セクハラ騒動を起こしたノーベル文学賞に代わる「新たな文学賞」がスウェーデンで発足
by OZinOH
各分野で顕著な功績を残した人物に贈られるノーベル賞は、毎年世界中のメディアが注目する一大イベントとなっています。しかし、2018年のノーベル文学賞は「アカデミーメンバーの配偶者によるセクハラや情報漏えいがあった」として、受賞者の発表を見送る方針を明らかにしています。そんな中、「文化人たちが集まってノーベル文学賞の代替となる賞を授与する」計画が発足したと報じられています。
Alternative Nobel literature prize planned in Sweden | Books | The Guardian
https://www.theguardian.com/books/2018/jul/02/alternative-nobel-literature-prize-planned-in-sweden
ノーベル文学賞の選考主体であるスウェーデン・アカデミーのメンバーである詩人のカタリーナ・フロステンソン氏の夫で、写真家や映画監督としても知られるジャン・クロード・アルノー氏はセクハラや性的暴行疑惑をかけられています。アルノー氏はすべての疑惑を否定していますが、セクハラ疑惑だけでなく「ノーベル文学賞の受賞者を事前に外部へ漏らしていた」という疑惑も浮上しており、大きなスキャンダルとなってしまいました。
2018年5月には、スウェーデン・アカデミーが「2018年のノーベル文学賞発表は見送る」と発表し、失った信頼を立て直すことに注力したいという姿勢を明らかにしました。選考主体のスウェーデン・アカデミーが選考を断念したため、正式なノーベル賞の授与は行われないことが決まっています。そんな中、100人以上のスウェーデン人小説家・俳優・ジャーナリストや文化人が集まって「New Academy(ニュー・アカデミー)」という新たな団体を設立し、「ノーベル賞授与式と同じタイムスケジュールで、独自に選考した文学賞の受賞者を発表する」という計画がスタートしました。
ニュー・アカデミーは設立に際しての宣言で、「文学や文化は民主主義・透明性・共感・尊重といった思想を促進し、特権・偏見・性差別といったものをなくしていくべきです」と主張しています。人々の沈黙を打ち破り、抑圧から解放する力を持った文学の重要性が近年さらに増していることから、ニュー・アカデミーはノーベル文学賞の代替となる2018年最高の文学賞を授与することに決めたとのこと。
by timetrax23
受賞者の選考にあたり、ニュー・アカデミーはスウェーデンの図書館員全員に対して、文学賞にふさわしい作家の推薦を呼びかけています。推薦する作家は世界中どこの国の作家でもOKで、「少なくとも2冊の本を書いていること」「そのうち1冊が10年以内に出版されていること」が必要条件です。
また、ニュー・アカデミーが求めている作家は「世界に生きる人々」についての物語を書いた作家とされており、ノーベルの遺言に従って「理想的な方向性の文学」を選考基準にしている本家ノーベル文学賞とは、少し違った角度からの選考基準を設けている模様。ノミネート作家をとりまとめた後、ニュー・アカデミーは一般投票と同時に4人の著名な審査員を加えて審査を行い、ノーベル賞の発表と同じ2018年10月に受賞者を発表するとしています。
ニュー・アカデミーは賞の授与にあたって講演を行うとしており、「重要な文化的業績は高圧的な言葉、不正や虐待といった文脈の中で達成されるべきではない」というメッセージを人々に伝えるとのこと。ただし、ニュー・アカデミーは今後もこの賞を存続させていくつもりはないようで、授賞式を行った後、2018年12月11日に解散する予定です。なお、本家ノーベル文学賞は2018年の受賞者発表を見送る代わりに、2019年に2名のノーベル文学賞受賞者を発表するとしています。
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