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YouTubeの広告ブロッカー検出機能はEUの法律に違反しているという指摘


YouTubeは広告収益をベースに運営を行っているため、広告ブロッカーの利用を禁止するための施策を進めています。そんなYouTubeが広告ブロッカーを検出する方法はEUの法律に違反している可能性があるとして、その問題点をチャンネル登録者数190万人超のYouTuberであるLouis Rossmann氏が解説しています。

Youtube's AdBlock detection might break the law in the EU - YouTube


YouTubeは広告ブロッカーの取り締まりを強化しており、広告ブロッカーを利用したままYouTubeを利用していると以下のようなメッセージが表示されます。これは広告ブロッカーを検出し、「YouTubeの規約に違反しています」と警告する通知です。ただし、広告ブロッカーの広告許可リストにYouTubeが登録されている、つまりは広告ブロック機能が無効化されている場合は、問題なくYouTube上で動画を再生することができます。


YouTubeが用いている広告ブロッカー検出スクリプトについては、プライバシー保護活動家のアレクサンダー・ハンフ氏が「EUの指令違反である」と指摘しています。これはYouTubeがユーザーの同意なしにコンピューター内で動作しているソフトウェアを検出しているためです。

YouTubeによる広告ブロッカー検出スクリプトはユーザーの同意を得ずに動作しておりEUの指令違反だと活動家が主張 - GIGAZINE


ハンフ氏がこの主張を行い始めたのは2016年4月頃からです。当時、ハンフ氏は広告ブロッカーがインストールされているかどうかを検出するウェブサイトについて調査していたそうで、そこからYouTubeの広告ブロッカー検出機能に目をつけるようになりました。

当時からハンフ氏はYouTubeの広告ブロッカー検出機能について、「プライバシーの侵害である」と指摘しています。ハンフ氏によるとEUのeプライバシー指令の第5.3条には「加入者または利用者の端末機器に保存されている情報にアクセスするには、明確かつ包括的な情報が提供され、加入者または利用者の同意が得られた場合にのみ許可される」と記されているそうです。このeプライバシー指令にYouTubeは違反しているというのがハンフ氏の主張です。

これに対して、YouTubeは「利用規約に違反している」として、広告ブロッカーの検出を続けています。YouTubeは「もしもあなたがGoogleのアカウントを使用しているのであれば、アカウント作成プロセスのどこかで利用規約に同意しているはず」と主張しています。しかし、YouTubeはGoogleアカウントなしでも動画を再生することが可能です。この場合、利用規約に同意していなくても、YouTubeはユーザーのデバイスを勝手に調べて広告ブロッカーの検出を実施していることになってしまいます。

広告ブロッカーがPC上で動作しているかを検出するコードは、サードパーティーCookieのようなユーザーの個人情報収集につながるテクノロジーと非常に似ています。つまり、YouTubeの広告ブロッカー検出機能はサードパーティーCookieと非常に似通った状況にあるとハンフ氏は指摘。


ハンフ氏はYouTubeの広告ブロッカー検出機能を「スパイウェア」と呼んでおり、「それ以外に表現する方法がない」と語っています。また、ハンフ氏はデバイス上で何が実行されているかを検出するようなテクノロジーはほとんどの状況において非倫理的かつ違法であるとも指摘。

広告ブロッカーがインストールされているかどうかを検出するウェブサイトは複数あり、「広告ブロッカーを検出し、広告ブロック機能を無効化するまでコンテンツを閲覧できなくする」というウェブサイトも存在します。この種のアンチ広告ブロッカーウェブサイトが違法か違法でないかは、「そのやり方による」とRossmann氏は指摘しています。


ウェブサイト上で広告ブロッカーを検出するための方法のひとつが、サーバーログでユーザー端末がロードしているものを見ることです。例えばA・B・C・D・E・Fというコンテンツを持っているウェブサイトがあったとして、一貫してFをロードしていないデバイスが存在すれば、このデバイスは何らかの方法でFというコンテンツをロードしないようにしていると考えることができます。このFが広告の場合、デバイスに広告ブロッカーがインストールされていると推測することができるわけです。この方法の場合、ウェブサイト側はIPアドレスが読み込んだコンテンツをサーバーログでチェックするだけなので、「これにユーザーの同意が必要になるとは思えません」「これは家に設置した監視カメラを見て、家の前を通りかかった人や、玄関まで来た人をチェックするようなものです」とRossmann氏は語っています。


一方で、ユーザーの同意なしでユーザーの端末上でJavaScriptなどのコードを実行し、広告ブロッカーを検出するとすれば、それは「一線を越えた行為」であるとRossmann氏は指摘。The New York Timesの記事によると、広告ブロッカーを検出するためにユーザー端末に無断でJavaScriptコードをダウンロードさせるウェブサイトもあるとのことで、この種のウェブサイトは法律に違反している可能性があると指摘しています。


EUの政策執行機関である欧州委員会(EC)のウェブサイトでは、2017年1月10日付けで広告ブロッキングに関するセクションが追加されています。このセクションには「インターネット上の無料コンテンツは、しばしば広告収入によってまかなわれていることをECは認識しています。したがって、本提案ではウェブサイトプロバイダーがエンドユーザーの端末が広告を含むコンテンツを受信できるかどうかを、エンドユーザーの同意を得ることなく確認することを認めています」と記されているそうです。


Rossmann氏は「正直なところ、私は弁護士ではないので詳細はわかりません。ただし、EUのさまざまな法律をチェックするに、これらは真っ向から矛盾しているように思えます。つまり、私が思うに、この広告ブロッカー検出機能に関する結末は、誰もが好むような解決策には至らないだろうというものです。恐らく、Cookieの利用に関する通知のようなものになると思います」と述べました。

YouTubeがEUの法律を順守するにはCookieの利用に関する同意通知のようなものを表示するしかないとRossmann氏は指摘。「GoogleやYouTubeは特定の人や企業に対して法的な通知を送ることがありますが、私はそもそも彼ら自身が法律を破っている可能性が高いと思います」「もしもサーバーのログを見るだけでユーザーが広告ブロッカーを使っているかどうかを推測できる方法があるのなら、それは法律違反だとは思いません。ただし、ユーザーのコンピューター上で何らかのコードを勝手に実行して広告ブロッカーを検出しているなら、ユーザーの同意なしでそれを行っているため法律違反になると思います」とも語っています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   動画, Posted by logu_ii

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