を書くからこそ、事実を研究する」という内容です。新聞の記事を書くにあたっては、事実を伝えるために記者がしっかり調べますが、小説においても「想像力を解き放つことができるのは、調査と研究です」とリアン氏は指摘しています。物語の舞台、設定や登場人物の性質に関連する事項について、しっかり調べてよく知ることで、物語を組みたてるためのより明確な出発点を得ることができます。

最後に4つ目として、ジャーナリズムの現場で新聞記者が避けて通れない「ピッチ」の経験が物語の執筆にも重要だとリアン氏は語っています。「ピッチ」とは英語圏で使われるビジネス用語で「ごく短いプレゼンテーション」を指しており、ジャーナリズムの現場では記事を書き始める前に上司の編集者や編集長からゴーサインを受け取ったり、一面の枠を狙う場合には売り込みをする必要があったりと、執筆の前にそのニュースがいかに重要で面白いかについて短い文でまとめて伝える必要がありました。物語の制作においても、魅力的で奥深い設定や人物関係をいかに複雑と思わせず興味を持ってもらうために、ストーリーラインやあらすじを書くスキルとして大いに生かすことができたとリアン氏は述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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