ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセ氏が語る「ライティングに関する最も重要なアドバイス」とは?
2023年のノーベル文学賞に、ノルウェーの劇作家であるヨン・フォッセ氏が選ばれました。文学関連のトピックを扱うメディアのLiterary Hubによるインタビューの中で、フォッセ氏は「他人の声に影響されず、自分自身の声に耳を傾ける」など、執筆における経験やアドバイスを語っています。
Newly minted Nobel Laureate Jon Fosse on the best writing advice he’s ever received. ‹ Literary Hub
https://lithub.com/newly-minted-nobel-laureate-jon-fosse-on-the-best-writing-advice-hes-ever-received/
Meet the 2022 National Book Award Finalists ‹ Literary Hub
https://lithub.com/meet-the-2022-national-book-award-finalists/
2023年10月5日、スウェーデン・アカデミーは「言い表せないものに声を与える革新的な戯曲と散文」を選考理由として、劇作家のヨン・フォッセ氏にノーベル文学賞を授与しました。
ヨン・フォッセ氏は2022年に「A New Name: Septology VI-VII」という作品で、アメリカの権威ある文学賞である全米図書賞の翻訳文学部門で最終候補に残りました。Literary Hubはほぼ全員の最終候補に残った作家に簡単なインタビューを実施しており、その中でフォッセ氏も自身の執筆生活や執筆における心掛けなどを回答しています。
まず執筆生活について、フォッセ氏にとって執筆は「多かれ少なかれ、意識的な夢」であるとのことで、「私はいつも、夢や悪夢を見るような眠りから直接執筆に移れるように、目覚めたらすぐに書き始めることを好んでいます」と話しています。また、「一日あたりどれくらいの時間執筆しますか?」という質問に対しては、「以前は朝の8時ごろから午後1時か2時ごろまで書く習慣がありました。ここ10年か15年ほどはもっと早く起きて、まだ夜が明けていない朝5時くらいから書き始め、朝の9時か10時ごろに終えます。午後に書くこともありますが、小さな修正のみの場合がほとんどです」と答えています。
続けてLiterary Hubは、執筆に関して新しい作品を生めなくなったり作品のクオリティが上がらないスランプを感じたりするような「ライターズ・ブロック」を感じたことがあるか尋ねました。ライターズ・ブロックは技術の欠如や経験不足などによるものではなく精神的な問題だと知られており、有名でキャリアのある作家でも経験しうるものですが、フォッセ氏は40年のライター経験の中でライターズ・ブロックを経験したことはないとのこと。
フォッセ氏はライターズ・ブロックを経験せず執筆を続けることができている理由として、2点の自己分析を挙げています。1点目は、「一定の期間に自分の文章を書いたら、しっかり休憩をとり、その他の期間で他のことをする」というもの。フォッセ氏は23歳の時にデビュー作を出版してからしばらく、書き手としてだけではなく読み手としての仕事も多かったそうです。また、書籍の序文を任されたりエッセイを執筆することもあり、それらの休憩中に作品の翻訳作業をしたり、劇作家として執筆を行っていたとのこと。
2点目に、フォッセ氏はここ数年で「良い紙のノートに、良い万年筆を使ってペンやインクを切替えながら手書きする」という執筆方法を採っており、それがモチベーションにつながると同時に、いつでもどこでも書くことができるという利点があると話しています。
最後に、「これまでに受けた執筆に関するアドバイスの中で最高のものは何ですか?」という質問にフォッセ氏は回答しています。フォッセ氏はデビュー作である「Red, Black」を出版した際に、多くの悪い評価を受けて悩んだ経験があるとのことで、「もしそれらの意見に耳を傾けていたら、私は書くのをやめていたでしょう」と語りました。それ以来、フォッセ氏は自分の人生から学んだ最高のアドバイスとして、「他人の意見ではなく、自分自身の声に耳を傾ける」ことを自身のルールとしているそうです。誰かに求められるものや、あったらいいなと夢想するものではなく、「自分が持っているものに固執し、自分自身の内なる声やビジョンに耳を傾け、文章をどのようにしたいかを追究してください」とフォッセ氏は述べています。
「他人の意見ではなく、自分自身の声に耳を傾ける」というのは、悪い意見に耳を貸さないというだけではなく、良い意見についても同様です。フォッセ氏は「ここ数年、私の文章は好評で、賞などもたくさん受賞していますが、それが自分の文章に影響を与えないようにしています」と語っています。他人の意見に左右されず、やりたいことではなく自分ができること、書く必要があると感じていることにこだわり、何度中断しても出発点に戻ってみることが、執筆を続けられたポイントだとフォッセ氏はまとめています。
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