事実をもとにしたフィクションを書く時のテクニックとは?
創作に取り組んでいる際には、現実の経験や事件にインスピレーションが刺激されることも多くあります。しかし、実際に起きたことをそのまま物語に反映させるのでは、フィクションとして良い物になりにくいもの。そんな実際の出来事をもとにしたフィクションを考案するときのアドバイスを、エッセイストのウィリアム・ダメロン氏が語っています。
William Dameron On the Tricky Art of Turning Truth Into Fiction ‹ Literary Hub
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ダメロン氏はエッセイストとして回顧録を執筆していましたが、出版社から新たな作品としてフィクションを提案されたそうです。そうして書かれた小説「The Way Life Should Be」は、トランスジェンダーをカミングアウトして妻と別れた男性二人が新しい結婚生活を過ごすという、ダメロン氏自身の経験を反映した設定となっています。
ダメロン氏は執筆に際して、「私は家族のエッセンスを吸収しただけでなく、小耳に挟んだ会話やささやきすらもページに反映しているのだろうか?」「私は作家としての行き詰まりを解消するために家族を利用したのだろうか?」と悩む部分もあったと述べています。特に、エッセイや回想録を書く際の視点や思考は全て「私」ですが、小説のキャラクターの感情や考えはそれぞれの人物のものにもかかわらず、全て作者である「私」が考えます。ダメロン氏は「キャラクターの心に穴を掘り、それぞれの考えを私が想像するような形になるため、おそらくこれは、私の愛する人たちが耐えられないことの一つです」と述べています。
そんなダメロン氏の助けになったのが、アメリカの短編小説作家のグレース・ペイリー氏がかつて言った「人は知っていることから書くが、知らないことを書き込むのである」という言葉でした。
ダメロン氏は「知っていることから始め、知らないことを書き加える」という意識で、最初の設定やキャラクターの配置、おおまかなプロットでは自身の経験や実際の出来事、近しい人物の特徴や言動を配置しました。その上で、キャラクターたちには現実にダメロン氏やその周りの人たちが経験したものとは異なる新しい課題を与えました。その課題に立ち向かう過程で、小説の中のキャラクターたちはあくまでページ上にのみ存在する人物となり、「この創作方法により、私は救われました」とダメロン氏は話しています。
ときおり読者は、フィクションの主人公が作者の考えを反映していると考えたり、作者自身を反映したキャラクターがどこかに登場していたりすると考える事があります。ダメロン氏も「あなた自身はキャラクターの誰に該当しますか?」と尋ねられることあるそうですが、ダメロン氏はこれに「正解は、全てであるか、どれでもないです。私たちはたくさんいます。私は何者でもありません」と回答しています。
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